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韓国:参与政府と汎改革陣営の人々の公務員労組に対する「度を超えた」敵対感
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「不特定多数に毒劇物を散布するようなもの」

参与政府と汎改革陣営の人々の公務員労組に対する「度を超えた」敵対感

「どうであれ、世論戦に失敗した責任は公務員労組にあります。 なにしろ大統領も過去に公務員労組を支持したということでしょう。 すると、実際の条件は全教組の時よりも良いのではないでしょうか。 ところが始めからこんなに強く出れば、支持は得られません。 ハンナラ党が空転させた国会が開かれようとしていて、 民生法案を処理しなければならない時に、 公務員が国を揺さぶればどうなるでしょう。 ですから、国民の絶対多数が公務員労組ストライキを批判するのです。」 11月14日、光化門で開かれた全国労働者大会を参観するために参加した 与党の関係者は、公務員労組に対する世論の悪感情についてこう評した。 労組が世論戦に失敗したということだ。 彼は訪米中の盧大統領が再び大企業・正規職労組の活動を 「彼らだけの労働運動」だと批判したことについても、 世論の悪化に力を得て公務員労組を狙ったのではないかと語った。

公務員労組のストライキが現実になり、参与政府の一糸不乱な 公務員労組鎮圧・破壊作戦が本格化するのはもちろん、 世論の魔女狩りも極端に駆け上がっている。 既に各種の世論調査などでは公務員の団体行動について 否定的な意見が優位を占めている。 ネチズンもまた「鉄鉢等の集団利己主義」 「腹がいっぱいの公僕のとんでもない悪ふざけ」など、非難一色だ。 夏のLGカルテックス労組のストライキの時よりさらに世論が悪化している。 朝鮮日報は、なんと主体思想まで話題にして労組失脚をはじめた。

非難の核心は「身分が安定した」公務員が、何で労組を作るのかということだ。 ここに「不正、不親切」に集約される 「公務員イメージ」が一役買っている。

ところが理解できないのは、公務員の不正に目くじらをたてる国民が 公務員労組が掲げる核心的なスローガンの「不正腐敗清算」には少しも 関心を持たないということだ。 相当数の国民が公務員を知らず知らず不正に関連する存在と認識し、 彼らの自浄能力を全く信頼していないように見える。

問題は、いわゆる汎改革陣営に分類される人々もまた、 こうした見解と違わないという点だ。

ヨルリンウリ党のユシミン議員は最近ある講演で 「誰が公務員になれと脅迫したか? 薄給と知って公務員なったのではないか。 公務員を天職と思う人がどれほどいるのか?」と 公務員労組の団体行動を快く思っていないことを知らされた。

14日には盧大統領の最側近のイグァンジェ議員も 「公務員労組のストライキを防がなければならない」という内容の Eメールを国会担当記者に送った。

「不法ストライキは、国家の法を執行する公職者が 法に違反することになる。これでは誰が法を守れるのか。 全公労が不法ストライキを続けるなら、 国民に無視され、立場がなくなるはずだ。 公務員労組が要求する団体行動権は、全世界的にほとんど認められていない。 まだわれわれはもっと熱心に働き、腰のベルトをきつくしめなければならない。」 イグァンジェ議員の言葉のように、 公務員労組を批判する主張は、このように国民世論を理由とするものがほとんどだ。

たとえば時事評論家のキムソクス氏が9日に 盧政権寄りのインターネットメディア、デイリーサプライズに寄稿した文に、 こうした論理がよく表れている。 経実連の創立メンバーである金氏は、現在、金浦市民社会研究所の代表であり、 17代総選挙の当時は金浦市のヨルリンウリ党候補とも言われた人物だ。

「公務員労組、横になる布団を敷いて足を伸ばせ」という題目の寄稿文で彼は、 「まず労組ストライキそのものを嫌う社会の雰囲気を見るべきだ。 少なくとも相当数の国民世論は、今ではストライキに参加する労働者が もう社会的弱者だとは考えていない」とし、 公務員労組に対する冷たい世論を認識するよう注文した。

彼は、進歩陣営がヨーロッパの例を上げて公務員労組の団体行動権を 要求していることについて、 「韓国社会の公務員は、いまだに大小の不正腐敗事件に公務員が かかわっていることからもわかるように、 相変らず市民社会を圧倒する力を持っている」とし、 「そんな集団が組織を結成して自分の利益を守るために ストライキまで強行するなら、結局、 市民社会におよぼす否定的な結果は我慢の程度を超える」と主張した。

彼は特に公務員労組の政治活動を憂慮して 「労組の活動目標が政権の争奪ではなく、 経済社会的な利益を合法的な手段として認められようとするのなら、 現実に労働2権だけでもかなり有効な手段を確保できる。 労働三権のうち、団体行動権に制限を加えるのは苛酷な規制ではない」と語った。

彼の核心的な主張は、次の最後の部分によく表れている。

「労働運動は、以前の方式で生存していこうとするマンネリズムから 抜け出せなければ、その未来はない。 ここに、労働運動が公務員労組の団体行動権に首をかけて ゼネスト闘争に出るよりも、まず国民世論を見るべき時代の理由がある。」

結局、世の中が変わり、国民的な認識も変わったから、 労働者も変わらなければならないというのが彼の主張の要諦だ。 記者は87年当時「東ソウル地域労働者闘争委員長」だった彼が、 こういう主張をするようになった背景が気になった。

彼に電話をかけてみた。

*あなたの主張はまるで公務員労組が今、20世紀的な革命運動をしているかのように聞こえる。*

「そうなことはない。公務員労組そのものの合法性は認める。 ただ、労働二権で充分だということだ。 一度に外部から投げられるのではなく、 無条件にがんばればいいというものでもない。 戦略・戦術的に接近しなければならないという意味だ。」

*公務員労組の戦略戦術にどんな|ある問題があると見る(の)か。*

「軍事政権の時期ならともかく、表現の自由が保障されたいまは、 まず公務員労組の妥当性についての社会的合意がなされるべきだ。 以前は労組が階級の利益のために戦っていたとしても、 政経癒着に基づいた土台を破壊する公益性があった。 だが、今のように開かれた社会では、 構成員すべてが合意する過程が必要なのに、それがない。 もし民主労働党が出たとしてもよくなるわけがない。 国民の絶対多数を代表していないからだ。 20世紀的な市民主義に立った民主労働党の考えは、 事実上、執権を放棄するということだ。」

*それでは公務員労組が主張する「公職社会不正清算」についてどう考えるか*

「不正腐敗清算は一つのアジテーションでしかない。 6級以下の下部組織に労組ができれば、監視する効果があるが、 その反対の弊害もある。 公務員が徒党を組んで市民が選出した権力を揺るがすかもしれない。 公務員労組は不正腐敗清算の主体でもあるが、 不定の主体になるかもしれないということだ。 たとえば今、大企業の労組では、以前管理者たちがしていた不正を 労組がそのまましているのではないか。 労組そのものが何か正義の基準であるかのように語るのは錯覚だ。 全教組が正しい教育を趣旨に生まれた時、適当な組織がなかったので労組を要求した。 ところが合法化以後、初めに言っていた正しい教育より、 むしろ現場教師たちの集団利益に没頭している。 どんな公益性の基礎があるのか。」

*公務員労組が公益を追求する集団であること理由に団体行動ができないのなら、他の公共部門、たとえば地下鉄労組のストライキも問題だということか。*

「地下鉄公社は公益性は強いが、ストライキによる利益侵害は部分的だ。 代替交通手段もある。公務員労組は全国民を相手にする組織だ。 たとえ話をすれば、ある特定の人を強姦して人を殺すより、 不特定多数に毒劇物を散布するほうがもっと悪いことであるのと同じだ。 さらに、個別の事業場の場合、使用者に職場閉鎖などの対抗権があるが、 公務員労組がストライキをすれば職場閉鎖ができるだろうか。 これは公正なゲームのルールではない。」

*話をうかがうと、あなたは労働組合に根本的な疑いを持っていているようだ。*

「労働運動がもっと責任性を担保にしなければならない。 20世紀とは全く違う。 進歩のために生きる時もあれば、生存のために生きる時もある。 それで戦略戦術が必要なのに、今の労働運動にはそれがない。」

キムソクス氏との電話通話はこのようにして終わった。 彼の言葉はとても衝撃的だった。 その真意まではわからないが、彼が公務員労組に対して‘懐疑感’を超えた 反感を持っていることだけは明らかのようにに見えた。 そしてその反感には‘国民世論’というしんばり棒がある。

もう一つ明らかなのは、こうした彼の考えを支持する 「改革勢力」も少なくないという点だ。 デイリーサプライズや、インターネットハンギョレなどの 改革指向の報道機関のディベートルームには「変化と改革」を言いながら 公務員労組を叱責するネチズンの文が列をなしている。 彼らの大部分は、 現労働運動に対する批判の論理が「それ自体」に巧みに含まれている。

たとえばその批判の論理の中には 「非正規職を差別する正規職の利己主義」という言葉が必ず登場する。 彼らとって非正規職問題は、 あらゆる正規職労働者を攻撃する武器として作動するわけだ。

労働社会研究所のノグァンピョ副所長はこれについて 「改革陣営が、公務員労組を改革を困難にする勢力だと考えるのは事実だろう」 と指摘する。

「改革勢力は、参与政府が公務員労働組合法まで作ってくれたのに、 なぜこんなことをするのかという認識だ。 他でもない参与政府になって、金大中政府時より進展したのは事実だ。 だが、参与政府は公務員労組と対立して何がいいのか悩まなければならない。 参与政府の改革推進過程が円滑にいかなかったのは、公職上層部の反発だった。 下位職は全くしらず、まるで上意下達でただ服従してきた。 公務員労組がこうした改革システムを推進する礎石になるとなぜ考えられないのか。 公務員労組の要求を単に労使関係の問題ではなく、 社会的な役割についての問題だと問題を拡張しなければならない。」

公務員労組に対する汎改革陣営の敵対感は、結局、現在の労働運動が 国家運営の障害になるという認識があるようだ。 ところが彼らの認識は、前後の脈絡を削除すれば、事実上、 守旧勢力のそれと違わない。 攻撃のターゲットが同じだからだ。 彼らが国家保安法に対して血みどろの戦いをしても、 「非正規悪法」の問題では手を結ぶのと同じ文脈だ。

公務員労組は、このような悪条件の中で世論の総砲火を受けている。 この世論の総砲火は、多くの人々が指摘するように 15年前、全教組結成時の闘争を思い出させる。 論議は紛紛としているが、少なくとも世論戦では当時の状況のほうがもっと悪かった。 当時、全教組は「教師も労働者だ」と叫ぶことさえ苦しい条件だった。 だがその時は、いわゆる「民主・改革勢力」など、少なからぬ友軍がいた。 彼らは学内不正と入試地獄を打破しようとしながら 「正しい教育と教育正常化」をかかげる全教組の旗幟に同意して、 世論の砲火に対抗して全教組を防御した。

ところがその時、先頭に立って全教組を防御した相当数の勢力が今、 公務員労組を攻撃している。 「公職社会不正腐敗清算」という労組の正当な叫びを物ともせず、 国家運営の死活がかかったものであるかのようににらみ付ける。 ノグァンピョ副所長が指摘するように 「全教組の経験を基礎に、公務員労組の純機能を生かして 改革のグランドデザインを描くどころか、 その原動力を削って食べているようなもの」だ。

気になったのは、その次だ。 参加と改革の名で公務員労組の首を掴んだ彼らが いつか左・右、または公務員社会にも自分たちの友軍が無いことを悟った時、 またどのように突変するのだろうか。 もちろん改革だ既得権勢力だ、左だ右だと、いつまでも続く 「危ない綱渡り」が現参与政府の進む道だと信じるのなら、 そうにすればいいのだが。

イオソン記者 dodash@labortoday.co.kr 2004-11-16 午後1:52:22入力 (C)毎日労働ニュース

原文

翻訳/文責:安田(ゆ)


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