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ウクライナ・「公正な平和」より「無条件停戦」

2025年02月25日 | 国家と戦争
  

 ウクライナに対するロシアの軍事侵攻から3年の24日、新聞各紙はいっせいに「社説」を掲げました。その論旨は、「この戦争を、一刻も早く終わらせる必要がある。ただし…侵略の責任を問うことなく…「停戦」となれば、解決どころか、世界の将来に大きな禍根を残す」(朝日新聞)、「国際社会は、ゼレンスキー氏が求める「公正な平和」を実現しなければならない」(琉球新報)など、ほぼ同趣旨です。

 端的にいえば「公正な平和」という「条件付き停戦」論です。しかし、それで「停戦」が実現するでしょうか。

 「公正な平和」とは何でしょうか。ゼレンスキー大統領の要求の中心は、「領土奪還」と「NATO(北大西洋条約機構)加盟」です。これはいずれも国家の論理による要求です。とくにNATOという軍事同盟への加盟は国家戦略そのものです。

 しかし、人間にとって重要なのは「国家」ではなく「命」です。国家の論理で命が奪われる(奪う)戦争を行うことは容認できません。

 「領土」も国家の論理です。例えば、今暮らしているこの場が、「日本」でない「国」になったとしても、それは最重要問題ではありません。重要なのはどのような施策(政治)が行われるか、どんな社会になるのかです。

 23日のNHKスペシャル「ウクライナ女性兵士 絶望の戦場」は、衝撃的な映像の連続でした。
 この中で、志願兵として戦場へ行った母親(43)と、残され一時精神を病んだ娘(11)の会話がありました。娘は「私はいつか外国に住むからウクライナの事なんて興味ない。好きじゃない」と言いました。これに対し母親は、「あなたがそんなことを言うなんて恥ずかしい」と嘆きました(写真は同番組から)。

 私は、「国家」を相対化した(超えた)娘の方に共感します。

 「公正な平和」でなければ「将来に禍根を残す」といいますが、これまで真に「公正」だった「停戦・和平」があったでしょうか。

 例えば、「イラクが大量破壊兵器を所有」というウソでアメリカが始めたイラク戦争(2003年)。侵略者・アメリカの責任は「公正」に追及されたでしょうか。日本はこの戦争に自衛隊を派遣してアメリカに加担しました。その責任を日本は「公正」に自己批判したでしょうか。

 歴史的背景があるとはいえロシアの軍事侵攻が容認できないことは明らかです。しかし、その責任追及は「停戦」後に国際的枠組みの中で行われるべきです。

 軍事侵攻から2カ月の22年4月、米マサチューセッツ工科大のノーム・チョムスキー名誉教授が「即時停戦」論を提唱しました。チョムスキー氏は、「ウクライナには二つの選択肢がある」、一つ目は「交渉による解決」、二つ目は「最後まで戦う」。「プーチンに退路を開く醜悪なものだ」としながら、氏は前者を主張しました(2022年4月22日のブログ参照)。

 チョムスキー氏が挙げた「交渉」の課題は、いま現実になろうとしています。もしこの時、氏の提唱が受け入れられていれば、その後の膨大な犠牲は避けられたでしょう。

 ロシアが軍事侵攻の誤りを認めないままの「停戦」は「醜悪なもの」です。しかし、今なによりも優先しなければならないのは、これ以上死者を出さないことです。「公正な平和」は(「公正」とは何かも含め)、今後の国際政治の中で追求すべきです。

 「公正な平和」より「無条件停戦」。「国家」より「命」です。

Created by sasaki. Last modified on 2025-02-25 18:11:39 Copyright: Default

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