第73回憲法を考える映画の会 : 『流血の記録砂川』をみて考えてほしいこと

投稿者: 花崎哲

第73回憲法を考える映画の会『流血の記録 砂川』
と　き：2023年12月23日（土）13：30～16：40
ところ：文京区民センター ３A会議室（地下鉄春日駅２分・後楽園駅5分）文京区本郷
4-15-14

●プログラム　
13：30ー13：40　砂川基地闘争について 解説
13：45ー14：45　映画『流血の記録・砂川』（56分）
14：55ー15：55　砂川事件関連参考映像上映（59分）
16：00ー16：40　坂田和子さん（砂川事件国賠訴訟原告）のお話＆トークシェア
●参加費　1000円　学生・若者：無料
 　 (当日、会場でお支払いください。予約不要です。どなたでも参加できます)
●上映会詳細案内ページ：
http://kenpou-eiga.com/?p=2903
（第73回憲法を考える映画の会『流血の記録 砂川』 ）
　
【映画『流血の記録 砂川』】
　日米行政協定による一片の命令で、砂川の人々は祖先代々の土地を追われることになっ
た。農民たちの必死の抵抗も警官隊の出動で破られ第一次測量を許す。
　そして1956年（昭和31年）10月、砂川の町には全国から応援に集ってきた数千の労働組
合員や全学連の学生たちの姿が見られた。　
　強制測量が始まり、数日間は小競合いが続く。ついに10月12日、1300の警官隊出動。ピ
ケ隊はもみくちゃにされ、数多い負傷者が出る。翌13日、武装した警官隊は細雨をついて
スクラム陣の中におどりこんだ。警棒の突撃、乱打と鉄カブトの頭突き。殴り合い、突き
倒し、砂川の町は地獄の様相を呈するのだった。世論は警官隊の暴行と政府の無策にわき
かえり、14日夜、ついに今年度の測量中止が発表された。（映画『流血の記録 砂川』チ
ラシより）

【この映画を見て考えたいこと】

　砂川基地闘争は、アメリカ軍立川飛行場の拡張をめぐって、1955年以来、足かけ15年に
わたり続いた大きな住民運動です。
　朝鮮戦争休戦後の1955年、大型機の離着陸のために更に滑走路を延長することがアメリ
カ軍から要求されたのですが、砂川の農民たちはこれに反対し、強制収用のための土地測
量にあらゆる方法で抵抗し、裁判所や東京都収用委員会でも論陣を張って一歩も譲りませ
んでした。
　そして1968年、アメリカ軍は拡張をあきらめ、国も収用認定を取り消し15年間の闘いに
終止符が打たれ、1977年､580万�ﾍ㎡の基地は日本に返還されたのです。
　平和と生活のために国家を相手に市民が闘った砂川基地闘争は、いくつもの点で憲法と
の関わりで重要な意味を持っています。そしてそれらは今日も私たちの生命と生活に根本
で大きくつながっていることを、まず、砂川基地闘争を描いたこの映画を見て考えたいと
思います。

　「伊達判決を生かす会」の島田清作さんの講演資料「砂川の闘いの今日的な意義」には
砂川闘争と憲法の関わりが示されています。
　その第一は「国家と対決して住民の生活と地方自治を守る運動であった」こと。その第
二は「自由と権利を自らの手で保持するという憲法第12条の実践であった」こと。その第
三は「豊かな生活のための農地か、戦争のための軍事基地化の選択であり､非戦非武装の
憲法か、日米安保条約下の選択であった」こと。第四に「砂川闘争は大衆的な実力闘争と
法廷闘争の結合、あらゆる階層の人々の共同行動という面でも特筆すべきものである」こ
とです。

　そして、地元の農民、労働者、学生が無法な測量とそれを擁護する警察権力の暴行に徹
底して非暴力で抵抗したのと合わせて、法廷でも総評弁護団を中心とした数々の抵抗が繰
り広げられました。
　1957年7月8日、測量に抗議して基地内に立ち入った労働者、学生が日米安保条約に基づ
く刑事特別法違反で逮捕され、裁判になりました。その結果、1959年3月30日、米軍基地
そのものの違憲を明確に判決とした「伊達判決」が出されました。
　ところが国は最高裁に跳躍上告、1959年12月16日「伊達判決」を破棄､有罪としました。
その根拠は「統治行為論」で、政治的なものに対して、司法の役割を放棄するような行
為でした。
　憲法をなし崩しにするような、国家による横暴はさらに続けられます。
　1969年11月の米軍の横田基地移駐後、国は、市民の反対を押し切って、米軍基地のまま
自衛隊に使わせる計画を強行します。
　さらに2008年4月、アメリカ国立公文書館の公文書によって、最高裁への跳躍上告と伊
達判決破棄に至る経緯が明らかにされます。伊達判決が出た当時、上告審の裁判長を務め
ていた田中耕太郎最高裁長官とダグラスマッカーサー2世駐日米国大使との間で、審理の
進め方などについて話し合っていた、つまり最高裁長官が米国側と共謀していたとしたと
する公文書が発見されます。これは三権分立を揺るがす憲法違反であるとともに裁判法違
反であることは明らかです。 　これは、三権分立を揺るがす憲法違反であるとともに裁
判法違反（守秘義務）であることはあきらかです。
　2014年6月不公正不公平な砂川裁判のやり直しを求めて､再審請求が行われましたが2018
年最高裁によって棄却されました。
　2019年、砂川裁判の被告3人は、「田中耕太郎裁判長（当時）により、憲法37条１項が
刑事被告人に保障している『公正な裁判所』の裁判を受ける権利を侵害されたとして、国
を被告として「国家賠償請求訴訟」を起こしました。その訴訟は、13回の口頭弁論を経て
2024年1月15日判決言い渡しの予定になっています。

　砂川事件と砂川裁判を知ることを通して、戦後権力がどのように憲法をねじ曲げて日米
安保体制を守り、軍備を拡張してきたかがわかります。
　そしてそれは、その後の米軍・自衛隊基地や沖縄の基地闘争などで繰り返され、その度
に憲法を無視して強行されてきたものであることがわかります。いま私たちが直面してい
る軍拡と戦争への道につながっています。
　私たちは、この映画を見ることをきっかけとして、日米安保の推進のために戦後日本の
政治がどのように進められてきたか、それによって憲法がどう歪められてきたか、またそ
れに対して、市民がどのように闘ってきたか、知り、学び、考えていきたいと思います。