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革命的に労働しろ?!

[ワーカーズ・イシュー(1)] 第4次産業、革命的に!!! 労働しろ???

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2018.10.01 11:10

第4次産業革命、経済成長の夢

昨年、アディダスは東南アジアの下請工場をたたんでドイツのインスバフに工場を開いた。 東南アジアの下請工場600人の労働者たちが作った靴をこの工場では10人が作る。 年間50万足の靴生産を目標にしているが、ほとんどが自動化されているためだ。 その上、顧客がインターネットで各種のオプションを入れて直接注文してから5時間で製作が終わり配送が始まる、 文字通りスピードファクトリー(speed factory)だ。

第4次産業革命は死んでいる資本主義世界経済の成長潜在力を押し上げて生産性を上げる期待感に満ちている。 ただしいくつかの生活便益を提供するのではなく、生産のパラダイムを変えて生産性の一大革新を実現することが目標だ。 そうすれば産業革命という声を聞くこともできる。 600人がしていた仕事を今では10人でできて、生産時間も短縮した。 生産性が猛烈に上がらなければならない。 では実際に生産性はどれほど増大したのだろうか? しかし不思議なことに第4次産業革命が始まり、 デジタル転換(digital transformation)が起きているが、 生産性の増加傾向は鈍化するか、むしろ下がっている。 第4次産業革命技術革新の成果が現れるには時間がかかるから、もっと待たなければならないのか?

生産性 [1] の謎

こうした状況を「生産性の謎(puzzle)」と言う。 1970年代に経済学者のソロー(solow)は 「コンピュータは随所にあるが、生産性統計だけでは見られない」とも話した。 事実、資本主義世界経済の生産性鈍化は1970年代以来続いている。

スマート工場ができたと考えてみよう。 三人がしていた仕事を1人がしても同じ生産量を達成すれば、生産性は当然増加する。 ところが職場から追い出された人々がどんな状態かによってこの様相は変わる。 二人とも仕事を止めて労働市場から抜けると生産性は増加する。 労働生産性はGDP(国内総生産)を労働投入量(総労働時間)で割ったものなので、 労働投入量が減って生産性を上げる。 しかし、この二人は失業状態では生きられないから仕事をしなければならない。 もし二人が生産性が低い他の分野に就職すれば、生産性を落とす要因になる。 該当業種の生産性が低く、労働投入量だけが増加するので生産量が増加しないからだ。 自営業者になっても同じだ。 チキン店、カフェ、コンビニ…。 すでに限界が明らかな商圏をめぐって似た業種どうしが競争して、 10店が創業すれば11店がつぶれるのでは生産性は上がらない。

生産性が下がるもうひとつの原因は、サービス業の生産性停滞にある。 製造業の自動化率は相対的に高い。 特に組み立て産業に属する携帯電話・電子・自動車などは事実上、 スマートファクトリーと近いほどだ。 韓国の場合、自動車は自動化率が世界最高で80%を越える。 だが鉄鋼・化学・セメント・製紙などの工程産業は老朽設備を交替することが容易ではなく、多くの人員を必要とする。 これから製造業でスマートファクトリーはこの部分に集中する展望だ。 同じように、サービス業も金融、保険、医療、教育、流通で大型化、自動化等を通じ、 人員を削減して生産性を上げる領域がある。 実際この領域では生産性は着実に増加した。

しかしサービス業種のうち主に人間の労働を必要とする販売、建設、運輸、美容業などでは、 単純な人員削減による生産性向上とは異なる基準で評価される。 サービス価格が最終価格なのでサービス価格がそのまま生産量になる。 ここは時間当りの賃金がサービス価格を決め、サービス価格の値上げが生産性の工場に直結する。 たとえば、ヨーロッパ特に福祉国家と呼ばれるほど、サービス料金は想像を超えるほど高い。 人件費、すなわち労働力の価値が高く、サービス価格が高いので生産力もまた高い。 しかし韓国の場合、製造業と比べるとサービス業の生産性は40%程度に過ぎない。 OECD国家の中で最下位。 人件費が低く、サービス価格も低く、生産性も低いためだ。 最長労働時間に労働生産性もほとんど最下位に属する。

サービスの価格が上がれば生産性が上がるが、問題は賃金を上げるのには限界があるという点だ。 賃金が上がれば労働力価値が上昇するが、サービス価格も上がり、北欧のように物価も上がる。 賃金が上がっても物価が共に上がれば朝三暮四だ。 実質購買力には差がない。 また該当業種の付加価値創出能力も限界があるのでサービス価格の値上げにも限界がある。 しかし労働力価値が上がれば、賃金も、価格も、物価も上げて生産性も上げなければならない。 だがこの過程でまた労働費用を節減するための試み(雇用削減、つまり生産性向上)が続く。 最低賃金を上げればアルバイト店員を雇用する代わりに自動販売機を導入する。 アパート警備員を解雇して無人警備システムを導入する。

第4次産業革命は、こうしたサービス業種の労働まで人工知能とロボットに変え、 時間が経つほどこの部門でも労働供給は減る。 結論的に、第4次産業革命、またはデジタル転換で生産性を上げるには、 二つの条件がすべて備わらなければならない。 追い出された労働者たちがいっそ長期失業状態にあったり(失業は経済成長にもうひとつの負担を呼ぶ)、 総労働時間が短縮された場合、 新しく就職した部門の生産性が以前の事業場と同じか、さらに高い生産性を持つ場合だ。 簡単に言えば、既存の業種と新しく作られる業種で時間当り賃金は上がり、労働時間は減った場合だけだ。 これをもう少し押し進めれば、ロボットが仕事をして人はより少なく働き、より多くの賃金を受け、余暇を楽しむ状況になる。 ラクダが針の穴を通るほど難しいこの条件を現実では満たせない。 追われて出た職場の生産性がさらに高いか、さらに多くの賃金を払える雇用にはならない。 その上、元からいた労働者たちとも賃金競争をするので賃金水準はさらに下がり、生産性も低下する。

新しくできるという雇用も状況はあまり違わない。 第4次産業革命で新しくできると予想される雇用は、 ほとんど人間の(肉体労働であれ頭脳労働であれ)労働を基盤とするサービス業種だ。 人工知能とロボット、ドローン、自動走行車、3Dプリンタなど、 第4次産業革命と関連した新規需要で関連製造業が拡大しても、 ここもスマートファクトリーになり、雇用創出能力は前より顕著に下がる。 第4次産業革命委員会が紹介した新しい雇用は、 少数の人工知能とロボット、ブロックチェーンなどの核心技術の開発者を除き、 SNSの専門家、ホログラムの専門家などのサービス業に集まっている。[2] 賃金とサービス価格が生産性を決める雇用だ。

第4次産業革命と革新そして搾取

第4次産業革命を率いる代表的な革新企業を見れば、 革新の対象と動力が分かる。 GoogleとFaceBook、アマゾン、ウーバーとAirBnB、Netflix、製造業ではiPhoneを作ったアップルを上げられる。 彼らは途方もない収益をあげている。 GoogleとFaceBookは30%台の営業利益率を誇り、 アマゾンなどは営業利益率は低いが市場独占のために競争相手が付いてこられないほど、 毎年大規模な投資をしている。 これらの革新企業は米国株式市場の時価総額を左右する企業に成長した。

彼らは何を革新したのだろうか? 流通構造をオンラインに変えて(アマゾンとNetflix)、 新しいコミュニケーションと情報検索手段を提供して(FaceBookとGoogle)、 寝ている資産を呼び覚まして(ウーバーとAirBnB)、 電話よりさらにスマートで新しいスマートフォンを提供(アップル)するなどの 革新と使用者の便益を増加させた。 このように、競争で勝利して市場を独占した。 だがこれは革新の多様な形態の一部を見せるだけだ。 本当の革新はまさに費用を減らしたという点だ。 いくら革新的な製品でも、価格が高ければ使い道がない。 それですべての革新は便益と共に競争の優位に立つことができる「費用」に合わられている。 iPhoneの本当の革新は価格にあった。 2007年に初めてiPhoneが出てきた時は$499(4GB)で供給された。 人々はこの価格でこうした性能とデザインを見せたことに歓呼した。 2010年に入るとスマートフォン競争がさらに熾烈になり、 iPhone4は市場に発表価格を$99(8GB)まで下げた。 いわゆるグローバル価値の鎖(Global Value Chain)を通じ、 部品生産と組み立ての労働費用を節約し、 価格を画期的に下げた。 クリスティアン・フォックスはアップルのこうした生産方式をデジタル労働の国際分業に基づく「新帝国主義」と規定する。 [3]

同じようにGoogleとFaceBookなどのSNS企業は革新的なコミュニケーション手段を提供したことで金を稼いでいるのではない。 使用者が代価なしで作ったコンテンツを自分のものにして、 広告で交換価値を持たせ、これを市場に売った。 FaceBookとGoogleは営業利益の80%以上が広告収入だ。 ウーバーは個人所有のタクシー一台もなく、AirBnBは個人所有の部屋一間もなく、 他人の生活手段(休眠資産)を仲介して市場交換を実現し、金を稼いだ。 流通業者のアマゾンとNetflixも、オンラインで流通を媒介しながら世界的な水準で流通市場の独占を成し遂げた。 特にNetflixは流通だけでなく(流通市場を席巻した後に独占をさらに強化するために)コンテンツ製作にも進出し、 オリジナル コンテンツを買い入れたり独自に製作する方式まで進んでいる。

このように、第4次産業革命を率いる革新企業はほとんどが過去と違う方式で労働力を専有し、これが革新の原動力になった。 最近の革新は多様な消費者余剰(surplus)を提供する外観(資本間競争の必要条件)を帯びているが、 供給の面では労働費用の削減または他人の労働生産物の搾取として現れている。

革命的に労働したところ

1935年、旧ソ連で炭鉱労働者スタハノフは当時の新技術を利用して他の鉱夫より8倍から14倍生産量を増大する多分に革命的な成果を上げた。 他の労働者もスタハノフを学ぶとして起こした「スタハノフ運動」は、 社会主義国家でも生産性増大のために技術と融合した労働の搾取として現れた。

第4次産業革命は一方では労働市場を低賃金競争へと推し進め、 不安定労働を深化して拡散する。 他方では労働過程を変えて労働関係を変化させる。 既存の賃金労働関係を解体し、多様な独立生産者を量産する。 すでにウーバータクシーを供給する契約者が自営業者なのか、ウーバーとの雇用関係が存在する労働者なのかについての闘争が続いている。 独立生産者、自営業者が量産される中で、 彼らはすべて大資本のプラットホームの中に従属する。 ブロックチェーンがいくら発展しても、今日のGoogleとアマゾン、Netflix、ネイバーのような上位プラットホームが情報を媒介する限り、 彼らの下位プラットホームを構成する。 むしろ独占はさらに深化する。

GoogleとFaceBookなどのSNS企業の使用者も独立生産者のような位置に立つようになる。 FaceBookを利用することを条件として自分が生成した各種のコンテンツと個人情報を企業に譲り渡す。 これは取り引きだ。 自分の労働生産物(ブログ、FaceBook、検索などの各種コンテンツと多様な活動の中に形成された個人情報)を企業のSNSを利用することと交換するためだ (この交換の法的手段がまさに企業の利用約款だ)。 企業はこの労働生産物を中間材として広告と交換したり、 個人情報は直接金を受け取って売ることで利潤を残す。 この過程がさらに専門的に行われると商業的契約関係に拡大し、 YouTubeのクリエーターと共に収益を配分する。 プロゲーマーと共に遊びで始まり賃金労働と結びついたプレーバー(play+labor=plabor)、 生産者であり消費者のプロシューマー(producer+consumer=prosumer)も、 独立生産者の一断面を形成する。

このように、第4次産業革命は飽和状態に達した資本主義生産体制内で 「生産性向上のない産業革命」になる可能性が高い。 中国も市場開放から15年後に生産性は停滞状態に向かっている。 インドとアフリカでの労働生産性の上昇が、 墜落する世界の生産性を引き上げる役割を果たすだろうが、 効果そのものは中国ほどに長く続きもせず、効果も大きくないものと見られる。 第4次産業革命とデジタル転換が促進されるほど、 雇用の移動と共に生産性の増加傾向の減少はさらに目立つ展望だ。

また、現在の産業再編は賃金労働とともに 他人(独立生産者、使用者など)の労働生産物を収奪することによって 資本の利益率上昇を企てる新しい体制への移行を意味する。 新自由主義が主に金融化(負債化)を通じて金融的収奪を拡大し、 資本の利益率を回復するための体制だったとすれば、 この新しい体制は、分配された利益や契約された労働力よりも労働生産物そのものの収奪を拡大していくだろう。 労働に基づくさらに多くのサービス業の雇用が契約労働を含む独立生産と自営業の形態で現れ、 彼らの労働生産物に対する戦取、受取、収奪と搾取をめぐる資本間競争と対立が爆発するだろう。[ワーカーズ47号]

[脚注]

[1] 生産性要素には資本、労働そして総要素生産性がある。 一般的に資本は飽和状態なので資本の増加による生産性の増加は特殊な状況を除いてほとんど考慮しない。 総要素生産性は資本と労働生産性を除く残りの要素で表現される。 したがってここでの生産性は労働生産性を意味する。

[2] https://www.4th-ir.go.kr/4ir/detail/144?boardName=code3

[3] Digital Labour and Karl Marx, Christian Fuchs, Routledge, 2015

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-10-05 02:03:43 / Last modified on 2018-10-09 20:24:58 Copyright: Default

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