本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:佳士科技事件から見た中国の社会運動問題
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 201903012
Status: published
View


佳士科技事件から見た中国の社会運動問題

[ワーカーズ] INTERNATIONAL

ハ・ナムソク(ソウル市立大中国語文化学と) 2019.03.12 10:39

中国の広東で起きた佳士科技事件は、今年のグローバル問題であった。 すでに韓国でも去年の冬からさまざまなマスコミを通じて報道され、 中華圏のマスコミだけでなく、BBCをはじめニューヨークタイムズやファイナンシャルタイムズのようなマスコミでも深層分析記事を出すほどであった。 事件の要旨は次の通りだ。 昨年の夏、佳士科技(Jasic Technology)という溶接機械生産企業で非人間的な処遇に抵抗し、労働者が労組を設立しようとした。 その後、地域当局と企業の弾圧が強まると、中国の各大学のマルクス主義サークルの学生たちが連帯活動を始めた。 そのまでは中華圏のSNSでさまざまな労働運動支援団体の連帯要請と進行状況の程度が共有されていた。 だが、その後に労組の設立の先頭に立った労働者と、連帯活動に出てきた学生活動家たちが当局に拘禁されて問題が大きくなり、 世界的な関心を引くようになった。 現在、50人を越える労働者と活動家が当局に拘束されており、 一部は自宅軟禁状態といわれる。 そして状況は改善の余地がないように見える。

▲民主労総、国際民主連帯など33の団体と個人13人は1月31日にソウル市明洞の中国大使館前で記者会見を行い中国政府が労働者、学生活動家を逮捕、弾圧しているとして彼らの釈放を要求した。[出処:東アジア国際連帯FaceBook]

この佳士科技事件について、韓国のメディアの報道内容を見ると、少々興味深い傾向が発見される。 保守メディアはこの事件を中国という社会主義国家がとても全体主義的な性格を持っており、 反人権的な弾圧をしているという反共主義的な視点を拡大する側で報道する。 進歩メディアは連帯活動に出てきた中国の大学生たちが 「全泰壹評伝」や「韓国労働階級の形成」などを読んで、 韓国の労働運動と労学連帯の経験を受け入れているという面を多く浮上させた。 二つの傾向とも一定程度、韓国の経験に基づいて現在の中国を観る視点を表わしていると言える。 だがさまざまな曲折を経た中国の現代史と改革開放以後、 現在複雑に形成されていく社会組織や思想傾向を背景として調べると、 この事態を少し違う視点から見ることができる。

まず、佳士科技の労働者と連帯した学生は、反体制人士ではないことが明らかだ。 一部の西欧の報道機関は彼らを既存の自由主義的な反体制人士と連結させたりもしたが、 彼らの間には当局の強い弾圧に苦しんでいるということ以外の共通点は全くない。 中国が一党独裁を廃止して西欧の政治制度を受け入れるべきだというのが 既存の反体制人士の立場だが、 佳士科技の活動家たちはその立場に同意しない。 彼らは社会主義国家の中国がなぜその体制の主人である労働者の権利を保障せず、 逆に資本家の肩を持って弾圧するのかという質問を投げ、 この現実を正すための行動に出たのだ。 彼らは中国の革命歴史と共産党の統治に反対しない。 彼らの思想的基盤は相変らず毛沢東主義であり、 彼らの闘争は現体制の中で完全に合法的だと主張する。 「不法組織」を結成して西欧のNGOから不法な資金支援を受けたというレッテルはくやしいだろう。

次に労学連帯に出てきた学生活動家が韓国の社会運動経験を参照しているということは事実だが、 全的にそれに依存しているのではない。 改革開放以後に中国が資本主義を受け入れて、権威主義的な発展モデルを通じ経済成長を追求した。 その中で多くの労働者と農民が搾取されているという事実は、韓国の発展の経路と似た側面が多い。 それで彼らは農村出身の女工たちに献身した全泰壹(チョン・テイル)烈士の人生と思想に感動して労働現場に進出して組織を結成し、 闘争によって社会の進歩を引き出した韓国の学生運動と社会運動を参照するのは当然のことだ。

だが上で説明したように、韓国の社会運動が軍部独裁に抵抗する反体制的な性格を持っていたのに対し、彼らの運動はそうではない。 なぜ当局が公式に打ち出す社会主義イデオロギーとは異なる道を行くのかについての批判であって、政権を打倒しようという論理までは行かない。 彼らが要請しているのは中国共産党が彼らの革命的な歴史を再確認すべきだという当局の反省と省察だ。 その上、北京大のマルクス主義サークルを率いたウェシンは、 習近平が青年の時期の農村下方経験が自分を感動させ、 現在の連帯活動が外部の思想に依存しているのではなく 中国の5.4運動と革命の経験から始まったことだと話した。

中国的革命の伝統の錯綜

そのため東アジアの発展した国家の経路に依存する近代化論に立脚し、 経済成長とともに中産層拡大による民主主義の要求と解釈するには限界がある。 それだけではなく「資本が行く所に対立がある」というように 基本的な資本と労働の同学論理に依存して中国の社会運動を見る解釈にも限界がある。 もう少し深く見るべきことは、中国の現代史の中で絶えず断続的に起きた社会運動の脈絡だ。

1957年の反右派闘争の当時、右派とされて苦難に会った中国の異端的な社会主義の伝統はもちろん、 文化大革命の当時の造反の経験と1989年の天安門事件の時に自分たちを 「愛国的社会主義者」と称した学生運動の事例などの連続線上で今の事態を把握する必要がある。 現在の中国の社会運動と労働運動は、 資本主義の受け入れの中で展開する資本と労働の対立という普遍的矛盾とともに、 現代史の中で絶えず継続してきた基層からの抵抗運動だという 中国的な革命の伝統が錯綜されていることを認識しなければならない。

現在、中国は分岐点に立っている。 習近平体制はこれを「新時代」と命名すると同時に、 現在中国が直面している貧富の格差、不正腐敗、生態危機、負債の増加、経済成長の鈍化、米国をはじめとする強大国との対立など、 山積した多くの国内外の問題を解決するために、権力を共産党に一元化した。 この過程で党中央はまたマルクス-レーニン主義を強調し、 強力なイデオロギー摘発を始めたが、 基層では少しずつその本質的な性格は何か、 果たして誰のための社会主義なのかを問いかけている。

現代史の中で何度も繰り返された、 権力維持のための上からの社会主義と、 解放を追求する下からの社会主義がまた衝突し始めた。 中国の労働者と学生はまた難しい道に出た。 初めて佳士科技で問題提起をして行動に出た湖南出身の労働者、米久平は 「常に誰かが先んじなければならない。 すべての人が恐れれば、われわれ労働者は自由の日を争奪できない」と周辺に話したという。 これはとてもよく知られる魯迅の古い文句を思い出させる。

「希望とは地上の道のようなものである。 もともと地上には道はない。 歩く人が多くなればそれが道になるのだ」。 [ワーカーズ52号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-14 20:38:12 / Last modified on 2019-03-15 22:42:33 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について