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世界のNGOはイギョンヘ氏の死をどのように見ているか

「WTOに対抗して戦う抵抗の行動、勇気ある行動だった」

イムウンギョン記者

「故イギョンヘ烈士の冥福を祈ります。」

ハングルとスペイン語で書かれた懸垂幕の下、 農民運動家の故イギョンヘ氏の白黒写真がおかれ、その前列に並べられた 小さなろうそくのあかりが光る。反世界化デモ中、 李氏が自分の胸をナイフで刺して亡くなったメキシコ・カンクン市の コバ通り噴水台広場の姿だ。

△李前会長の自決現場に作られた簡易焼香所(C)民衆の声

イギョンヘ氏自決の知らせは、国内のマスコミでほとんどリアルタイムで伝えられ、 全国を騒然とさせた。しかし、これに劣らないほど、いやむしろ さらに熱い関心を見せたのは外国人だった。

李氏が自らを刺して病院に送られた後(午後2時頃)から、 死亡の消息が公式的に発表された午後4時半頃まで、 韓国闘争団の周辺には数十名の外信記者が集まり絶えず李氏の消息を聞いた。 少しでも英語を話せる人は誰もが記者の質問攻勢に対応しようと気が休まらない程だった。

当日の夕方、メキシコのTVには、李氏がナイフを抜いて自分の胸を刺す場面から、 その日のデモの様子を生き生きと放送し、翌日の11日朝、 メキシコの有力日刊紙‘エル・ウニバルサル’をはじめ、ほとんどすべての現地新聞は デモ場で倒れた李氏の姿を1面に載せ、新聞全面を関連消息で埋め尽した。

現地にいた人々は、世界の人々がイギョンヘ氏の死をどのように思っているかを 一層生き生き感じることができた。

11日朝、イギョンヘ氏が亡くなった場所にテント座込み場を整えて徹夜した 韓国闘争団は、あるおばあさんの客を迎えた。八十は優に超えているだろうか。 フランスのあるNGOから反世界化民衆フォーラムに参加するためにカンクンに来た このおばあさんは、不慣れな英語でイギョンヘ氏 (彼女は‘My friend'という表現を使った)が亡くなった、 まさにその場所に自分が持ってきた花を置きたいと語った。

△カンクン市が属するフォレスト州新聞のクィンタナルゥ誌の11日付1面。イギョンヘ会長の写真で全面が埋め尽されている(C)民衆の声

震えてしわが寄った手で花を置き、ろうそくにあかりをつけてその前においた後、 彼女は両手を合わせたまま目をとじている真最中であった。 ちょうどとても愛する家族ひとりを失ったような姿だった。

その日の午後には、韓国闘争団の宿舎であるアクアマリーナビーチホテルに、 ようやく二十を超えたぐらいの三人の白人少女が訪ねてきた。 カナダと米国の農民団体から来たリンダ、モウ、キャシーだった。 彼女らはイギョンヘ氏死亡の消息が伝えられると自分たちで故人の写真、 ろうそく、哀悼文を書いたバナーなどを準備し、李氏が亡くなった広場の片隅に 小さな追慕場所を用意した。通りすがりにこれを見たある韓国闘争団のメンバーが 彼女たちをホテルに作られた殯所に招請したのだ。

「われわれは、イギョンヘ氏の死が本当に胸痛いです。彼は、私たちが 世の中をもっとよくする努力を続けさせてくれる方です」。 米国地域農民団体の会員のリンダが語った。

「その方の勇気と犠牲は、全世界の農夫、漁夫、そしてそれ以外の あらゆる人々に大きな感銘を与え、わたしたちは彼の犠牲に本当に感謝を申し上げます。 彼は人間の権利を探すために闘う活動家の立派な手本です。 また、われわれはこちらに来たあらゆる韓国の方達にも、 権力と力に対抗して戦う勇気に心より感謝を申し上げます。」

△あるNGO活動家が真摯な表情でろうそくをおいている(C)民衆の声

モウはここで活動する韓国代表団に自分たちが手伝えることはないかと尋ねた。 ここに来てくれたことが私たちを助けてくれたと (共につけようという意味で)弔意を表す黒いリボンを差し出すと、 彼女たちは「これを付けられて光栄」と言い、 「これからも続いて‘WTO反対’を叫ぶ」と話した。

WTOとそれが推進する体制である新自由主義に挫折したある韓国農夫の自決は、 マスコミやNGOにまずは「残念さと悲しみ」という感情を起こした。 この事件は、もちろん感情を離れてたいへん政治的な意味を持つが、 このことが世界のNGO、さらにWTO交渉におよぼす政治的影響を発見するまでは、 もうすこし時間が必要だろう。 まだ衝撃と悲しみと憤怒が収まるまでには、充分な時間が流れていないからだ。

農業への抱負と希望を持ったあるエリート農夫が努力と挫折を繰り返しながら 「自身の意志や努力と無関係に巨大なシステムにより農民の運命が決定される現実」 を悟り、自ら命を絶ったことにNGOは限りなく悲しみ、憤怒していた。

世界最大の農民組織であるビア・カンペシナなど、 有力な30余国際NGOを率いている「私たちの世界は商品ではない (OWINS;Our World Is Not For Sale)」が主催した「二国間協定セミナー (韓国の全国農民会総連盟が参加し、韓チリFTAに対し提案)」で会った オーストラリア貿易と投資連合の会員であるピーターマーフィー (Peter Murphy・キャンベラタイムズ記者)氏は、 「イギョンヘ農民の死をどう思うか」という質問に答えようとしたが、涙を流した。

このハゲ頭のおじさん(?)は、体面も忘れて涙を流し、 むしろ記者が彼の目を拭って慰めなければならない程だった。

△追悼式が始まる前、ある女性が簡易焼香所前に菊の花びらを撒いている(C)民衆の声

イギョンヘ氏追慕キャンドル集会で会ったビア・カンペシナのカナダ代表である マーサ・ロビンス(Martha Robbins・カナダ全国農民連合学生議長)は、 「イギョンヘ氏の死はただの自殺ではなく、全世界の小作農と地域社会に 起きているあらゆる出来事の原因であるWTOに対抗して戦う抵抗の行動であり、 本当に勇気があり難しい行動だった」としながら、 「今後これ以上、このような悲劇が無くすために、私達が共に集まって 問題を共有し、WTOに対して国際的な声を出さなければならない」と話した。

NGOは事件の翌日の11日午後、閣僚会議コンベンションセンターで緊急記者会見を開き、 イギョンヘ農民の自決に対する立場を発表した。 記者会見には、ビア・カンペシナ地域別代表とそれ以外の農業関連NGO関係者が 多数参加し、故人の遺影とろうそく、菊が置かれたブリーフィングルームで 厳粛な雰囲気の中で進められた。

彼らは「誰のためにあなた方は交渉するのか?」という題目の記者会見文で 「農業分野の貿易自由化は、全世界の小農の生を破壊し、 イギョンヘ農民は農民を殺して農業を破壊するWTOに対抗して戦って死んだ」と話した。

農民NGO「フードファースト(Food First)」のアヌラダ・ミタル事務総長は 「WTOは米国とEUから輸入される値段が安いダンピング農産物のために、 徹底的に生活が破壊された全世界の農民等の要求に無視で一貫している」と猛非難した。

「WTO事務総長が10日の夕方、イギョンヘ氏の死に対して遺憾を表しはしたが、 それはマスコミを意識したリップサービスでしかない。 彼(を含むWTO体制)は、農民がそういう極限手段を選ばざるをえなくした 本当の問題を無視している。WTO体制により農業の現実が悪化し、 農民の農業と土地に対する権利が失われるということだ。」

△追慕の意向を表示している記者会見参席者(C)民衆の声

南半球問題に関するNGOである「Focus on the Global South」の代表で、 フィリピン大学教授であるウォールデン・ベローは 「今この記者会見は、イギョンヘ農民追慕のためにホテルゾーンの入口に整えた 国際農民キャンプとの連帯の意味」と語り、 「私たち記者会見参席者は、今、コンベンションセンターで行われている交渉に 農民の関心事を反映するために今後、持続的に努力したい」と話した。

イギョンヘ氏が散花して四日後の14日、WTO第5次閣僚会議は霧散して幕を下ろした。 今回の閣僚会議は、開始前から交渉に臨む先進国と開発途上国の間で 立場の差が非常に大きいため、今回の会議の失敗の原因が必らず李氏の死のためだとは 言えないだろう。しかし、彼の死が全世界の市民社会運動陣営に決して消えない 印象を残したことは明らかな事実だ。

大きな異変がない限り、先進国と超国籍資本はWTO新自由主義政策を推進し続け、 DDA交渉も終わっていない。すぐ、実務者級の再協議日程が12月15日に決まった。 イギョンヘ農民の死が作り出した悲しみが どのような政治的影響を与えるかは、これを見守りたい。

△実の娘のようにジヒェ氏を抱いて慰労するラファエルアレグリアビア・カンペシナ代表(C)民衆の声

2003年09月18日(C)民衆の声

"元記事":http://www.voiceofpeople.org/new/news_view.html?serial=5849&category=type10


Created byStaff. Created on 2003-09-20 14:32:24 / Last modified on 2005-09-05 08:07:21 Copyright: Default

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