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レイバーネットTV第195号報告〜「追悼碑 撤去しても、消せない歴史」

 心に止めながらもなかなか行動できなかったが、昨年暮れやっと新宿アルタ前の集会に行った。私自身がこの問題をきちんと認識したのは、「あいちトリエンナーレ2019」後の「表現の不自由展 東京2022」として東京都国立市で再展示された時だった。撤去の渦中にあったこの碑も白布で巻かれた姿でその中におかれていて、胸が痛んだ。
 今回、強制撤去後粉々に砕かれた作品の写真を見た時、この小石の数だけ追悼碑を建てたいと強く思った。何回撤去されても建てつづける、他者が撤去できないところにも建てたいと。撤去反対運動をしている方たちの作った「かるた」が貼られたスタジオで、共に歴史に向き合うことを強く求められていると感じた。(報告:笠原眞弓)

〈「群馬の森」朝鮮人追悼碑―「撤去・破壊」でも消せない歴史〉
 放送日:2024年2月14日(水)午後7時半〜
 配信サイト:https://www.youtube.com/watch?v=N50Kkt-riVE

 企画:松本浩美さん、尾澤邦子さん
 司会:尾澤邦子さん(群馬県吾妻郡出身)
 ゲスト:石田正人さん(「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会)
     松本浩美さん(群馬の森朝鮮人追悼碑撤去に反対する市民の会)

 「記憶 反省 そして友好」の朝鮮人追悼碑は、当時の県議会全員の賛同の下、「政治的に利用しない」を条件に2004年4月に群馬県高崎市の県立「群馬の森」公園の奥に建てられた。ところがそれを撤去せよという圧力が2012年頃から強くなり議会でも撤去の勢力が強くなって、許可更新年の2014年に撤去が通告された。その後、最高裁を経て撤去が確定した。そんな中での2024年1月29日〜2月上旬にかけての強制撤去である。

◆朝鮮人労務者の動員当時の映像を観る
 映像は、太平洋戦争当事、日本人労務者の不足もあり、全国各地で植民地支配下の朝鮮半島から日本の軍需工場、鉱山、発電所や鉄道敷設などに、過酷な条件で投入されて多くの方たちが亡くなった。その中に群馬県でのダムの建造などがあったという。
 「撤去」の判決が出たのは「政治的な活動はしない」という約束に反する発言が度々行われていたからというものだったという。

◆撤去までの流れを解説する松本浩美さん

・昨年の10月25日以降の県の代執行までの日程を逐一通知しつつ、本年1月29日から2月1日までに県が行政代執行をし、費用3千万円を請求するという。
・2024年1月5日 戒告処分の取り消しを前橋地裁に申し立て(守る会)
・その後1月19日付で行政代執行令書が届く
・前橋の集会には250人の参加があったが、裁判所は、「戒告処分取消が却下される重大な損害がない」という理由だった
・1月25日に知事が記者会見をして、県側の正当性を述べる
・1月28日午前「守る会」が碑の前で集会。午後「市民の会」がお別れ会(300人参加)(「守る会」「市民の会」の追悼式の写真紹介)右翼対策に、機動隊が100人ほど来た。閉園後も右翼が帰るまで「市民の会」も粘る
・1月29日昨日の花や、各自の思いを認めた付箋の張られた碑の前で、代執行を行う側が「これから代執行を行います」と宣言。これを観た時、デストピアだと思ったと松本さん
・1月31日、粉々になった追悼碑を朝日新聞が空撮 

◆追悼碑が政治的論争の種なら、日の丸も掲揚できないことになると石田正人さん

 1月25日に山本知事と県の整備部長が出席した記者会見によると、「守る会」が設置許可条件違反、つまり「強制連行=政治的」な言葉を発したので撤去すると。その根拠は「紛争が起きる」というもの。つまり、強制連行は「あった」「なかった」と言う人の間で「政治的論争」が起きるから相応しくないと。

 これは追悼碑を撤去したいためだけの理屈だと石田正人さんは言い、藤井正希(憲法学)さんの著書『検証・群馬の森 朝鮮人追悼碑裁判』の中で、日の丸掲揚について同じ理屈を言ったら、撤去するか?と指摘していたと。更に続けて、この碑はいわばお墓だと。石田さんの母上は、追悼碑の活動をしていたが、今は市の公営墓地に入っている。その前で「強制連行が問題になった」と市の職員の前で言ったら、職員はその墓を壊さなければならないと指摘する。

◆裁判の経緯(松本さん)

・一審判決 「強制連行」「強制労働」に類する発言を複数回したから、政治的集会だと認定される。だが、それに対して県は一度も注意や指導をしていない。従って勝手に撤去を決めたのは裁量権の逸脱である
・二審では、日朝、日韓の友好のために作られたのだが、強制連行などの発言によって政治的行事が行われたから、その価値が無くなった。よって公園に置けなくなった

 県は、この2022年の判決をもって、法治国家としてのプロセスを踏んでいるから県側は正しいとしていると松本さん。ところがこの判決は、2014年時点に於いて「設置基準を守っているか」の判決であって「撤去していい」という判決ではないと強調。

◆追悼碑建立の経緯は…石田正人さん

 日本の国がしたことを隠ぺいするこの経緯について、韓国でも大きな関心が寄せられているとか。今年の1月28日の追悼碑前集会の映像の後、石田さんによる建立の経緯が語られる。

 1945年に日本は戦争に負け、50年後の1995年、日本国内で「戦後50年」の意義について大きく取り上げられた。その当時、全国各地であった強制連行・労働の掘り起こしが行われた。かかわった個人がまだ存命だったり、企業の社史(今でも存続する大手建設会社など)、県の公文書、村史にも記載されたことも大きかった。

 水の豊富な群馬県には、今でも東電に電気を送っている岩本発電所などがある。若者達は兵隊に取られ、軍需関係の人手不足を補うための朝鮮からの労働者の投入だった。今でも当時建設された水を通すだけの「導水橋」遺構がある。

 記録には「米麦のない中、彼らにはドングリの粉の団子を1日2個のみが与えられていた」という劣悪な労働条件が近くの村史に残る。他に地下飛行場建設のための過酷労働の記録、役場の火葬記録などを上田さんは次々示す。

 この調査結果を県民に知らせたいと10年位かけて2014年に建てたのが、追悼碑である。  建てた時は、知事も県議会も許可したのに、10年目の更新2年前、安倍晋三が日本会議を作り、美しき日本と言いながら負の歴史を徹底的に隠そうとした2012年に議会は不許可にする。

 司会の尾澤さんは群馬県出身。高校生の頃、吾妻線で通学していたと。その鉄道が、朝鮮人の強制労働で建設されたことを今回、資料ではじめて知った。そういうことは、とても大切なことで、伝えていくということが大切だと思うと同時に、「公」がやったことなので、「公」がきちんと追悼し、守っていかなければならないのに、壊してしまった。群馬県が、ぜひ再建してほしいと力を籠める。

 松本さんは、県は「そよ風」を利用して歴史の視点に踏み切った。これは差別扇動である。彼らの子孫が日本にいる。その彼らを否定することに他ならないと力を籠める。
 しかも撤去が決まってからの集会へのヘイトスピーチはエスカレートし、これまで減っていた相手を侮辱することも叫ばれるようになった。これは県の強制撤去処置が、お墨付きを与えたとしか考えられないと。
 この判決は「静かな公園にするためには、迷惑なものは撤去してもいい」ということ。この判決は、他のところでも使ってくる可能性が大いにあると危惧している。

 石田さんは、ヘイトはある程度抑えられていたのに、今回のことでまたひどくなってきた。このことは、個人ではなく、群馬県という公的機関が、税金を使って差別を煽ったことになった。

◆視聴者・会場から

 Aさん:群馬県知事の山本一太さんは、参議院議員時代安倍晋三の腰巾着だった。
 Mさん:強制連行がタブーになってしまったということになる。最近では「汚染水」という言葉を使うなと政府側が言い、マスコミが全員これを受け入れた。言葉狩りは怖いことだと思う。だから我々は「強制連行」を使い続けたい。もう一つは、勝手に撤去しておいて、3000万円出せとは、どういうことなのか?スラップ訴訟ではないか?

 上田さんは答えて「強制連行」という言葉を使ったからと言い始めた。それは「そよ風」に撤去せよと言われてからこの言葉を使ったから政治的だと言いはじめた。追悼式の時などで以前からこの言葉は盛んに使われていたのに、おとがめがなかった。行政は「汚染水」だって同様に、その時の権力の使い勝手の良さで使っているという。
 強制代執行についても、これは「移動させる権利」なので、そのままの形を残しての移動なのに粉々にしてしまった。請求額の明細を示すように要求しているが、返事はもらっていないということだ。

 Bさん:強制連者は終戦後どうなったか

 上田さんは、国として何もしていない。来日の仕方がそれぞれ異なっているので、帰り方もそれぞれだったはず。しかも、国としては、一切の記録を破棄するように通達している。ところが中国人の場合は中国が戦勝国だったから、ちゃんと現地の行政が調べて名簿を提出している。

 この問題は、私たちの課題として、これからも追及されるべきものということだ。

*休憩タイム「ジョニーと乱の5ミニッツ」

川柳コーナー
記憶反省友好知ったことかと碑を撤去  乱鬼龍
追悼碑良心砕き歴史拒否  白眞弓

ジョニーHの替え歌コーナー 
   山本一群馬県県知事へ捧げる『歴史修正』元歌は『軌道修正』(山口百恵)

*次回は2月28日(水)「パワハラ横行!バス業界のヤミ」をお送りします。


Created by staff01. Last modified on 2024-02-19 21:00:13 Copyright: Default

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