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レイバーネットTV 第168号(2022年4月20日放送)詳細報告

被災者を護らない国は何を護るのか

「被害者であることに疲れている」。なんということを私たちは言わせているのか。福島 の被災は、個人の責任ではない。 オリンピック開催、避難指示の解除と復興の姿ばかりが強調された去年。しかしあの爆発 を忘れてはならない。新たな事故被害者を次の世代に出させてはならないと思う。一方で、 責任を持ち、事態の収拾をすべき人たちの逃げの姿勢に、つくづく悲しくなった。(報 告:笠原眞弓) <特集: 11年目のフクシマ〜若者を襲った健康被害>  動画:https://youtu.be/vdqGBwtzxC8 進行:北健一・北穂さゆり ◆今月の一枚(レイバーネット写真部)今回は、ウクライナのペット連れの避難の様子と そこにそこはかとなくある差別問題を指摘した。 ◆消費税「インボイス」って“戦費捻出税”?〜参院選の一大争点   ゲスト:大谷英暉さん 「消費税の歴史と問題点を読み解く」著者   聞き手:ジョニーH
●税収で一番多いのは取りやすい消費税  大谷英暉さんは、この制度の欠点に気づき、警鐘を鳴らしてきた。  導入当時の全税収に対する消費税による税収の割合は、導入初期の消費税は7%だったが 今や所得税30%、法人税15%に対し、消費税は30%を超えている。この消費税による税 収の増加の原因は、ただ「取りやすいから」である。 ●滞納率も消費税がトップの60%  導入時に人々の抵抗があり、導入初期は、年商3000万円以下は免税だったが、2004年に10 00万円となった。納税状況を見ると、源泉所得税、法人税など他の滞納は20%以下に収ま っているが、消費税だけがとびぬけて高く、60%近い。  そんな中での免税額の撤廃である。2023年10月からは、全取引が消費税の対象になる。こ の制度の導入と同時に「インボイス(適格請求書)」のみが正式な領収書となり、消費税 納入の算出基準となる。 ●「インボイス」登録をしないと他人が仮払いしている消費税まで収入とみなされる  つまりA店がお客Bから税込で1100円払ってもらうと、そのうちの100円はお客から預かっ た消費税分なので、1000円の収入にかかる消費税額100円をA店は納税することになる。さ らに、商品や商品の材料を購入した時に払った消費税分も収入から差し引けるのだが、そ の額を税として払うときの計算のもととなるのがこのインボイスである。この領収書がな いと、正式な領収書と認められず、消費税分も収入となるのだそうだ。  この「インボイス」はあらかじめ税務署に届け出ておかなければ、発行できず、正式な売 買として認められないという。  ということで、聞き手のジョニーHさんは、実際に施行された場合の例を挙げた。タク シー券でタクシーに乗った場合、運転手がインボイスに登録された領収書を発行しないと そのタクシー代は、乗った人の経費として落とすことができない。すると未登録のタク シーはお客さんが減るということになる。例えば、これはお客さんと飲食した場合の経費 についてもいえるということだ。 「インボイス」は、あらかじめ税務署に各人・各法人が登録するのだが、今年の10月から 受付が始まるそうだ。制度の施行は1年後の10月を予定しているが、どんな小さな商店も 少額の謝礼でも必要で、この新制度を隅々までの人が理解できて、スムーズに使いこなせ るかは、全く不明である。大谷さんは、これは明らかに零細企業いじめとなり、人々の生 活を直撃するだろうという。 ●増税・増収の使い道は「防衛費」?  一方で「政府がしようとしている防衛予算の原資は、このインボイスによる税の増収では ないか」という質問に、まさにその通りで、貧乏人からお金持ちまであらゆる階層から、 一番取りやすい消費税から取り立て、税収増を見込んでいるということだ。  この制度自体を理解できない人は、多いだろう。お客から預かっている立て替え払いの 消費税を込みで収入にカウントされて高い税金を払わされる人も出て来るだろう。  さらに、自民党議員の3分の1しか賛成せず、公明党は自民の決定に従うといい、維新は賛 成、野党議員のほとんどが反対している中、弱い者いじめのインボイス制度の実施中止が この参議院選挙の争点として、取り上げたいと大谷さんは警鐘を鳴らす。 ◆ほっとスポット・ジョニーH・乱鬼龍
・ジョニーHさんの歌は「消費税はいらない」生活苦しいのに、消費税だけはバッチリと られると歌う。 ・乱鬼龍さんの今月の川柳  チェルノブイリフクシマそしてウクライナ ◆特集 11年目のフクシマ〜若者を襲った健康被害 ゲスト:鈴木邦弘さん アーティスト 福島の被災の絵本『いぬとふるさと』がある     白石草さん  OurPlanet-TV ゆうたさん(匿名)オンライン参加  聞き手:堀切さとみ 動画:https://youtu.be/vdqGBwtzxC8  33分くらいから ●まだまだフクシマ進行中  アーチストの鈴木邦弘さんは、介護福祉士でもあり、その資格を生かすべく事故後福島 にボランティアとして入り、そこで出会い、見たものを絵本にして原発事故をテーマとし た『もやい展』(2回開催)に出展した。私も東京で見たが、他作品の激しいメッセージ に囲まれて、どこかポアーンとした絵にホッとすると同時に泣けた。彼は、2会場とも、 観覧者が「ホッとする」と言いながら涙を流す人が多く、個展では悲しいと言われたと いう。  絵本の表紙は双葉町の「原子力明るい未来のエネルギー」である。この標語の伝承館に 展示(現在はレプリカ)された経緯、汚染した田んぼが仕方なくメガソーラになる事情、 双葉駅の新旧を並べ、新しい駅を「新幹線も止まるような、巨大な無人駅」と町長が皮肉 交じりに言い、レガシーのはずの聖火リレーの出発地は1か月後に解体されたという。 ●いまだに緊急時基準の20mm㏜/年で安全という違和感  白石草さんは、枝野さんの「直ちに健康に影響はない」に違和感を持ち、母と子を中心 に取材を始めた。ほとんどの学校が放射線管理区域であり、避難指示と同じ安全基準20mm ㏜/年もあるにもかかわらず、学校再開が言われ始めて、即座に決まった。その安全性に 疑問を持ち、母親たちも心配して話し合いがされていた。ところが、五輪招致が決定した 2013年9月以降は、被曝被害に対する声が上げにくくなり、メジャー報道も徐々に減る。 被災者も「常時被曝を避ける」と意識することに疲れてきたともいえるのではと白石さん 。でも現実は、緊急時の安全基準である20mm㏜/年は、11年経った今も変わらず、その数 値に基づいて避難解除などが行われている。 ●統計はウソもつく―甲状腺がん発症の地域差隠し  事故初期に保護者の不安が高まり、2011年に国の自然エネルギー庁と東電で資金を出 し、1千億円の福島県県民健康調査がスタートした。 事故後4カ月の行動調査(基本調査)の他、世界でも類を見ない規模の事故当時18歳未満 の子ども38万人を対象とした甲状腺がんなどの検査、妊産婦や心の問題の他、広島長崎と 同じ被曝の影響調査にも及んでいる。   甲状腺がんの調査は、2年おきに同じ人に実施している。現在甲状腺がん発症者は通説で は、300人と言われている。ただし、検査漏れで400人はいるとも言われている。  ここで2回目の検査の甲状腺がんの10万人当たりの発症率の地図が示された。その図は 明らかに地域差があると思われるが、「地域差が出るのはおかしい」と、地域差が出ない解 析方法に変え、福島県としては、被曝と甲状腺がんの因果関係はないとした。 しかし、これまでは、15歳以下であれば100万人に1人か2人、20歳以下では5、6人といわれているのに、その 数十倍になっている。しかし、この一般より多いことを行政は、これまで このような大人数の検査をしたことがないので、隠れたものが見つかったと主張している。 ●甲状腺がん患者同士支えあいながら裁判に挑むゆうたさんたち  今年1月、小児甲状腺がんと診断された子どもたち6人が提訴した。そのおひとりゆうたさ んに、オンラインでお話を伺う。  高校を卒業してから告知を受け、死ぬのかと不安になったという。裁判の話が出る前はも やもやしていたが、あきらめてもいた。なんでこうなったかをはっきりさせたい気持ちで  裁判に臨んだという。ほかの患者さんは、体調崩したりしていて、そういう人の力にな れたらと思っている。
●人生の一歩を踏み出す時期のがん告知  白石さんは、このがんは大したことないと言われているが、がんはがんで、再発したり 寛解になかなかならない人もいる。ちょうど15歳から20歳前後の人生の方針を決めるとき のがん告知がいかに過酷かと白石さんは思いやる。  彼らが社会に訴えることで、社会的なバッシングを受けることのないよう、周りに気を 遣う。本心を封じ込められているのが被害そのものだと白石さん。 ●甲状腺がんと被曝を関連付けられない国の事情  政府はあらゆる手を使って被曝被害を隠そうとしている。もしこれを認めると、チェルノ ブイリと同じレベル7となり、政府がこれまでしてきた政策がすべて覆るからである。帰 還の停止、避難の積極的支援、家賃補助も当然……。  だからこそ、裁判の結果は「事故のせい」か、検査がこれまでになく広範囲なので「見 つけなくていいものを見つけたか」の2択になる。 ●本人たちは疲弊している 周りの人が寄り添っていきたい  私たちも注目していきたい裁判である(最初の口頭弁論は5月26日)。ご家族も傍聴 に来ると思うので、是非みんなも傍聴して応援していきたいと白石さん。  鈴木さんは、当事者は疲れているから、被災者に寄り添いつつ自分が出来るアートで周り に伝えていきたということだ。ゆうたさんは、長く続くと思うが、暖かく見守ってほしい と。  フクシマは、終わることがない。当然私たちレイバーネットも「自分事」としてかかわっ ていくつもりだ。 次回レイバーネットTVは、5月19日(水)19:30〜の予定。

*写真 : 小林未来

Created by staff01. Last modified on 2022-04-24 23:04:06 Copyright: Default

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