本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:南北関係、20世紀の冷戦に回帰するか?
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 202006002
Status: published
View


南北関係、20世紀の冷戦に回帰するか?

[朝鮮半島]南北関係から新しい南北「関係」に

ペ・ソンイン(聖公会大学校) 2020.06.26 14:53

[出処:https://www.flickr.com/photos/rapidtravelchai/6160859022]

6月4日、金与正(キム・ヨジョン)労働党第1部部長の対北朝鮮ビラ散布に対する対南報復措置警告が入った声明の発表から朝鮮半島の緊張が高まっている。 北側は首脳間の直通電話を含む南北の通信手段を閉鎖して、 南北共同連絡事務所を爆破した。 そして対南ビラ散布、対南スピーカー設置、 金剛山観光地区と開城工業地区に連隊級部隊・砲兵区分隊配置、 非武装地帯(DMZ)監視警戒所・GP再進出、 最前方地域1号戦闘勤務体系格上げなど、 9・19軍事合意の破棄を前提とする軍事行動を一部実行している。

これに対して米国は北朝鮮制裁行政命令を1年延長すると明らかにし、 作戦区域に朝鮮半島を含む米第7艦隊空母2隻を前進配置した。 また韓米当局は偵察機8機を同時に出撃させ、対北朝鮮監視を始めた。 ここにジョン・ボルトン前ホワイトハウス国家安保補佐官の回顧録まで出版されて波紋を呼び、各種の憶測が乱舞している。

今回の北側の行為はいつもとは質的に違う。 南北関係が21世紀の「軟らかい」冷戦から2000年の6.15南北共同宣言以前の冷戦時代に逆行する深刻な危機だ。 南北共同連絡事務所爆破がその出発点だ。 共同連絡事務所は2018年9月、開城で扉を開け、南北の人員がひとつの建物に常駐して24時間の常時疎通チャンネルを構築した初の事例だ。 そのため文在寅(ムン・ジェイン)政府で最も大きな意味がある部分でもある。 過去には北側が連絡事務所からの撤収や閉鎖を警告しつつも、 簡単に原状復帰ができるような措置を取った。 だが今回の爆破は原状復帰が不可能な非常に強い警告のメッセージなので、 南北関係の不確実性は当分長引くだろうし、緊張の波高も高まるだろう。 短期間の反転は期待しにくいということだ。

卑怯な韓国と米国の妨害策動

韓国のマスコミは北朝鮮の言葉と行動がとても険しくて礼儀がないという問題提起をするだけだ。 北朝鮮の態度変化が劇的でとても性急だという診断もある。 70数年間分断された状況で、一日で突然平和体制を建設するのは容易ではないという訓示も忘れない。 数十年間、ほとんどのマスコミや一部の専門家は同じ印象批評と状況分析をするだけだ。

実は今回の朝鮮半島情勢はそれほど複雑ではない。 核心的な原因は北朝鮮制裁の長期化とコロナ19事態だ。 米国と国際社会の北朝鮮制裁の中でやっと合意した4.27板門店宣言と9月の平壌共同宣言がこの2年間、きちんと履行されなかった。 文在寅政府は 南北関係の発展を妨害する米国が決めた枠組みから一歩も進めず、 合意事項はどれ一つ守られなかった。 独自に中断することができた対北朝鮮ビラ散布さえ解決できなかった。

4・27板門店宣言以後、文在寅政府は米国の圧力で、 先北米核交渉・後南北合意履行戦略へと旋回した。 南北合意のための具体的な履行方案と中長期計画は出さなかった。 2018年11月には北朝鮮の非核化と対北朝鮮制裁、南北交流協力事業などを 韓米の実務者がいつでも調整できるようにしようという趣旨で 韓米ワーキンググループが設置された。 外交部を中心として青瓦台と統一部、国防部、国家情報院などが会議の主体として参加した。 だが韓米ワーキンググループは、米朝間の非核化交渉と、南北交流よりも北朝鮮制裁の履行方案だけに集中した。 この過程で統一部が出席を拒否する事態が行われた。

韓米ワーキンググループはいつも南北交流協力を妨害した。 2019年1月、北朝鮮は新型インフルエンザ治療剤のタミフルを要請した。 文在寅政府はハンミ薬品のタミフル20万人分と診断試薬5万人分を準備した。 北朝鮮担当者は板門店まで行っていて、ただ支援すればそれまでだった。 ところで誰かが1月17日の韓米ワーキンググループ会議にタミフル支援を案件に上げた。 米国の実務者が人道的支援は時期尚早だとして一刀のもとに断った。 その一言で北に向かっていたトラックは動けなくなった。 文在寅政府が懸命に説得したが、米国は不動の姿勢だった。 それでも米国には名分もなかった。 タミフル自体は制裁違反ではなかった。 しかしタミフルを運送するトラックが北朝鮮に行くことが制裁違反だという 奇想天外な回答が返ってきた。 そしてDMZの通行権はUN司令部にあった。 結局、開城で2か月間待っていた北朝鮮側の実務者は、受け取りを拒否して帰った。 本当にあきれて情けないことだった。

2018年9月、南北は平壌共同宣言で 「条件が整い次第」金剛山観光事業を正常化することに合意した。 金正恩(キム・ジョンウン)委員長は昨年の新年辞で 「無条件」に金剛山観光を再開すると意欲を見せた。 だが文在寅政府の決断を待っていた北朝鮮は、 疲れて昨年10月、金剛山にある韓国側の施設の撤去を通告した。 北朝鮮はこの時から新しい戦略を選択したと見られる。

その他に、開城工業団地の再開、道路と鉄道の連結、 離散家族画像対面、漢江河口共同利用など、いかなる韓国、北朝鮮合意事項も履行しなかった。 韓米ワーキンググループに対する対内外的な批判が集中する理由だ。

問題は経済だ!

コロナ19事態は北朝鮮も例外ではなかった。 北朝鮮はコロナ19拡散を防ぐために5か月近く国境地域を統制し、貿易が断たれた。 これによって北朝鮮の住民は深刻な食糧危機を味わったという報告が出た。 トマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告官によれば、 3〜4月に北朝鮮は中国との国境取り引きが90%近く急減し、 薬の価格が暴騰して食事をとうもろこしでやっと間に合わせる家庭が増えただけでなく、 飢える人も増加したことが明らかになった。 世界食糧機構(WFP)も6月の初めに 「北朝鮮の人口の40%近い1000万人以上に対する人道主義的支援が必要だ」とし、 今年は北朝鮮住民約120万人を対象に食糧を支援する計画を明らかにした。

これを確認するかのように、6月に中国が80万トンの食糧を支援した。 北朝鮮では「中国は米を送ってくれるのに、南側から送ってくれるのはビラだけ」という言葉と共に 「ひとつの民族なのに、韓米ワーキンググループを口実に何もせず、ただビラだけ送る」という不満が出てきた。 北朝鮮が対北朝鮮ビラと韓米ワーキンググループを集中的に糾弾する背景には、 食糧不足などの北朝鮮が処した難しい経済状況があることが推し量れる。 まさに韓国から来るはずの食糧は来ず、「最高尊厳」を侮辱するビラだけが飛んでくるのだから、怒りが爆発したのだ。

信頼と認識の転換が必要だ

しかしなぜ金与正(キム・ヨジョン)を前面に出したのだろうか? 北朝鮮の住民は、この2年間、金正恩委員長が米国と韓国にだまされたと認識しているようだ。 そのためこれに金正恩は 米国と韓国にだまされたことを返すため、 白頭血統の妹を打ち出して北朝鮮の住民に強靭な政治的イメージを見せ、 新しい政治的権威を作る必要性を感じたのだろう。 つまり対南関係は金与正第1部部長が担当し、 金正恩委員長は民生に力を注ぐという意志だ。

展望の予測は非常に慎重にならざるをえない。 トランプの独善的で即興的な選択と決定が予測不可能だからだ。 文在寅政府に対して米国の陰から抜け出せという注文は いくら強調しても強調し過ぎではないが、相変らず意志は貧弱だ。 北朝鮮は9月9日の政権樹立日や10月10日の党創建75周年閲兵式で 大陸間弾道ミサイルをはじめとする新しい戦略武器を披露するかもしれない。 金正恩にとっては 元山カルマ地区と平壌総合病院の完工も至急な解決課題だ。

これよりも重要なことは、新しい南北「関係」と北朝鮮に対する認識だ。 北朝鮮に対する優越意識や変化を要求するのは帝国主義的発想で、 南北関係の改善には全く役に立たない。 南北関係が改善するには、相互信頼が蓄積されなければならない。 信頼はどのように関係を結ぶかによって変わる。 南北関係は国家対国家の関係だから、水平的観点で接近しなければならない。 南北間の信頼はこのような認識の転換から始めなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-06-19 08:41:07 / Last modified on 2020-07-02 18:40:46 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について