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「努力しても報われない」人たち〜ドキュメンタリー映画『東京クルド』緊急公開

松本浩美

 『東京クルド』観てきました! 「努力すれば報われる」「自分の道は自分で切り開く」。よく聞く言葉ですが、この当たり前だと思っている言葉が、まったく通用しない現実が描かれています。


*(C)2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.(下の写真も)

 主人公は川口に住むクルド人の2人の青年、ラマザンとオザン。幼い頃にトルコから来日し、家族そろって難民申請するも認められず、在留資格なし。仮放免という、就労不可、社会保障制度からも排除された実質無権利状態で暮らしています。稲葉奈々子さんという移民研究者が、仮放免の子どもについて語った言葉があります。「普通子どもは成長するにつれて、できることが増えていく。しかし、仮放免の子どもの場合、成長するにつれて、できることの選択肢が減っていく」。まさに、その残酷な現実がこの映画のテーマの一つです。

 在留資格がなくても、子どもたちは学校に通うことはできます。そのため、日本語がわからなくていじめられたりしながらも、一生懸命頑張って言葉を覚えて、どうにかクラスでの居場所を獲得して、スポーツや部活でがんばったりする子どもたちも少なくありません。しかし、高校になって進路を考えなければならなくなると、様相は一変します。

 高校生になってアルバイトをしようにも就労不可。肝心の進学では、就職率を競う専門学校では、就労不可の仮放免者は門前払いされてしまいます。そして、入管への出頭。幼い頃は入管への出頭は免れるケースは多いのですが、高校生になると入管職員と面接しなければなりません。そこで、「どうせビザは出ないのだから、いくら勉強をがんばってもムダ」などと嫌がらせのような暴言を吐かれるのです。


 さらに、学校を卒業すれば、入管施設への収容の危険性も出てくるのです。彼らは「日本にいてはいけない人」。だから、就労不可、住民票にも記載されず、社会保障制度、公的支援も対象外。だから、高校生になっても奨学金は利用できません。家計補助のバイトもできません。学校でいじめにあいながらもがんばってきて、自分の特技を発見したとする。しかし、そのためにがんばっても、日本にいることすら危うい。そもそも仕事ができないのだから。サッカー選手になりたい。幼稚園の先生になりたい。看護師になりたい。子どもはいろいろな夢を描きます。でも、社会からは「ここにはお前たちのいる場所はない。出ていけ!」と言われる。

 この映画に出てくる2人の青年のうち、1人のラマザン君とは何度か話をしたことがあります。聡明なうえイケメン、しかもおしゃれ。どこにでもいる青年なのですが、抱えているものはものすごく重い。この映画はたくさんの人に見てほしいと思っています。日本人はもちろんですね。あと、個人的に外国ルーツの人にも見てほしいと思っています。特に、2世の人。

 2人の青年は幼い頃に来日しました。彼らの親1世とのコミュニケーションなど、もしかしたら相通ずるものがあるのかな、とも感じます。彼らは日本語の読み書きもできて、言葉も流暢にしゃべれる。1世の親も少しはしゃべれるけれども、子どもたちほどではない。1世は生活に手いっぱいで、子どもたちの教育のことも気にはなるけれども、どうしても後回しになってしまう。2世の彼らは、周囲の日本人の子どもたちと自分たちの境遇を比べてしまう。

 とにかく、描かれるているのはつらい現実なのだけど、たくさんの人に見てほしいと思っています。たくさんの人が共感すれば、それが希望につながります。なぜなら、私たちが声をあげて、動かなければ、現実は変えられないからです。日本には、この映画に出てくる無数のラマザンとオザンがいるんです。

*2021年製作/103分/監督 日向史有 シアター・イメージフォーラム(渋谷)で上映中


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