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News Item 20170910
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少数者嫌悪と性平等改憲

[ワーカーズ]レインボー

パク・ジョンジュ地球地域行動ネットワーク 2017.10.01 21:36

去る9月6日、ソウル市江西区のある小学校では、 江西地域の公立特殊学校設立をめぐる住民討論会が開かれた。 文字通り、江西区のある学校の敷地に「公立特殊学校」設立案を論じる場だった。 しかし、学校設立の試みを中断して、原点から再議論しろという反対住民の抗議により、 結局きちんと進められなかった (金聖泰(キム・ソンテ)自由韓国党議員の選挙公約により、彼らは学校敷地に国立韓方医療院の誘致を要求している)。 討論会は「どんな侮辱も甘受できるが、子供たちの教育だけは放棄できない」という障害者保護者の絶叫を後にしたまま終わってしまった。

この件について、インターネットでも多くの意見がやりとりされた。 よく見られるのは、一種の「折衷案」だった。 障害者の教育を担当する機関ももちろん必要だが、 地域の発展のために該当敷地には病院を誘致して、他の場所に学校を作ってはどうかという調子だった。 「山が良くて水も良いところで勉強すれば良いのではないか」とし、 いわゆる「嫌悪施設」の特殊学校を郊外に押し出そうとする露骨な言葉も眼についた。 彼らは、あるいは彼らの意見が善だと考えているかもしれない。 公益を ―その公には障害者は含まれないようだが― 守りつつ、 障害者に好意を施す自分の意見がということだ。

その数日前の9月2日、放送関係者のホン・ソクチョン氏は週刊誌、時事ジャーナルとのインタビューで竜山区庁長に立候補する意向を現わした。 梨泰院の地域経済を論じるところから出発した対話は 「竜山区庁長になって、私のアイディアで私が愛する町のために働きたい」というホン・ソクチョン氏の言葉につながった。 自然に数年前に出てきた竜山区庁長立候補問題が議論されたのだ。 彼は「私の人生の課題は『韓国社会で同性愛者もこのようによく暮らせる』ということを見せること」と付け加えた。

数年前と同じように、議論ではない議論が続いた。 反同性愛キリスト市民連帯代表のチュ・ヨセフ牧師は、 保守キリスト教言論「クリスチャン トゥデイ」に公開書簡を発表し、 ホン・ソクチョン氏の立候補を引き止めた。 「同性愛は聖書が禁じるので反対するが、今まで同性愛者を嫌っていない」という彼は、 同性愛者を「むしろかわいそうに感じ、愛そうと努力しているところで、 激しい悪態や皮肉の声を聞いても憎くはなくかわいそうで、 ただ笑い流していた」と自分を紹介した。 しかし謙虚な語り口で書かれたこの手紙はかえって脅迫のようだった。

「今まで放送関係者として活躍し、あなたが有名税を踏み台として竜山区庁長に立候補することは、 今まで賛成はしていないが黙認してきた多くの人々に大きな抵抗感を呼ぶだろう」とし 「ゲイとしての権利を得る意図を抱いて現実の政界に飛び出せば、 当然抵抗は小さくないだろう」と警告したのだ。 逆差別を云々しながら、差別禁止法制定に反対する立場もまた明確にした。 上述の特殊学校設立に対するインターネット上の反応と違わない態度だ。 逆らわずに静かに暮らしていれば、かわいそうに感じてもらえるという、 しかしあえて「市民」の領域に入ってこようとすればただではおかないという態度だ。

ひとりの人を彼の場所に閉じ込めておこうとする、 公論の場に入ってきて、自身を表わさないようにするこうした態度を、 われわれは差別、あるいは嫌悪と呼ぶ。 わずか何日か間隔をあけて起きたこれらの事件は、韓国社会の障害者嫌悪を、 そして性少数者嫌悪を如実に示す。 珍しい光景ではない。 低賃金・長時間労働に苦しむ非正規職労働者を残念に思うと言いながら、 彼らが労組を組織して闘争に立ち上がれば、 いつそんなことを言ったかといったように背を向ける多くの人々に会ってきたから。 賃金差別と職場内セクハラに苦しむ女性労働者を残念に思うと言いながらも、 彼女たちがこうした女性嫌悪を問題にすれば、 いつそんなことを言ったかのというように背を向ける多くの人々と会ってきたから。

全国各地の性平等条例制定の時のように、 「性平等改憲」の議論が行なわれている今も、 彼らは私たちを市民の領域から、政治の領域から追い出すことに熱を上げている。 保守キリスト教界を中心に組織された同性愛・同性婚改憲反対国民連合は、 性平等憲法は同性婚を認める憲法だ、 だから(異性愛者の男性と異性愛者の女性だけを認める)両性平等憲法の基調を維持しなければならないと主張する。 異性愛者ではない人々、自分を男性か女性のどちらか一方だと規定しない人々の存在を、 彼らは消そうとしている。 「勤労者」ではなく「労働者」を語る憲法が必要であるように、 「身体障害者」ではなく「障害者」を語る憲法が必要であるように、 今私たちには性平等を語る ― 多様な性自認と性的指向を語る憲法が必要だ。

この文を読んでいるあなたは、あるいは自分が「私たち」に属していないと感じるかもしれない。 しかし、どんな理由であれ、誰かを市民の領域から除去できる国は、 別の理由で別の人もまた除去できる国だ。 特殊学校の設立に対し、ホン・ソクチョン氏の立候補に対し、 低質の入れ知恵をする人々が珍しくない理由だ。 女性であり、青少年であり、性少数者であり、障害者であり、移住民であり、労働者である人を考えてみよう。 初めからこれらは互いにかけ離れた問題ではない。 彼らは性平等改憲が社会を破壊すると話す。 本当に性平等改憲が同性結婚を法制化すれば、これは正しい。 異性愛中心主義社会の一部は破壊されてしまうだろう。

新しい社会は、常に既存の社会の廃虚の上にできる。 憲法改正がすべての問題を一挙に解決できるはずはないが、 憲法に名前を上げることが、誰かが政治の場に入れるようにする最初のボタンだとすれば、 そしてそれが少数者嫌悪的な社会を破壊する一つの方法だとすれば、今が機会だ。 山が良くて水が良いところに閉じ込められて暮らす代わりに、 市民社会という土地に、政治の領域に、一人の人間として入る機会である。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-10-10 02:56:38 / Last modified on 2017-10-10 02:56:40 Copyright: Default

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