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LNJ Logo サンケン弾圧渋谷集会 : 「日本人オザワ」に泣き、宮本刑法理論にしびれた
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「日本人オザワ」に泣き、宮本刑法理論にしびれた

北健一(ジャーナリスト)

 韓国KBS制作のドキュメンタリー番組『日本人オザワ』が観たくて、サンケン弾圧―尾澤控訴審闘争の勝利をめざす4・7渋谷集会に行きました。

 番組は、尾澤夫妻が韓国労働者と共に動く原点となった韓国スミダ争議の様子とその後の当事者たちの声を皮切りに、日本の本社が進出先の韓国で工場閉鎖・解雇などをしでかしたために起きた争議の数々を伝えてます。1970年前後の激しい学生運動の延長に日韓連帯があったことは、ハーバーマスのいう「制度の中の長征」の見本のよう。韓国スミダ争議で尾澤邦子さんは、いつも歌と踊りの「センター」にいて「文化部長」と呼ばれていたそうです。

 今日の集会の主題でもある弾圧につながった韓国サンケン電気の争議は、私も本社に行ったことがあります。労働協約に違反し、当事者が来日しにくいコロナ禍に付け込んだかのような再びの解雇、廃業に、支援要請を受けた尾澤さんは支援者とともに本社に赴き、韓国労働委員会の勧告を受けた組合のメッセージを伝えようとします。守衛詰め所に向かう尾澤さん(サンケンの株主でもある)を、争議対応で増強された警備員が阻み押し返したところ、なぜか尾澤さんが逮捕、起訴されてしまいます。拘留は7ヵ月をこえ、その間、連れ合いの邦子さんは乳がんの手術をします。さいたま地裁での第6回公判で、当事者のウニュンさんが韓国から駆けつけて証言に立ち「尾澤さんは韓国労働者を代表してそこ(本社前)にいた」と証言しますが、裁判所はこれを無視し、尾澤さん個人が勝手に警備員への暴行、業務妨害をしたという偽りのストーリーで罰金刑を言い渡すのです。それでも尾澤夫妻は自分たちのことより、いつも韓国の友人たちの争議のことを考えています。2人の関係も素敵です。韓国サンケン労組は和解解決を決断しますが、「尾澤裁判が終わらない限り、サンケン争議も終わらない」。

 工場の占拠、本社や社長宅での抗議・要請、力強い歌と踊り、「デンソー出て来い」の歌など耳から離れませんが、「番組と闘争現場が近い」のも印象に残りました。日本のマスコミはもっと遠い距離をとるでしょう。しかも、NHKのような公共放送というのだからびっくりです。そして泣かされました。

 集会では、「空気を読まない刑法学者」として名高い関東学院大の宮本弘典さんのお話をはじめて聞いて、しびれました。

「尾澤さんは無実ではない。たしかに(一定の行動を)『やった』。やったことが正当であり無罪なんだ」。たとえその行為が、外形的には暴行なり業務妨害なりにあたりうる(構成要件該当性が一応はある)としても、だからといって直ちに有罪にしてはならず、刑罰を科すに値するだけの違法性の量と質とを備えているかを検討しなければならない。それが憲法31条の要請だ。(私なりの理解なので不正確かも)

 「権利や自由はたたかい取るもの。私たちの前の世代は常識で私たちもわかるが、その価値が貶められ、権利や自由を言う人を疑う風潮が広がっている。それに抗う一つの場が労働公安事件だ」という宮本さんの指摘にもハッとさせられました。

 他にも大切な発言、呼びかけが続きましたが、それは正式な報告がどこかに出るものと思います。

 ところで、韓国サンケンなどの廃業・解雇は労働協約違反であり、団結権からも解雇権濫用法理からも許されるべきでないことです。しかし、すべてを決める親会社が海の向こうにあると、国内の労働法や労働委員会命令が事実上及びにくいという問題は立法も含めた対応が必要と思います(上野弁護士がふれていました)。また、多国籍企業の横暴とたたかう場合、『日本人オザワ』が描いたような労働者・市民の連帯が必要&有効です。そう考えると、尾澤さんが不当逮捕されたような市民的支援にも「組合活動への刑事免責原則」の準用が考えられていいし、それが無理でも重要な違法性阻却事由として考慮すべきでしょう。韓国労働委員会の勧告と組合の要求を伝えようとした尾澤さんが「罪」に問われ、労委勧告を無視し労働者を路頭に投げ出した会社を警察が味方するのはどう考えても不条理です。

 尾澤さん事件控訴審 第1回公判は5月13日(月)11:00〜東京高裁429号法廷。10:00〜傍聴券抽選。9:30〜事前集会。無罪を願って!

(写真は、お住まいの地元の市民団体の方からカンパを受け取る尾澤さん=左)

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