本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:ロッテグループ裏金事態と株主権強化の問題
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 001602
Status: published
View


株主の隠密な取引

ロッテグループ裏金事態と株主権強化の問題

ソン・ミョングァン 2016.06.28 15:09

ロッテグループの裏金と支配構造

「兄弟の乱」で始まったロッテグループ事態が、今では海外裏金造成問題まで広がり、全国民的な非難の対象になっている。 特にこの事件が世間の注目を集める理由は、ロッテケミカルが海外から原料を輸入するにあたり、日本のロッテ物産を挟む手法で裏金を造成したという疑惑のためだ。 一種の「通行税」を受け取り、200億ウォン台の裏金を作ったということだ (この疑惑の中心に立つロッテケミカルは、韓国に上場されているロッテ系列会社のうち最大の絶好調の会社だ。 市価総額9兆8000億ウォンであり、昨年の当期純益は昨年同期より6倍近く増え、1兆ウォン程度に達するほどだ)。

これ以外にも2013年にホテルロッテがロッテ済州リゾートとロッテ扶余リゾートを買収合併する過程で、 他の系列会社が保有していたリゾートの持分を帳簿価格より低い価格で買収し、 それによりホテルロッテが不当利益を得た疑惑も受けている。 リゾート株式の帳簿価額は216億ウォンだが、ホテルロッテの株式の取得金額は119億ウォンで、 差額の97億ウォンをホテルロッテが得た。 また、ロッテショッピングは昨年末に保有していたロッテアルミニュームの株式12万5000株を445億ウォン程安くホテルロッテに売却した。 一方、2007年には辛格浩(シン・キョクホ)総括会長が持っていた京畿烏山の土地を当初の予想価格より300億ウォン高く買った。

検察は、こうしたすべての過程で裏金が作られたと見て、循環出資の形で複雑に絡まっているロッテの系列会社を大挙して押収捜索した。 最近10年間で14兆ウォンにのぼる35件の買収合併を成功させたロッテの資金取り引き全般が捜査の対象になった。 それだけ正常な価格より低い値段で株式を譲渡したり、適正価格より高値で買うことが頻繁にあったという。

こうした非常識な系列会社間の取り引きを続けたロッテグループには、ちょっと特別なニックネームがある。 財界序列5位のロッテは、経営権紛争が起きるまで「隠密な企業」と呼ばれた。 日本で生まれたという事実のほかは、総帥一家の持株比率や報酬、配当率などについてほとんど知られていなかったからだ。 80社ほどの系列会社が循環出資で絡まっているが、ほとんどが非上場社で支配構造は徹底的にベールに包まれている。 韓国ロッテ系列86社のうち、直接上場している系列会社は1970年代のロッテ製菓とロッテ七星飲料、2006年のロッテショッピングが全て。 現在、裏金造成の経路とされているのも、たいていは非上場の系列会社だ。 今回押収捜索された系列会社6社のうち企業を公開している上場会社はロッテショッピングだけで、 持株会社役を果たす系列会社が非上場なのは、ロッテが事実上唯一だ。

また、ロッテグループの支配構造もしばしば「屋上屋」と呼ばれる程、複雑で奇妙だ。 韓国のホテルロッテは日本のL投資会社とロッテホールディングスが支配している。 そして、このロッテホールディングスの最大の株主は日本の光潤社だ。 そして光潤社持分の99%は辛格浩(シン・キョクホ)総括会長をはじめとする総帥一家が保有している。 結局、総帥一家が多数の日本にある系列会社を通じ、韓国内の系列会社を支配しているのだ。

国内の系列会社はロッテショッピングとテホン企画、ロッテ製菓を中心に、67の系列会社間の循環出資でつながっており、これは大企業循環出資全体の70%を越える。 特に全循環出資の輪の中で、ロッテショッピング、テホン企画、ロッテ製菓が重要な役割を果たしている。 ロッテショッピングはテホン企画の株式の34%を持ち、テホン企画はロッテ情報通信の株式の28.5%を持っている。 そしてロッテ情報通信はロッテショッピングの株式を4.8%持っている。 ロッテショッピング→テホン企画→ロッテ情報通信→ロッテショッピングという循環出資構造が作られているのだ。 こうした循環出資構造によるロッテグループの内部持株比率は85.6%に達する。 だが総帥一家が持っている持分は、すべて合計しても2.4%に過ぎない。 こうした支配構造の中で、総帥一家は仕事を出すことで簡単に富を積んだ。 たとえば、辛格浩総括会長の三人目の夫人であるソ・ミギョン氏は、 ロッテデパートの店舗で飲食店を運営したり、ロッテシネマの売店を独占運営して収益をあげた。

また浮上した財閥改革

昨年のロッテグループの経営継承争い、別名「兄弟の乱」を契機として苦労したロッテグループは、 閉鎖的で複雑なグループ支配構造を改革すると公言した。 ところが今回の裏金事態であらわれたように、その裏にはさらに醜悪な真実が隠されていた。

こうした状況から見て、支配構造の透明性を高めるために核心の持株会社を上場させて、市場の監視を受けなければならないという声があがっている。 これと共に静かだった財閥改革問題がまた浮上した。 野党だけでなく、与党もこれに参加している。 6月20日の国会政党代表演説で、与党院内代表が財閥の不法、便法的な経営権世襲防止を強調し、財界を緊張させた。

具体的な財閥改革の内容は、商法改正議論に集まっている。 総帥一家と経営陣の専横と不法行為を監視して牽制するために、独立した理事と監査委員を選出し、少数株主権を強化することが核心だ。 ところがこうした内容はすでに以前の大統領選挙の時に提起されており、与党の公約に含まれていた。 当時、朴槿恵(パク・クネ)候補は多重代表訴訟制、監査委員分離選出、集中投票制と電子投票制の段階的導入を公約として提示していた。 当選後、法務部が商法改正案を立法予告したが、財閥の集団的な反発でうやむやになった。 多重代表訴訟は、子会社経営陣の不法行為により会社が損害を受けた時、 親会社の株主が直接子会社の経営陣に対して損害賠償訴訟を提起する制度だ。 監査委員の分離選出は、大株主の影響から自由な監査委員を選任するために、 支配株主議決権を3%に制限する内容だ。 集中投票制と電子投票制は、少数株主権の強化と株主総会の活性化が目的だ。 野党はすでにこうした商法改正を20代総選挙の公約で約束している。

資本の隠密な取引

ところでこうした財閥改革の戦略的方向が、株主権に基づく市場監視機能の活性化だけが設定されることには意見の差がある。 非上場社の内部取引が問題になったロッテの場合、非上場系列会社を上場させて市場の監視領域に置かせようという声は、一見妥当だ。 だが非上場社を上場しても、こうした不正行為が解消されるわけではない。 実際、今回の裏金事態で問題になったホテルロッテは上場を前にしている企業だった。 先に指摘したように、ロッテグループは数年前から隠密な内部取引を行い、最も重要な資産をホテルロッテに編入させ続けてきた。 その理由は、最も重要な資産を背景として企業価値を押し上げ、上場利益を極大化しようとしたためだ。 財閥総師にとって、支配構造の透明性は名分でしかなく、彼らが実際に狙っているものはただ大株主の自分の利益と経営権確保なのだ。

株主の監視を受ける上場企業だとしても、サムスンの経営権継承の道具になったサムスン物産と第一毛織の奇異な合併事態のような事件が相変らず私たちの目前で行われている。 その上、先日、ここに国民年金までが賛成するロボットのように動員されたという疑惑が裁判で提起された。 当時、この争いにはエリオットという外国系の資本が介入して「便法経営権継承 vs 国富流出」という論争まで起きた。 しかしサムスングループであれ、エリオットであれ、彼らがともに打ち出す名分は、株主利益の極大化であった。 そして事態は株主総会での投票による争いで整理された。 社会的に深刻な論争が起きたが、実際にその解決は株主の投票者心理をどちらが多く持っていったのかで決定された。

ロッテグループの兄弟間での経営権紛争事態も、6月25日にまた株主総会での投票対決で現れた。 現在行われているロッテ一家の裏金捜査が電撃的に行われたのは、現辛東彬(シン・ドンビン)体制を引き下ろそうとする辛東主(シン・ドンジュ)会長側の決定的な情報提供のためだという。 辛東主会長はこれまでグループ支配力の中心にあるロッテホールディングスの最大株主である光潤社を支配しているが、 ロッテホールディングスの他の株主の票を得られず、過半を辛東彬会長に渡さなければならなかった。 そのため辛東主会長は今回の裏金事態を契機として辛東彬会長側の友好株主を味方にして反転を試みようとしたのだ。

こうして見れば、これまでロッテの裏金事態が世間にあらわれなかった理由が、株主の間で公然と行われていた隠密な取り引きのためだと見ることができる。 果たして財閥改革のための問題解決の対立構造が、株主間の票対決に狭められることが正しいのか、今一度考えさせるポイントだ。 これは韓国社会が望む財閥改革の意を縮小するばかりか、財閥企業内部の八百長をさらに強化するものだ。 株主権強化を基礎とする財閥改革は、株主の利益を極大化しようとする隠密な取り引きと談合の前で無力にならざるをえないからだ。(ワーカーズ16号)

付記
ソン・ミョングァン:チャムセサン研究所(準). 《負債戦争》を共に作り、チャムセサン週例討論会を企画している。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2016-07-08 09:02:05 / Last modified on 2016-07-08 09:02:06 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について