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LNJ Logo 小林たかしの談話室・第2回
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ビキニ環礁と「北方領土」

●さ お り◎アメリカは9月に臨界前核実験をしたから、「核なき世界」を提唱してノーベル平和賞をもらったオバマ大統領は平和賞を返すべきや、という意見があちこちから出てるけど、オッチャンはどう思う。

★オッチャン◇社民党の福島瑞穂党首も返上しろ、いってるな。でも仙谷由人官房長官は、臨界前核実験は「核なき世界」と矛盾しないから抗議しないと説明してるけど、これほどの矛盾はないと思う。オバマ大統領の広島・長崎訪問も見送られたし、世界はどんどん悪い方に向かっているな。

●さ お り◎いま、東京・夢の島の「第五福竜丸展示館」で「イケナイ世界遺産 ビキニ環礁」という特別展をやってるんや。7月にビキニ環礁が世界遺産に登録されたのを機会に、被爆地・ビキニ環礁を「忘れてはイケナイ 繰り返してはイケナイ そこではもう誰も生きてイケナイ」という思いをこめて、住民の写真や証言などを展示してるらしい。来年の3月20日まで、入場無料だって。

★オッチャン◇そりゃ見にいきたいな。それと、『わしも死の海におった』という2004年に南海放送がつくった記録映画が、アジア記者クラブの主催で、11月20日にお茶の水の明治大学で上映される。これは「第五福竜丸」以外の漁船の乗組員がビキニ環礁で被爆している実態を記録したものだそうだ。

●さ お り◎それも見たいな。核実験は論外だけど、広島・長崎以外の被爆者たちの救済も核大国アメリカの責務だから。あの美しい南太平洋のミクロネシアが「核の海」とか「海のチェルノブイリ」と呼ばれているは、アメリカの核実験のせいやから。

★オッチャン◇ところで、ビキニ環礁と「北方領土」の関係を知ってるかい?

●さ お り◎え、どんな関係。ずいぶん離れてるのに。

★オッチャン◇これは、冷戦時代の象徴的な出来事なんや。アメリカは、1946年にミクロネシアのビキニ環礁で核実験をはじめた。そこをアメリカは核実験場として恒久化しようと目論んでいた。すでに戦勝国アメリカは日本の委任統治領だったミクロネシアを軍事占領していたが、ソ連はこれをアメリカの「帝国主義的野心」だとして反対していた。アメリカはミクロネシアにたいする戦略的信任統治案を1947年の国連・安保理に提出した。誰もがソ連は拒否権を行使すると予想した。ところがソ連は支持してしまった。なぜか。ソ連の政策変更の背景には、アメリカの脅し的な「説得」があったんだ。アメリカの「説得」は、ソ連は千島列島の管理を安保理にゆだねようとしていないのに、ミクロネシアには安保理による管理を押し付けようとしている、という論理だった。

●さ お り◎でも、ソ連が千島列島を併合したのは1945年2月のヤルタ協定での米ソ間の合意の結果なのだから、ふたつを同列視するのはおかしいと思う。

★オッチャン◇そうなんや。しかしアメリカは、ヤルタ協定は非公式のものだから千島問題は未解決だとソ連を強引に「説得」してしまったんだ。こうしてアメリカはミクロネシアを恒久的な核実験場としてしまい「第五福竜丸」の悲劇が起き、現地の住民たちの悲惨な生活はいまも続いている。一方、ソ連は千島併合をアメリカに再認知され、極東の戦略拠点として千島列島は軍事化されていく。

●さ お り◎ふーん、それは初耳やった。ところで、11月2日に菅直人首相は、首相官邸でミクロネシア連邦のモリ大統領と会談して、大統領の曾祖父がモデルとされる漫画『冒険ダン吉』を贈呈した、というニュースがあったけど、どんな漫画?

★オッチャン◇南太平洋の島に漂着した日本の少年が島の王様となり、現地人を啓蒙しながら文明社会を建設してゆくという戦前の人気漫画なんだ。戦後になると、侵略主義を美化し人種的偏見を助長したということで批判された。1960年代から第三世界で活躍した、アメリカ帝国主義の反革命プロパガンダ漫画の主人公ドナルドダックというのもいたね。

●さ お り◎ディズニー漫画も怖いイデオロギーなんだね。でも、このコラム欄のイラストを描いてくれた壱花花さんの漫画はいいね。壱花花さんの作品には、社会的弱者にたいする温かい目と、権力者にたいする厳しい目が共存しているから。

【2010.11.17・通算6回目/転載・引用・援用など、すべて自由】

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