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〔週刊 本の発見〕『二重に差別される女たち--ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム』 | ||||||
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フェミニズムは飢えと闘うべきだ『二重に差別される女たち—ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム』(ミッキ・ケンダル著 川村まゆみ訳)評者:根岸恵子
この本の著者ミッキ・ケンダルは序章の中で「食べ物の不足、質の高い教育を受ける機会、安全な住環境、最低賃金、医療。これらはすべてフェミニストの課題だ。しかし、女性を支援して基本的ニーズを満たすことに焦点を当てたフレームワークの代わりに、生き延びることではなく特権を増大することを焦点にしたケースがあまりにも多い。すべての女性を代表する運動のはずなのに、すでにニーズのほとんどが満たされている人々が中核になっている場合が多すぎるのだ」と述べている。これは白人女性が主導するアメリカのフェミニズム運動を批判しているのである。もちろん、アメリカと日本では環境も状況も大きな違いがあるので比べることもできないが、女性は今が抱える女性の問題に対し共闘していくべき時ではないかと思う。 ミッキ・ケンダルはフッドと呼ばれる低所得地域で生まれ育ったアフリカ系アメリカ人である。貧しい黒人であることで受けた差別は、「フェミニズムというのはただの学術論ではなく、社会の弱い立場の人を助けるものだ、これは自分の仕事だ、何よりも重要な人々のためにお前がするのだ」という決断を生んだ。 アメリカではホワイト・フェミニズムがフェミニズム運動の主流をなし、自分たちの地位を守るために白人至上主義と家父長主義を肯定している。白人女性の53%がトランプに投票し、彼女たちが求めたフェミニズムはすべての女性への平等と公正ではなかった。他のすべてのものを犠牲にして成り立つ、白人の利益でしかなかった。白人としての権益を守り、有色人種の貧困や困難には目をつぶる。 アメリカで白人女性に選挙権が与えられたのは1920年。黒人差別を制度化したジム・クロウ法が撤廃されたのは、公民権運動ののち1964年になってからだ。差別は続き、黒人女性は女性であるために二重に差別されている。アメリカでは有色人種の女性が殺される割合の高さや黒人女性の短命について話題になることはない。白人女性が声をあげれば社会化されることでも、有色人種の女性の言葉に誰が耳を傾けるだろうか。人種偏見は有色人種から教育、就職、医療などあらゆる機会の不平等を生み、貧困を生む大きな原因になっている。 アメリカでは4200万人が飢えに苦しんでいる。半分が女性で66%のシングルマザーの家庭が困窮している。女性の貧困を緩和させるのはフェミニズムの仕事だ。ケンダル自身、貧困に苦しんできた。「本物の飢えは、人を絶望させ、深刻な事態になりかねない選択を迫る。私たちを駆り立てるのは生存本能だが、絶え間なく続く飢えの苦しみは、わたしたちをさらにぎりぎりまで追い詰める」と書いている。しかし、メインストリームのフェミニズムは飢えを闘うべき問題として取り上げることはない。貧しい女性たちは支援を受けているからと言い、支援とは何かを考えることもない。ホワイト・フェミニズムは中絶権や平等賃金を求めて闘う時と同じように飢えと闘うべきだ。飢えは後回しにできない問題だからだ。食料は人間の権利だ。 日本ではどうなのだろうか。同じようにコロナ禍で女性の貧困が深刻な状況になっている。相談会や支援者もいるが、日本のフェミニズム運動にもまた、経済的格差と排外的な人種差別の問題が存在している。言い過ぎではないだろう。行き場を失った外国人労働者や住まいを失ったシングルマザーの話を連日のように耳にする。しかし、女性の問題に格差も差別もあってはならない。ケンダルは最後に「今こそメインストリームのフェミニズムが一歩踏み出し、自分たちの権利を認めよと叫ぶ時間を減らして、その労力を物的・人的資源の提供に当てる時だ」と述べている。 女性は多くの違いがあっても女性ということで同じである。この家父長的な力で支配された社会を変えることができるのは女性だけである。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・志水博子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2022-01-13 16:18:00 Copyright: Default |