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Jノミックスが成功するには

[ワーカーズ 経済で見る世の中]文在寅政府の所得主導成長論と拡張的財政政策

ソン・ミョングァン(チャムセサン研究所) 2017.05.31 09:21

与小野大の迂回戦略、委員会新設と秘書室改編、 文在寅(ムン・ジェイン)政府の経済政策の下絵が徐々にあらわれている。 雇用委員会や財政企画官を新設し、国政企画諮問委などの組織を改編したり新設する動きがせわしい。 業務引継委員会がない状況で、政策宣伝の速度は早い。 人事聴聞会が必要ない青瓦台秘書室と諮問委を中心として政策議題を具体化している。

このうち、「雇用100日プラン」が一番早く浮上した。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領も大統領選挙遊説中に 「就任直後の100日間に最優先で始める13の課題を当選すれば即実行する計画」と話した。 この「100日プラン」の核心は、公共部門の81万個の雇用創出と労働時間短縮、非正規職の格差緩和だ。 文在寅大統領が仁川空港公社を直接訪問して非正規職の正規職化を公論化した点、 大統領直属雇用委員会が初めての業務として労働時間短縮(68時間から52時間に)作業に着手した点、 10兆ウォン規模の追加補正予算編成推進を公式化した点から見て、 ある程度準備された設計案があるようだ。

ここに、新しく発足した国政企画諮問委員会が国政運営5か年計画を樹立しており、 事実上、文在寅政府の業務引継委員会の役割を果たすことになるようだ。 先に言及した雇用委員会と国政企画諮問委員会とも、官僚出身の二人の国会議員が委員長に抜擢されたが、 彼らはどちらも参与政府で経済政策を主導した人物で、 官僚社会を掌握しながら新政府を本軌道にのせる役割を果たすものと展望される。

[出処:資料写真]

当初、文在寅政府は「与小野大」という議会の障壁に閉じ込められて身動きの幅は狭いものと予想されていた。 しかし、大統領の職権で実行する方法を駆使しながら、比較的柔軟に政策対応をしている。 ここに「不偏不党人事」、「国民疎通」等の美談のタネを作り、世論戦を通じて雰囲気を主導している。 これは単純な見せかけだけの政策でしかないと見ることはできない。 10兆の追加経費編成の場合、与小野大の議会の現実で激しく正面から対立すれば、 議論の過程で座礁する可能性が非常に高い。 それでこれを突破するための世論形成に力を注いているようだ。 前述の核心的な二つの委員会に、反対勢力あるいは抵抗勢力の抵抗が少ない官僚出身の政治家を起用した点も同じ文脈だろう。

与小野大の局面での政治的な緊張と対立、これを突破するための世論戦、 そして議会交渉でのきわどい綱渡りと妥協など、 新政府発足後の動きは現在のTHAAD事態とともに注目すべき情勢だ。

所得主導成長論と拡張的財政政策

ところでもう一つ注目すべき点がある。 今回の10兆ウォンの追加経費が文在寅政府の「Jノミックス」を基礎とする所得主導成長論に始まっている点だ。 以前の朴槿恵政権も景気浮揚のために色々な追加経費を使った。 だが今回の追加経費が以前と違う点は、民間主導の雇用創出を失敗した政策と診断し、 「国家財政を投入して雇用を作り、これにより家計所得を高めて消費を促進し、 内需を活性化する方式に経済パラダイムを変える」という論理を強調している。 これは2013年から民主党が主張してきた所得主導成長論とかみ合い、 所得主導の最初の出発を国家財政から始めるという点を明確にしたわけだ。 そしてその対象は、SOC(社会間接投資)等の設備投資ではなく、 青年失業を狙った雇用に焦点を合わせている。

これとともに文在寅政府が描く経済成長経路も「人への投資」を出発点にしている。 この論理は経済学的に根拠がないわけではないが、 「資本」とともに生産要素の一つである「労働」の質を高めれば生産性を向上させられるという論理を含んでいる。 こうして向上した生産性に基づいて経済が成長し、またこれが労働への分配と投資を増やす好循環を作るという論理だ。

Jノミックスのこうした論理の2種類を要約すれば、 増えた家計所得で消費を増やして内需を活性化し、 これとともに労働の生産性を向上させて経済成長の好循環構造を実現するという一挙両得の論理を持っている。 そして重要なことは、その出発を企業ではなく国家の雇用拡大(財政支出)としている点だ。 これは最近世界的な潮流になった拡張的財政政策に基づいている。 IMFはすでに2016年の初めに財政拡大を取る条件が良好な二つの国を選んだが、 一つはドイツであり、もう一つは韓国だった。 先進各国は国家負債の比率が高く、量的緩和などの緩和的な通貨政策だけに依存しており、 財政条件が良いドイツと韓国が模範を示すことを願った。 こうした拡張的政策の傾向性は、さまざまな国で明確に浮上している。 米国トランプも大統領選挙公約として1兆ドル規模の財政投資を約束した。

批判と論争の正しい方向

所得主導成長論に対しては、すでにさまざまな批判が存在する。 最も多く提起されるのは、家計所得の増進が直ちに内需拡大につながるのかという疑問だ。 所得が増えれば消費も増えるが、どんな消費がどれだけ増えるのかは確信できない。 もし増えた所得が老後の備えの金融商品形態(預金、年金、保険)に転換すれば、 消費は期待したほど増えない。 そして企業が望む労働生産性は、私たちが考える労働の質とは違う。 これは労働者1人当たりどれだけ利益を創出できるかを問う割合だが、 これの上昇は労働者の集団的労働能力により左右されるが、 労働者の数を減らしても可能だ。 単純に分母が減るためだ。 つまり、企業の経営行為に影響する要因には、労働者の能力だけでなく資本の調達条件や事業に対する市場の展望など、多様なケースが含まれる。 こうして見れば、「人への投資」が必ずしも内需拡大と経済成長につながるとは断定できない。

それでも「人への投資」をしてはいけないのだろうか? 誰もそのようには答えないだろう。 家計所得の増大と労働者の生活の条件の向上は、 単に経済成長の基礎だけではないからだ。 それ自体で共同体の長期的な繁栄の基礎になる。 生活が苦しく希望もない国が長く続かないのは当然の道理だ。

したがって、われわれは論争の脈を経済成長の成功の可否に没入してはなるまい。 それに賛成しようが反対しようが、である。 成長の結果をGDPの数値ではなく他の何か、社会再生産の基礎を再構築する方向に集めなければならない。

こうして点から見れば、財政拡大をめぐる論争においても、単なる国家負債の増加だけに批判の焦点をあてるのも不適切だ。 雇用と投資のために企業が負債を増やすのはよくて、国家が増やすのはいけないという論理は、 生産の主体はただ企業だけであって、これは市場によってのみ調節されるという市場主義的な観点による誤った観念だ。 しかも国家負債比率が良好な状態の韓国の状況では、一部の財政保守主義者が「財政の壁」を云々する態度は論争をとんでもない道へ推し進めるだけだ。 また4次産業を云々しつつ、雇用は結局民間が作ると主張することも、 至急国家が介入すべき対象と目標を混乱させるだけだ。

こうした脈絡から見れば、文在寅政府が既存の民間主導の雇用創出を失敗した政策だと診断した部分は適切だ。 だが果たして正しい処方を実行できるのか疑問も感じる。 民主党が政治的妥協という名分の下で龍頭蛇尾で終わってしまったことは茶飯事だったからだ。 特に文在寅政府の政策5か年計画を設計する国政企画諮問委員会の委員長にモフィア出身の金振杓(キム・ジンピョ)議員が抜擢された点は、非常に憂慮される。 一部では彼を有能な経済官僚と呼ぶが、われわれは彼が経済首長だった時に外換銀行がローンスターに安値に売られた事実をはっきり覚えている。 果たして文在寅政府が持っている診断書と処方箋通り、 市長を管理し統制する方向にもう一歩踏み出せるのか、注意深く見守らなければなるまい。[ワーカーズ31号]

原文(チャムセサン/WORKERS)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-07 00:16:34 / Last modified on 2017-06-07 00:16:36 Copyright: Default

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