大山で6回目の再開発反対デモ
―「オール板橋」で再開発に揺れる町同士が連帯―
大場ひろみ

→動画(10分)
10月5日、板橋区大山ハッピーロードで、再開発とアーケード解体に反対する6回目のデモが行われた(参加者230名)。レイバーネットでの報告は5度目になるわけだが、今回はデモの様子は松原明撮影による動画にまかせて、その後の変化について触れる。昨年4月、アーケードの中央部が都道補助26号線開通予定を理由に70m解体されてから、その後の工事は止まっている。ただアーケードが欠けた不自然さと不便さが利用者に押し付けられた状態。

クロス・ポイント地区に完成したタワマン2棟の1つに、スーパー・マルエツが開店し、開店時には坂本健板橋区長やハッピーロード振興組合の幹部(再開発推進派)、選挙に落ちた元国会議員らが顔を揃えていたという。再開発に反対し続けてきたコモディイイダの飯田武男社長(写真上)は、「コモディイイダをつぶそうとしている。普通他に店舗が出来たら2,3割は減るのに、ハッピーロード大山店の来客数は、昨年より
増えている。地域の人々が応援してくれている証だ」と胸を張る。

一方、「大山問題を考える会」の石田栄二氏は「東京都の職員が地権者に手紙や訪問という形で、頻繁に揺さぶりをかけて、不安にさせている」と憂える。地権者の一人の話では、「今応じないと(補償金が)安くなる」などと言ってくるそうだ。しかし、大山も含めて土地価格は上昇を続けており、現状にそぐわない説明だ。石田氏は金額の問題よりも、「高齢者は引っ越し先もなかなか決められないし、環境が変われば体調も崩す」と心配する。何でも金で換算しようとするが、人の暮らしはお金には代えられない、かけがえのないものだということを、再開発推進側は忘れている。金でいえば、ピッコロ地区の建築予算はどんどん増え、480億から630億円へ、増えた分の100億が行政、50億円が地権者負担となる。

デモ解散後、近くの板橋区立グリーンホール会議室で、「オール板橋」による連続講座第2弾として、「板橋・赤羽から問う再開発の現在」というテーマで、集まりが開かれた。
「オール板橋」とは、戦争に向わないよう地域で行動する超党派の市民運動だが、連続講座は地域の問題を取り上げている。その一環で、今回は再開発問題を抱える板橋・赤羽地域の市民同士の、横のつながりが実現した。
板橋区は現在、多数の地域でタワマン建設を中心とした再開発計画が進んでいる。その中で大山、中板橋、高島平、そして北区赤羽の代表から報告があった。大山に関しては他の記事で触れているので措いて、最近ニュースにもなっている高島平団地では、2024年3月に板橋区から「高島平二丁目三丁目周辺地域地区計画(案)」が発表され、区有の小学校跡地をURと交換し、そこにURのタワマン賃貸住宅を建て、緑地の一部を壊して区道を延伸させ、また二丁目33街区の建て替えも計画しているという。説明会は開かれたが、「何も決めていないのでわからない」という説明にならない説明に終始、しかも住民を集めるオープン型の説明会は2回しか開かれなかった。住民側は区長や議会への意見書や陳情などを行ったがいずれも不採択。25年1月に「住民参加のまちづくりを考える会@高島平」を結成、署名活動や集会活動を行った。6月には板橋区の本会議で計画案が決定。URは8月、資料とアンケートを配布。そのアンケートには「このまま住み続けたい」という項目がなく、その後どこに住みたいかを問うものだった。計画推進ありき一方なのに、計画の概要は4年後に発表するという。板橋区に聞くと「URに聞け」といい、URは「区有地を板橋区と交換するのだから板橋区の問題だ」という。タワマンが建築出来るように建物の建築高さ制限もいつの間にか外された。
上板橋では、駅南口の再開発は、再開発(準備)組合が出来ていない状態から計画が進められ、知った時には既に遅い状態だったという。計画では駅前に2棟のタワマンが建ち、他に中・低層ビルが2棟を建築、タワマンに向い、道路が延長、整備される。この内タワマン予定地の西街区近くにはにぎわう商店街があることから反対の声が大きく、計画は東街区で先に進んでいる。憂える市民は「上板橋のまちづくりを考える会」を結成して、区や区議会へ手紙や陳情を行っているが、例えば区長の返事は「本再開発事業は(権利者による)民間事業である」が何度も強調されているという。しかし、区のまちづくり推進室主催の「まちづくり報告会」(2.25)は、「報告会の印象は、司会も挨拶も説明も区の職員や不動産会社の職員・コンサルタントで、再開発事業を装った区の事業、不動産会社の利益事業と見られてもしょうがない感じ」だったという(「考える会」の発行する「まちづくり便り」23年3.18発行)。
赤羽からは、「やさしいまちをつくる会きたく」から報告。駅東口の「せんべろ」で知られる飲食店街が対象になり、その裏の赤羽小学校を囲むようにして3棟のタワマンが建ち、小学校の移転やタワマンへの合築も浮上しているという。現在は再開発の基本計画策定で止まっているが、区は新しいコンサルト会社と契約して水面下で進めている。コンサル料は年間9千万円(!)。北区では他に東十条の引き込み線や王子駅前から造幣局に到る再開発計画がある。既に十条駅前ではタワマンが完成して完売(8千万〜2億円)しているが、3分の2は住民が住んでいないし、既に転売もされている。
大山で完成したタワマンは完売していない。これ以上タワマンを建てても建築費の高騰が売値を吊り上げ、転売の旨味がなければ売れ残っていくだろう。
いずれの町でも、大山と共通する再開発の手法が浮かび上がった。住民の声を聞かない、問われれば「区だ」「民間事業だ」と行政も事業者も都合よくすり替えて説明をしない。そうするうちに決定され、認可されれば再開発法の名の下に住民排除が始まる。公費(住民が払った税金だ)を湯水の如く注いで、利益は事業者の懐に収まり、収まったところで相手は去り、人の住まない廃墟のようなビルが残る。これを行政が主導する。これは公費を詐取して利益を上げる犯罪的行為ではないか?各地域の声を上げた市民はみな悲鳴のような声を上げる、「住民の声を聞いて、説明して」「よい町づくりを共に考えて」「追い出さないで」「暮らしを守って」、市民は民主主義を守ってほしいと言っているのだ。
「オール板橋」で集って問題を共有した各地域の市民は、横のつながりを深めて連携していくことを認め合った。今後はその方法を探りながら、様々な行動が盛り上がっていくことを期待する。同じ手法で地域と暮らしを壊されている全国の人々が連帯するのも夢ではない。
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staff01.
Last modified on 2025-10-08 18:10:34
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