本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:国家保安法廃止に耳を塞いだ朝鮮半島の春
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 201806007
Status: published
View


国家保安法廃止に耳を塞いだ朝鮮半島の春

[ワーカーズ]イシュー

キム・ハンジュ、パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2018.05.30 10:23

[出処:チャムセサン資料写真]

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が金正恩(キム・ジョンウン)閣僚長と会うために軍事境界線を越えたから「国家保安法」違反だという。 青瓦台の国民請願掲示板には南北和解ムードとの戦争を策動する自由韓国党により、 国家保安法に違反したので解散しろという文も書き込まれている。 4月にはソウル市龍山区のあるスタジオに展示された金正恩の「指ハート」の写真に対し、 多くの市民が認証ショットを撮ったのは国家保安法違反だという記事があふれた。

板門店宣言で南北平和の局面が開かれた今。 鼻につければ鼻輪になり、耳につければ耳輪になる国家保安法は相変らず健在だ。 滑稽に思われるが、相変らず人々を監獄に送る強力な悪法。 この希代の悪法は、誰よりも韓半島の平和を望む人々を前科者にしてきた。 朝鮮半島に春が深まるこの時、≪ワーカーズ≫が国家保安法被害者の話を聞いた。

民衆総決起の一日前に国家保安法で拘束

民衆総決起が開かれる二日前の2015年11月12日の夜。 平和行動牧者団のキム・ソンユン牧師が同窓会の後、京畿道光明市の家に帰る道だった。 突然、国家情報院の職員数十人が彼を襲い、自宅に引き込んだ。 彼らは夜11時半、妻と6歳の末娘が寝ていた家に押しかけて押収捜索をした。 キム牧師は家の外で制圧されたまま「あなた、あなた」と叫びながら泣き叫んだ。 夫の手には手錠がかけられていたし、耳からは血が流れていた。 キム牧師は妻に弁護士を呼んでくれと言い、翌日の明け方にチャン・ギョンウク弁護士が押収捜索現場に到着した。 チャン弁護士は国家情報院職員に令状を見せろといった。 彼らは適当に令状を見せてすぐ隠してしまった。 写真撮影も妨害した。 部屋をあちこちまわって押収捜索する時は、家族から見えないようにした。 押収捜索は朝6時まで続いた。 押収捜索が終わると、国家情報院はキム牧師を国家保安法の利敵表現物所持罪で連行した。 その時、彼らに連行されたキム牧師は2年半経った今も家に戻れずにいる。 その日の記憶は妻と娘たちのトラウマになった。

国家情報院は裁判で、キム牧師が北朝鮮文学と映画を所持していたと主張した。 しかし提出された証拠資料は該当図書の全てではなかった。 国家情報院が問題にするような部分を集めてつぎはぎした資料であった。 国家情報院が証拠にした資料はインターネットでも見つけることができた。 裁判で明らかになったさらに衝撃的な事実は、 国家情報院が2006年から今まで、キム牧師を尾行していたということだ。 10年間、キム牧師の資料を集めて「国政危機の瞬間」に爆発するようなタイミングを狙っていたようだ。 国家情報院は裁判でカバンに穴をあけてキム氏を尾行しながら撮影した映像を写した。 キム牧師がキリスト教連合会館で同僚と金正日(キム・ジョンイル)の 「年頭文」について討論したものを盗聴した資料も提出した。 十年以上集めた資料だった。 キム牧師が行く所ごとに国家情報院が建物の関係者や周辺人を買収して盗聴・監聴したという合理的疑いを捨てられなかった。 キム牧師の妻クォン氏によれば、裁判所も不法性が濃い大部分の証拠資料を認めなかった。

国家保安法は2006年から2015年の民衆総決起まで、盧武鉉(ノ・ムヒョン)から朴槿恵(パク・クネ)政権まで、彼に付いて回った。 クォン氏は朴槿恵退陣キャンドルの時、 毎週光化門広場に出てきて夫の無罪と国家保安法廃止のための嘆願書を集めた。 2千人を越える市民が参加した。 クォン氏は「政権が変われば夫も釈放されるだろう」と考えた。 だが誤った判断だった。 どんな政権でも国家保安法にだけは触れなかった。 文在寅(ムン・ジェイン)政府になっても刑務所は相変らず家族面会を拒否した。 キム牧師の事案は厳重だという理由だ。 今年の2月、キム牧師の友人のC放送局の局長級の人物が共にきた時、初めて家族と面会した。 2年半の間、家族と面会をしたのはやっと3回だ。

クォン氏が愚痴るように話した。 「終戦宣言でみんな、平和時代に対する期待が強いようです。 しかし(刑務所の)中にいる人にはよく感じられません。 平和統一よりも国家保安法の方が大きな障壁のように感じられます」。 キム牧師が連行された日は民衆総決起の一日前だ。 民衆総決起で拘束された民主労総のハン・サンギュン前委員長は去る5月21日に仮釈放で出所した。 だがキム牧師の満期出所日まではまだ半年も残っている。

[出処:チャムセサン資料写真]

ハン・サンギュン、「仮」釈放…李石基事件の被害者はそのまま「国家保安法に手を出せない文政権の限界」

パク・ミンジョン氏は清州女子刑務所の中で4.27板門店宣言を見た。 統合進歩党の李石基(イ・ソッキ)内乱陰謀事件の2次被害者であったパク氏は、 2013年4月、李前議員が国会本会議で南北主導の終戦宣言を主張した時を思い出した。 翌日、保守言論が「従北発言」だと言って青筋をたてた場面もやり過ごした。 一か所に集まった南北首脳の肉声を聞くと、妙な感情が交錯した。 彼女は去る5月11日に満期出所して、21日にハン・サンギュン民主労総前委員長の仮釈放出所を外で見た。 彼女は「明るく笑わなければならない日に笑えなくする政府に対する願望も感じる」とし 「ハン元委員長は板門店宣言が発表されて初めての良心犯釈放だった。 それでも李前議員と統合進歩党京畿道党のキム・ホンヨル委員長などの内乱事件拘束者は排除した。 朴槿恵政権の被害者をばらばらにした。 ハン委員長の釈放も無罪を宣言すること(赦免)ではなく仮釈放という便法を利用した。 労働に対するこの政権の観点ではないかと思う。 差別と排除のない良心犯釈放がそんなに難しいことなのか」と明らかにした。

組織も実体もなかった国家保安法操作事件だった。 国家情報院は2013年5月、統合進歩党京畿道党情勢講演の録音を証拠にして、国家保安法事件を作った。 その年の8月、李前議員をはじめとする統合進歩党の核心幹部が拘束された。 パク氏が拘束されたのは事件が起きてから1年半経った後だ。 中央党青年委員長だったパク氏が党のイベントで「革命同志歌」を歌ったという理由だ。 その間、裁判所は李石基議員などの内乱陰謀は無罪で、 地下革命組織いわゆる「RO」の実体もまた認められないと判決した。 それでもパク氏の裁判では国家情報院と検察の起訴意見がそのまま適用された。 国家情報院が唯一打ち出した録音記録400余か所で歪曲が発見されたというのにだ。

同じ理由で拘束された民主労総坡州地域支部のイ・ヨンチュン指導委員の場合も同じだった。 当時、高揚坡州支部長だったイ氏は、情勢講演会で 「ここ(京畿北部地域)は(北朝鮮)接境地域なので、朝鮮半島で何かあれば待避しなければならない」とし 「もし爆撃状況が発生すれば『市単位』でも電話できない場合もあるので、 一か所に集まったりするべきではないか」と発言した。 国家情報院は彼の発言の中の「市単位」を「実弾」と歪曲して大々的に報道した。 実際に裁判所は「実弾」発言の歪曲を確認して、これを修正した。

国家保安法は越えられない壁だった。 さまざまな汚名が雪がれたのにパク・ミンジョン氏は3年間、 イ・ヨンチュン指導委員は2年6か月を刑務所で暮らした。 今のような南北平和自分がどうなったのだろうか、という想像を何度もした。 いくら考えてもくやしいことだった。 イ指導委員は「首脳会談以後に北朝鮮接境地域の坡州に文在寅金正恩の顔が入った横断幕がかかった。 もうすぐ統一されるから、ここの不動産に投資しろという広報であった。 以前の政権なら北朝鮮指導者を公共の場所に掲示したとし、国家保安法上の鼓舞称賛で直ちに拘束しただろう」とし 「最近、金正恩に対する大多数の国民の認識が変わったが、 これさえも『国家保安法』の定規を突きつける現象は旧態然とした国家保安法を廃止しなければならないということを意味する」と話した。

板門店宣言国会批准、国家保安法廃止の変曲点になるか

イ指導委員は死文化している国家保安法が最近また生き返っていると声を高めた。 「マッコリ法」は反共時代の自画像であったし、金泳三政権の「安全企画部法」は労働界のゼネストを呼びおこした。 そして盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は国家保安法が「死文化」しているとし、これを維持させた。 だが国家保安法という錆ついた刃をいつでも抜く公安勢力は、今も健在だ。 実際に2005年に東国大のカン・ジョング教授に対する不拘束捜査が行われ、 これに反対して拘束捜査を主張した公安検事がまさに黄教安(ファン・ギョアン)前総理だ。 当時、黄教安(ファン・ギョアン)をはじめとしてチョン・ホンウォン前総理、キム・スナム前検察総長が核心公安勢力だった。 国家保安法の被害者は彼らが残っている限り、国家保安法はいつでも舞い上がると話した。 最近、進歩的電子図書館「労働者の本」のイ・ジニョン代表に国家保安法を適用した事件だけを見てもそうだ。 言論は文在寅政府の任期初年度の国家保安法起訴率が2008年以来最低だと言うが、 文政府は結局、国家保安法の良心犯赦免には視線をそらした。

被害者たちは今が国家保安法を廃止する適正な時期だと誰もが話す。 文大統領は板門店宣言を国会批准の同意手続きに付すよう指示した。 国会がこの手順を追えば、国家保安法が争点に浮上する可能性が高い。 国会批准で北朝鮮を「国家」と認めれば、憲法と国家保安法、交流協力法などの各種の実定法と衝突を起こすためだ。 大韓民国憲法は、領土を「朝鮮半島とその附属島嶼」としている。 これに伴い、北朝鮮を朝鮮半島に不法占領した「反国家団体」と規定している。 今年の12月には国家保安法は70歳になる。 果たして政府と国会は国家保安法とお別れすることができるだろうか。[ワーカーズ43号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-07-16 11:03:26 / Last modified on 2018-07-16 11:03:27 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について