日東電工は韓国労働者の雇用を継承せよ！／韓国国会議員３人が解決を求めて来日

報告＝尾澤邦子

　韓国オプティカルハイテックの労働者の雇用継承を求めて、韓国の国会議員96名が、大阪に本社がある日東電工に対し、要望書を提出しました。それに伴い、日本政府に対する要請を行いたいと、3名の国会議員が来日しました。岸田文雄首相に書簡を渡し、関係省庁と話したいということでしたがかなわず、参議院議員の大椿裕子議員のご尽力で、経済産業省と外務省の職員に書簡を手渡すことができました。

　7月26日午前10時から衆議院議員会館で記者会見が行われました。司会は大椿議員。韓国の3名の国会議員と、韓国オプティカルハイテック支会のチェヒョンファン支会長、民主労総全国金属労組のソンドクホン副委員長、韓国キリスト教教会協議会のウォンヨンチョル牧師、仏教界のヘチャン僧侶、そして社民党の福島みずほ党首が発言しました。

　韓国国会の環境労働委員会幹事の金周暎（キムジュヨン）議員は、「韓国で日東電工から解雇された労働者や家族が苦しんでいる。工場の屋上で雇用継承を訴えている労働者は、籠城して201日になる。日本政府は日東電工の韓国労働者への人権侵害に対し被害回復に乗り出してほしい。日東電工が日本政府の人権ガイドラインを守るようにしてほしい。人権尊重の国際基準を守ってほしい」と訴えました。

　進歩党のユンジョンオ議員は、「韓国国会議員96名連名の書簡を日東電工に送り、面談を申し入れたが拒否された。大韓民国を無視する行為だ。日東電工の反人権行為を深刻に受け止めている。昼夜懸命に働いてきた労働者の解雇は受け入れられない。日東電工は世界89か所に事務所を持つグローバル企業だ。雇用継承を望む7人の労働者の雇用を守ってほしい」と訴えました。

　共に民主党のイヨンウ議員は、「日本政府の消極的な態度を遺憾に思う。韓国に進出した日本企業が国際的ガイドラインに従って企業活動を行うよう、政府が言うべき。強制解雇は人権尊重のOECDガイドラインに違反する。日東電工と日本政府は、対話を通して問題を解決すると、国際社会に約束している。なぜ守らないのか。日東電工と日本政府の責任ある回答を願う」と話しました。

　若干の質疑の後、国会議員は、韓国国会の審議・採決に出席するため急ぎ帰国。会見は続きました。

　当該のチェ支会長から経過と日本に来た目的が話されました。支会長は、韓国オプティカルハイテックで17年間働いてきたこと、現場の責任者であったが、2022年1月に労組の支会長になると会社の態度が変わったことなど話しました。そして、会社の労務士が日東電工の遠藤部長に送ったメールで「労組が金属労組に振り回され労使関係を悪化させる場合には、本社は韓国オプティカルには仕事の生産をさせず、廃業となり従業員は失業し、家族は崩壊するだろう」と書いていることを暴露しました。そしてそれは、同年10月の工場の火災により、現実のものとなりました。日東電工は生産をもう一つの子会社平沢（ピョンテク）にある日東オプティカルに移し、退職に応じない従業員を解雇しました。火災保険金を受け取り、工場は廃業にして労働者は解雇。労組嫌悪によるものでした。日東電工の「食い逃げ」行為により解雇された労働者たちが雇用継承を求めています。屋上に上がって籠城しているふたりの女性労働者は「雇用継承」を叫び、201日になります。今、殺人的な暑さです。チェ支会長は「日本政府は自国の企業が行った反人権行為を正してください。私たちが平凡な日常を取り戻すことができるよう力を貸してください」と訴えました。

　大椿議員から記者会見に至る経過が話されました。7月初めに訪韓して話を聞いたこと、日本政府と接点を持ちたいという要望があり、経産省、外務省に働きかけてきたことが話されました。政府は「個別企業の経営に立ち入れない」「裁判で係争中なので政府は口を出せない」などと言っていたとのこと。大椿議員の働きかけにより最終的に手渡しすることになりました。しかしこの内閣府への書簡は、内閣総理大臣の宛先に加え、外務大臣、経済産業大臣の名前を書き入れること、書簡手交にあたっては、一切のマスコミを入れないこと、写真は撮らないことが条件にされました。

　韓国キリスト教教会協議会正義と平和委員会委員長のウォンヨンチョル牧師は、「今回の日本政府の対応を見て、反労働、反人権的な態度だと感じた。日韓労働者・市民と協力して解決したい」と話し、日東電工は人権を尊重すべきであり、解雇された労働者が一日も早く職場に戻れるようにと訴えました。そして「日東電工の不買運動なども含め、日本の市民と共に行動したい」と言っていました。

　19万人の労働者を組織する韓国民主労総全国金属労組中央本部のソンドクホン副委員長は、「韓国の外資企業の中でも日本企業はたくさんの問題を起こしてきている。タイセイコリア、韓国サンケン、韓国ワイパーなど。今回の韓国オプティカルの解雇、必ず勝利したい。日本の企業が食い逃げしないようにしたい。日本で私たちがやれないことをやってくれる日本のみなさんに感謝します」と話しました。

　韓国の曹渓宗社会労働委員会のヘチャン僧侶は、「今韓国で流行っている言葉で『避けたり逃げたりする者が犯人だ』というのがある。日本政府の対応はまさにこれだ。韓国オプティカルの問題は『労働組合嫌悪』だと思う」と話していました。

　社民党党首、参議院議員の福島みずほさんは、「日本企業の、ビジネスと人権のOECDガイドラインに反する行為はやめさせるべきだと議論していきたい。事態はあまりにひどい。働く人の人権をどう考えているのか。籠城している人が、しなくて済む状況をつくっていきたい」と話しました。また今回3人の国会議員が来日したことに触れ、「日本の労働運動ももっとがんばらねば」と言っていました。

　午後1時からは、首相官邸前で要請行動。日本政府・岸田首相と日本社会に対し、日東電工で解雇された労働者の状況を訴え、人権尊重の国際規範に則り、雇用継承するようにと求めました。

　そのあと品川に移動し、日東電工東京本社に対し、抗議要請行動を行いました。韓国の 96名の国会議員が、韓国オプティカル労働者の雇用継承を求めて署名し、日東電工に送り、面談を求めましたが拒否されました。品川シーズンテラス26階にある東京本社に、当該のチェ支会長、金属労組のソン副委員長、全労協の関口事務局長を先頭に抗議の訪問。しかし警備員のみを入り口に立たせ「お引き取りください」「お取次できません」をくり返すのみ。これが「人権尊重」を会社の方針としてかかげる企業の態度かと、怒りがわきます。国会議員96名の署名が入った日東電工高﨑秀雄社長あての要望書は、紙飛行機にして会社の中に飛ばしてきました。

　ソン副委員長は、「私たちの闘いはまだまだ続く。今日、日本のみなさんと韓国の仲間たちと、共に行動していくことを約束した。勝利のその日まで力を合わせよう！」と力強く決意を表明しました。真夏の暑い一日でした。