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朝鮮半島旗を振ったらIMFが笑った

[ワーカーズ・イシュー(3)]IMFと北朝鮮市場開放

チョン・ウニ記者 2018.11.05 10:03

[編集者の言葉]国際金融資本の伝導師が南北経済協力を指揮することになった。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が11月4日、大統領所属機構の北方経済協力委員長にゴールドマンの権九勲(クォン・グフン)エコノミストを委嘱した。 彼は2001年から2004年まで、国際通貨基金(IMF)モスクワ事務所常駐代表だった人物で、旧ソ連の市場化に関与した。 文在寅(ムン・ジェイン)政府の平和と非核化、南北経済協力の大きな絵は結局、超国籍金融資本が主導する北朝鮮の市場開放へと向かっている。 〈ワーカーズ〉は2回にかけてこれをめぐる南・北・米の立場、そしてドイツの統一と東欧の市場開放が労働者民衆に及ぼした影響を調べる。

(1) 朝鮮半島旗を振ったらIMFが笑った

(2) 西欧資本のゴールドラッシュと東欧労働者のディアスポラ〜ドイツ統一損益計算書

[出処:青瓦台]

「金正恩(キム・ジョンウン)がIMFを望んでいる」。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の口から突然飛び出した言葉だ。 9・19平壌共同宣言から一週間経った時であった。 国内ではとんでもない知らせだった。 9月25日に国連総会に出席するために米国のニューヨークに飛んだ彼は、 米国外交協会(CFR)とアジア社会政策研究所(ASPI)が招請した討論会でこのように話した。 彼は北朝鮮が経済開発のために核兵器を交換しようと思うと、 金正恩(キム・ジョンウン)の言葉を伝えた。 韓国は「実質的な非核化」によって制裁措置が解除されれば、 北朝鮮の経済開発を支援する計画だが、 国際金融機構の支援が必要だとも述べた。

去る5月には金東ヨン(キム・ドンヨン)経済副総理が、 韓国はヨーロッパ復興開発銀行(EBRD)を含む国際金融機構(IFIs)からの資金と支援を受けられる近道を探していると明らかにしていた。 金副総理は10月13日にもG20(主要20ケ国)財務長官・中央銀行総裁会議に参加するためにインドネシアのバリを訪問し、 IMFのクリスティーヌ・ラガルド総裁と会って 「北朝鮮が改革・開放を推進し、国際社会に入る過程で積極的な役割を果たしてほしい」と頼んだ。

ついでにIMF

「IMF」と言えば経済オンチもダメを出す局面に、なぜまたこの言葉が出てきたのか。 1997年、IMFにひどくやられてから20年も過ぎたのに。 何か非核化プロセスに超国籍金融資本の陰謀でもかくれているのか? しかし韓国を除けば海外は無関心だ。 外信はすべて韓国発ニュースで報道した。 「文在寅(ムン・ジェイン)がこんなことを言ったそうだ」、 そして「韓国副総理がまたまたこんなことを言ったそうだ…」。

北朝鮮の態度も外観上は気乗り薄だ。 労働新聞の最近報道は、国際金融機構に冷たいことこの上ない。 9月22日付の労働新聞は「南南協力に自主と繁栄の道がある」という題名で 「帝国主義者などは『援助』をエサとして発展途上国に対する経済的侵略と略奪を強化している」とし 「発展途上国が帝国主義者どもの搾取と略奪から抜け出して経済的自立を実現するには 南南協力を幅広く進めなければならない」と大声を上げた。 9月28日にも「わが国の代表団団長、非同盟諸国外相会議で演説」したという知らせだけを短く伝えた。

何か韓国が急ぎすぎなのだろうか? 現在ではそう見る蓋然性が大きい。 去る9・19平壌共同宣言で事実上、南北双方の終戦宣言はなされたものの、 相変らず米国の動きは鈍い。 こうした状況で文在寅大統領による国連総会での言葉は、 IMF世界銀行年次総会とヨーロッパ歴訪を控えて国際社会に投げた宣言であり、 米国に対する泣訴であった。 それでなくても燃えあがっている米中対立の渦中に、米国中心の国際経済体制を傷つけないようにするという思いがにじむ言葉だった。 一方には南北経済協力が表面化された場合に備えて開発資金を確保しなければならないという理由もある。 しかも反共勢力が「ばらまき」攻勢を浴びせているので政府としては至急大きな絵が必要だ。 政府は朝鮮半島新経済地図と経済統一の具現方案を出し、 南北鉄道と道路建設事業を年内に着工すると話しているので、なおさら時間がない。

IMFも積極的なサインを送りはした。 去る5月、金東ヨン(キム・ドンヨン)副総理はtbsの「キム・オジュンのニュース工場」に出演して 「世界銀行(WB)とヨーロッパ復興開発銀行(EBRD)などが電話で 『これまでロシアなどの体制転換国に対する支援の経験が多い』とし、 北朝鮮が開放または改革すればノウハウを持って参加するといった」と伝えた。 去る7月中旬にIMFの関係者もサウスチャイナモーニングポストに 「北朝鮮が加入することを望めば支援を検討する」と明らかにした。

資本主義になっても社会主義を守る

北朝鮮がIMF加入の意志を示したのは事実だ。 すでに北朝鮮は1997年にIMF使節団を公式に招請し、IMF加入の意思を明らかにしたことが伝えられている。 [1] IMFは金大中(キム・デジュン)政権の2000年(米国)と2003年(UAE)のIMF年次総会に北朝鮮を特別招請した。 だが北朝鮮のIMF年次総会への出席は北核などの問題ですべて不発になった。 [2] 2005年にはWTOにオブザーバー加入を試たことが伝えられている。 もちろん米国と日本などの反対で2000年代中盤以後、 国際機構はもちろん北朝鮮も国際機構への加入について 今回のような明確な態度を現わしてはいなかった。 [3]

では果たして北朝鮮がIMFに加入することになるのだろうか? 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の力強い言葉とは違い、 政府の計画にはまだIMFという3文字はほとんど出てこない。 しかしIMFを通した市場開放プロセスは絶対真理と思われている。 国策研究院の対外経済政策研究院が去る7月に発表した 「体制転換国のWTO加入の経験と北朝鮮経済」という研究成果もこれを既定事実として受け入れている。 この研究は「今のところ、北朝鮮の非核化と恒久的な平和定着が主な議題として議論されているが、 関連の議論が拡大すれば北朝鮮の制裁緩和とともに北朝鮮経済の国際市場への編入が形成される」と期待した。 また「北朝鮮の経済改革開放、対外関係正常化の過程で自由貿易体制への編入は必須不可欠な問題」とし、 WTOへの加入は市場経済体制転換の最終的な段階で、 その前にIMFやアジアインフラ投資銀行のような金融機構に加入するだろうと見通した。

非核化さえできれば万事OK

では北朝鮮がIMFに加入すれば、果たしてどのようなことが起きるだろうか? 東欧、ベトナム、中国などの既存の社会主義圏の市場開放事例によれば、 開発借款、テクニカルサポート、資本主義の普通の国家として、 世界金融体制への加入とそれにともなう外国資本の流入などが期待できる。 しかし同じように韓国の大企業をはじめ超国籍資本の利害による外国為替市場の自由化や市場開放、民営化などの圧力に振り回される可能性が高い。 これによりベトナム式であれ中国式であれ、 不平等と低賃金労働市場の拡大が韓国、北朝鮮のどちらにも重要な問題になる。

しかし市場開放による南北の労働問題に対する対応はゆっくりしているようだ。 去る2次南北首脳会談に同行した民主労総のキム・ミョンファン委員長は、 北朝鮮への訪問後に 「北側に労働界の交流の必要性を十分に伝えた」と説明した [4] が、 確実に南北労働者の連帯を構想する大きな構図は見えない。 だが脱北民で構成された自由民主労働組合は2016年に活動を始め、勢力化を始めた。 上級団体は全国労働組合総連盟で、セヌリ党と共に労働改革立法を要求する記者会見を行う右派労組だ。 [5] [6]

市民社会からも開放に対処する声が聞こえる。 北朝鮮民主化ネットワークなどは10月26日に「人権のための北朝鮮経済開発戦略摸索」を主題とするシンポジウムを開き、 開放局面での積極的な介入を模索した。 ここで準備する未来のキム・ヨンファン代表は 「北朝鮮の改革と開放はすでに逆転できない段階に到達した」と明らかにした。

北朝鮮制裁をさらに強める米国

これまで米国は、韓国政府が国連総会を起点として世界の舞台で雰囲気を盛り上げ、 次々と出してきた北朝鮮制裁措置緩和のサインをすべて捨てた。 5・4措置の解除はブレーキがかけられ、北朝鮮の制裁を解除してくれという呼び掛けもすぐにアウトになった。 結局、2次北米首脳会談も米国大統領選挙の後になった。 米国は急いでいるわけでもなく、手綱をさらに引き締めることで南北ともに開放にもっと素直になると期待する様子だ。

今や国際金融機構を通した資金支援は、むしろ北朝鮮には「ニンジン」になった。 駐米国韓国大使だったホン・ソッキョン朝鮮半島平和作り理事長も10月22日、 中央日報と米国戦略国際問題研究所(CSIS)が開催したフォーラムで 「国際民間資本が北朝鮮に入ろうとすれば、 北朝鮮が国際社会に編入しなければならない」とし 「まず北朝鮮が国際通貨基金(IMF)への加入要件を充たさなければならない。 そうすればIMFと世界銀行、アジア開発銀行に加入できる」と提案した。

去る9月の平壌首脳会談にでかけた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の北朝鮮訪問の旅にも 平和と統一のための朝鮮半島の旗が熱く振られた。 北朝鮮の住民も朝鮮半島旗と人共旗を共に振って歓呼した。 しかしこの非核化と平和プロセスの末に、果たして誰が笑うのかは憂慮すべき現実だ。 ペ・ソンイン韓神大教授は「北朝鮮は80年代から少しずつ改革開放をしてきたが、 これをさらに拡大するということだ。 北朝鮮内の貧富の格差も増加しているが、結果的に見れば完全に資本主義化されるだろう。 しかし今は非核化や北朝鮮制裁に問題が集中しており、 開放改革や体制転換問題は次の順位にある。 北朝鮮が低賃金の生産基地になり、搾取されるのは明らかだろう。 介入力を高めなければならない」と指摘した。[ワーカーズ48号]

[脚注]

[1] http://nk.chosun.com/news/articleView.html?idxno=23696

[2] http://news.hankyung.com/article/2002092985598

[3] 対外経済政策研究院、『体制転換国のWTO加入経験と北朝鮮経済』、2018.

[4] http://news1.kr/articles/?3433615

[5] http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/ss_pg.aspx?CNTN_CD=A0002175628

[6] 2016年に統一研究院が行った「民主主義および市場経済に対する脱北民認識調査」によれば、 政党一体感を持っていると答えた154人の回答者のうちほとんどの脱北民が保守政党を支持していることが明らかになった。 具体的には119人(78.0%)がセヌリ党(現自由韓国党)を支持していることが明らかになった。 残りの回答者34人のうち20人(13%)は共に民主党、 11人(7.2%)は国民の党、 2人(1.3%)はその他の政党、 そして残る1人(0.65%)は正義党を支持すると調査された。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-11-05 16:19:23 / Last modified on 2018-11-09 19:48:53 Copyright: Default

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