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時代の危機に立ち向かう川柳〜『反戦川柳人 鶴彬の獄死』(佐高信)を読む

乱鬼龍

 私は、十代から川柳を作っていたが、鶴彬(つるあきら)のことを初めて知ったのは、筑摩書房から出た「アンソロジー青春」の中の『抵抗の青春』という一巻の中に、詩人・秋山清が書いた「ある反戦川柳作家の生涯」が収められていて、それを読んだことからだった。私も川柳を作る者のひとりとして、このような川柳を、戦前に作った人がいたのかというのは、私にとって驚きでもあり、衝撃でもあったが、このようなものの中にこそ、川柳の真髄はあるという共感があった。

 そして、1977年に一叩人編『鶴彬全集』(たいまつ社刊)のぶ厚い一巻本が出て、すぐ購入し、その読書感想の同封葉書を送ったところ、一叩人さんから、御礼の葉書が届いた。それ以来の一叩人さんとの長い交流が続いた。また「川柳人」へ同人として参加する中で、井上剣花坊の娘・大石鶴子さんとも、鎌倉の建長寺での「剣花坊忌」の集いなどで、御縁を頂いた。*写真=著者の佐高信氏

 本書を読む中で、そんな、こんなが、思いだされる。鶴彬の句業。そして井上剣花坊、信子、田中五呂八、木村半文銭他、鶴彬をめぐる色々な人達。そして鶴彬を、世の中に発信し、広めた一叩人、澤地久枝、坂本幸四郎、他の人びとのことなど。また本書は「石川啄木と鶴彬」「短歌と俳句の戦争責任」など、鶴彬を縦軸にして、話がそこまでの広がりと深まりをみせる。

 今、「新たなる戦前」どころが、すでに「戦時下」に突入か! と思わせる時代の危機と激動の中、鶴彬に学び、今日を生きるということは、どういうことなのか。そして今日の、これほど、とんでもない世の中に抗し、しかも、それを確実に撃つという表現は、どうすべきなのか、どうあるべきか――を鶴彬の激しく熱き句業と論稿は、私たちに、大きなヒントと励ましを贈ってくれていると思う。

 今日、あらためて、鶴彬のことを読んでみたい、学んでみたいと思うとき、最近では、なかなか「本」そのものがない中で、本書が刊行されたことは、そのような意味でも意義のあることと思う。そして、鶴彬に学ぶということは、鶴彬が偉かった!ということにとどまらず、鶴彬を超えることをめざして、今日の時代状況の中で格闘し、前進することを実践するということだと思う。それが、何よりも鶴彬を供養し、連帯する道だと思う。

 鶴ならばどう生きどう吐くこの時代  乱鬼龍

*『反戦川柳人—鶴彬の獄死』(佐高信著・集英社新書・2023年3月刊・1078円)
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721256-3


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