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「性売買防止法のために陰性性売買が増えた?」

[性売買防止法施行10周年記念討論会](1)性売買防止法と風船効果

ムン・ジュヒョン記者 2014.09.19 19:34

来る9月23日、性売買防止法が施行10周年を迎える。 2000年と2002年に全北道群山の大明洞と開福洞の性売買店集結地で発生した火災惨事は、 性売買女性の人権問題が深刻な水準であることを世の中に知らせた。 性売買産業解体運動が野火のように全国に広がり、その結果、2004年性売買防止法が制定された。

全北女性人権支援センターは「性売買防止法10年」の成果と限界などを振り返る意味で、9月16日「性売買防止法施行10周年記念討論会」を開いた。 チャムソリは4回にわけてこの日の討論会で重く提起された話を連載しようと思う。

全北女性人権支援センターが9月16日、全州韓屋マウルの崔明姫文学館で 「性売買防止法施行10周年記念討論会」を開催した。 この席では性売買防止法についての誤解と、これからの課題などが議論された。

この日の討論会にはシンバク・チニョン大邱女性人権センター長が性売買防止法施行から10年過ぎた現在を眺望し、反性売買運動の課題などを指摘した。 チョン・ジェヨン国民大教授は性購買と男性文化の関連性を、 ソン・ジュファ全北民主言論市民連合事務局長は「言論を通じて再現される性売買」という主題で地域言論の性売買の報道形態を分析した。 チョ・ソンヒ全北女性団体連合代表は性売買防止法施行以後の地域社会の変化を指摘した。

連載順序

  1. 性売買防止法のために陰性性売買が増えた?
  2. 地域言論の性売買報道の形態? 性売買は必要悪?
  3. 性売買女性の非犯罪化、性売買防止法の全面改正が必要な理由
  4. 反性売買運動を地域社会と共に

▲全北女性人権支援センターが9月16日全州韓屋マウルの崔明姫文学館で性売買防止法施行10周年記念討論会を開催した。この席では性売買防止法の誤解とこれからの課題などが議論された。[出処:チャムソリ]

「性売買防止法の風船効果で新種・変種の店舗が増えましたか?」

性売買防止法が世の中に登場したのは、皆が知りつつ無視してきた性売買産業の実体が若い女性の命を奪ったからだった。 2000年と2002年に全北道群山の大明洞と開福洞の遊興酒屋の火災惨事で21人の女性が命を失った。 彼らは四方が壁の中で性売買を強要され、自由と人権はなかった。

▲2002年1月29日、開福洞の遊興店舗「デガ」ビルの火災を鎮圧する場面。当時、火災で14人の女性が命を失った。この日の火災で性売買の反人権的な現実が知らされ、性売買防止法制定の端緒になった。[出処:全北女性人権支援センター]

その自由と人権を生かすために作った性売買防止法。 シンバク・チニョン センター長は 「法制定後の最大の変化は『当事者』運動の発火だ。 これまで性売買の中で女性たちは被害を内面化し、話すことができなかった。 しかし今では性売買が性的搾取行為でしかないと主張し、女性たちは犯罪行為者でないことを話している」と最大の変化を説明した。

性売買防止法以後、脱性売買女性を支援する団体も全国あちこちにできた。 これらの団体ができるまでは、 性売買女性が事業主に抜け出すためには「脱出」以外の特別な手段はなかった。

ソン・ギョンスク全北女性人権支援センター長は 「性売買防止法とこれを根拠として支援する団体が今や女性たちの武器になった」とし 「そしてこれらの女性が自助の会などを作り、被害の経験を話し、さまざまな活動をしながら認識改善と脱性売買運動の大きな力になっている」と話した。

認識改善と当事者運動は性売買産業の縮小につながった。 性売買防止法が制定される前の2002年、刑事政策研究院の 「性売買経済規模全国調査」によれば、 全国性売買斡旋業者数はおよそ5万件、従事女性数は少なくとも33万人。 性売買関連産業の経済規模も約16兆ウォンで、2002年の国内総生産の4.1%を占めた。 当時の農林漁業の割合が4.4%なので、その規模がかなりのものだったことが分かる。

そうした性売買産業が防止法施行から3年経った2007年、 韓国女性政策研究院と韓国ギャラップ調査研究所の「全国性売買実態調査」によれば、 全国性売買店は4万6千か所、性売買女性数は26万人で、実質的な減少があった。 取り引き額は約14兆ウォンだった。

そして2010年にソウル大女性研究所が実施した実態調査によれば、 性売買産業の規模は合計6.86兆ウォンに減った。 国内総生産の約0.65%にあたる数値だ。

「風船効果? 既存の性売買店に対する生ぬるい摘発が呼んだ」

しかし報道機関と執行機関の考えは違った。 いわゆる「風船効果」と呼ばれ、性売買が防止法によって陰性化し、 その数が増加したという意見が古くからの性売買集結地の事業主と言論等を通じて流布された。

シンバク・チニョン センター長は 「こうした主張に便乗して法の執行がもう少し実効性をもつて執行されなかったことの問題提起は消え、 常識的ではない通念に頼り、 まるで科学的な論点のように刺激的な話が何の疑いもなく行き来している」と反論した。

言論報道を通じてあふれる警察の陰性性売買摘発者たちは、風船効果の科学的根拠を提示する。 しかし事件報道はほとんどが警察の報道資料に依存している点を見なければならない。 シンバク・チニョン センター長は 「私たちの予想と違い、警察の摘発は既存の性売買店ではない新種・変種の業者に集中して現れる傾向がある」とし 「既存の性売買店を縮小させる対策作りも強調すべき部分」と話した。

警察の統計も、シンバク・チニョン センター長の意見に力を与える。 2012年6月にヘラルド経済が発表した警察庁統計によれば、 当時の新種・変種業者に対する警察の摘発の割合は、 高級遊興酒屋より3倍多かった。 これらは陰性性売買の摘発が合法を偽装した高級遊興酒屋の摘発よりやさしいことも作用する。

シンバク・チニョン センター長は 「性売買防止法による風船効果で、摘発の死角地帯である新種・変種業者が増えたと大げさに騒いでいるが、 その数値は合法的業者の遊興酒屋に較べれば微かだ」とし 「遊興酒屋やチケット喫茶のような業者が性売買で相変らず莫大な収益を上げ、 全く威嚇になるほどの措置がない状況で、 多様な営業方式でニッチ市場に食い込もうとする変種業者の登場は当然の帰結」と指摘した。

▲2002年1月29日の開福洞火災惨事で14人の女性が犠牲になり、性売買女性の人権問題が問題になった。多くの女性団体が問題解決を要求してデモをしている場面。[出処:全北女性人権支援センター]

「時間が経つほど消失する法執行を正せ」

最近、性売買産業が代替的に女性を固定的に雇用する形態から、ポド房(訳注:出張売春業者)から供給を受ける形態も変わっているのは事実だ。 しかし2010年の女性家族部性売買実態調査によれば、 変種型、オンライン、海外性売買は性売買産業の約2.1%〜3%を占めていて、 意味のある数値とは言えない。 斡旋形態の変化にもかかわらず、相変らず性売買産業は遊興酒屋、チケット喫茶、性売買集結地などの伝統的な性売買方式に根を張っている。

シンバク・チニョン センター長は 「大邱のチャガルマダンの場合、 63の店舗が営業していたが、法施行初期に48店と急激に減ったが、 2007年以後の法執行に対する政府の政策不在の中で停滞している状況」と現在の状況を伝えた。

続いてシンバク・チニョン センター長は 「脱税の温床になっているルームサロンなどの遊興接客業、 高位職公務員をはじめとする検事などの賄賂上納と性売買斡旋業者との癒着問題など、 社会的な不正腐敗と性売買産業は深い関係がある」とし 「それでも性売買を画期的に減らせない理由は、 これをえぐり取る意志の不在だと見られる。 性売買を減らす問題は、私的な個人の犯罪行為の解決ではなく、 国家的次元の『正義』を実現させること」と話した。

現在、性売買防止法が抱いている問題は「風船効果」ではなく、 時間が経つほどに消失している法執行力にあるということだ。

付記
ムン・ジュヒョン記者はチャムソリの記者です。この記事はチャムソリにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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