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投稿者 : 酒井徹

排外主義団体"美術展"を見た―会場前では対抗アクションも―

https://imadegawa.exblog.jp/31798394/
■去年"犯罪はいつも朝鮮人"と
「あいちトリカエナハーレ2020『表現の自由展・その後』」という美術展が9月26日と27 日に名古屋市内で有った。差別的な言動を繰り返してきた在特会の元会長が党首を務める 政治団体・日本第一党の愛知県本部が開いた。「あいちトリカエナハーレ」が開かれるの は去年に続き今年で2回目である。 去年の「あいちトリカエナハーレ」では、「犯罪はいつも朝鮮人」というカルタ札が愛知 県の施設で公然と展示された。「リンチは鮮人の伝統行事」というカルタ札も有った。開 催団体側は昨年、施設の事前のヒアリングに「ヘイトスピーチを行わない」と答えていた。 にもかかわらずこうした展示が昨年行なわれたのである。愛知県の大村秀章知事はこう した展示を「明確にヘイト」と断じた〔注1〕。 今年は県の施設から貸し出しを断られ、「市民ギャラリー栄」が会場となった。ここは、 名古屋市の中区役所と同じ建物の中の7階に在る市の施設だ。開催団体側は報道各社の立 ち入りを拒否したという(『朝日新聞』9月27日)。
■区役所1階で思想チェック!?
名古屋市の一市民として私は「あいちトリカエナハーレ」を見に行った。中区役所の建物 に入ってエレベーターに乗ろうとすると第一党側の自主「警備員」に、「ちょっと待って。 アンチですか?」と呼び止められた。「アンチって?」と問い返すと自主「警備員」は 「思想は?」と私に問うてきたのである。公共施設を借りて開かれている美術展を見る ために思想を申告させられるとは正直、思っていなかった。そもそも1階は、第一党側が 借りているフロアですらない。第一党側の自主「警備員」が我が物顔で思想チェックを行 なうなどということが許されるのだろうか。私は、「社会民主主義ですけど……」と自ら の思想を正直に答えた。すると第一党側の自主「警備員」は、「うーん、社会民主主義… …、どうしよっかなぁ……」などと首をひねって仲間の顔を見た。そして、「騒いだりし ない?」と私に尋ねた。私が「もちろん」と答えることで、ようやく入場が許されたのだ。 こうした「思想チェック」を受けたのは私だけではない。ツイッターには、「入り口で 『パヨクの方ではないですよね』と聞かれた」〔注2〕とか、「エレベーター前で思想を 聞かれて……」〔注3〕との声が上がっている。
■「先住民を騙」るアイヌ!?
中には30点ほどの展示物が有った。会場に入って最初に目に飛び込んできたのは、チョゴ リ姿の女性を描いた「直輸入妓生」という絵だ。女性は、あいちトリエンナーレ「表現の 不自由展・その後」に展示された「平和の少女像」を思わせる。彼女は売春宿と思われる 所でイスに座っている。客引きの顔は愛知県の大村秀章知事にそっくりだ。 その隣には従軍慰安婦や、慰安婦問題の補償を求める女性たちをグロテスクに描いた絵が 有った。「老いも若きも」という題だ。キャプションには、老いた当事者や若い支援者に ついて、「人間の持つ金銭欲を発揮」しているとあった。 少し奥に行くと、今年もカルタが展示されている。今年は「韓国十大財閥かるた」だ。内 容は、「普通に日本企業のロッテです」などというものだった。昨年の明ら様な差別・ヘ イト性は幾分、なりを潜めたように思われた。 さて、最も露骨な差別性を私が感じたのは、実はアイヌ民族を扱った作品であった。まず どこかの民族衣装かと思われる服が展示してある。題名は「消される記憶」だ(この服 はウィグル族の民族衣装で、中国のウィグル人弾圧を批判しているのではと言う人が居た)。 そしてその隣には、アイヌ服を連想させる民族衣装が展示してある。題名は「先住民 を騙りしもの」だ。アイヌが「先住民を騙りしもの」と言うのだろうか。それとも、その 民族衣装が実はアイヌ服でなく、「偽物」だというような仕掛けでも施されているのか。 その隣には「董孤之筆・斉東野語」という絵画が有った。左側にはアイヌの女性が品位の 有るタッチで、右側には踊りを踊る群衆が否定的に描かれていた。更に漫画風の「コロッ ポックル」が左側では笑顔で、右側ではショックを受けた表情で描かれている。キャプシ ョンでは右の人々の踊り方が『そろっていない』などと揶揄されていた。そして、そうし た人々が「今のアイヌだと主張する人たち」という文言で、「彼らの神様やコロポックル に思いが有るようには思えない」と非難されていた。 アイヌ民族の友人にこの話をした。彼は、「コロポックルに思い? 有るわけないだろ。コロポックルって、日本で言えばカッパみたいなもんだ。お前、カッ パ、信じるか? カッパに思いとか、有るか? 無けりゃ本物の日本人じゃないとか、そんな事、無いだろ。日本人だって江戸時代とは全 く違う格好をしてるし、考え方も変わってきただろ。何でアイヌにだけそういう事、言う んだ? それこそ差別だ」と憤っていた。
■文言が分からない色紙の文字
その他、私が注目した作品を2点紹介する。 1つ目は、「都合のいい椅子」という作品だ。木で出来たイスが2つ並んでいる。去年の 「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」に出品された「平和の少女像」 も木のイスに座っていた。そして少女像の隣に、誰も座っていない木のイスが置かれてい た。ただし、この「都合のいい椅子」には、従軍慰安婦を象徴するとされる少女は座って いない。ただ、木のイスが2つ有るだけだ。「従軍慰安婦など居ない」というメッセージ なのだろうか。もっとも、キャプションにはその旨の主張は特に記されていなかった。 2つ目は、色紙に文字を書いたらしいものである。字が汚くて、何と書いてあるのか分か らない。キャプションには、『ずいぶん昔に書いたものだが、自分でも、何と書いたのか 覚えていない』などとある。私は、「そう言いながらとんでもなく差別的な事が書いてあ るのではないか。そう指摘されると、『書いたのはヘイトスピーチ対策法施行以前だし、 出品した時にはその意図は無かった』とでも言うつもりなのでないか」と疑った。だが、 幾ら読んでも字は汚すぎて本当に読むことが出来なかった。うまくしてやられた気分だ。
■「表現の自由がこの程度…」
会場の外では昨年、「あいちトリエンナーレ」会場で水をまいて逮捕された室伏良平氏ら による対抗アクションが行なわれていた。室伏氏は頭を丸めて建物前で土下座していた。 「作品」にはキャプションが添えられ、「日帝本国人『土下座』 本邦では『表現の自由』を考えた際に出てくるカウンターアートが、蓋を開けてみれば周 辺民族ヘイトだったりするというあまりのくだらなさに、いてもたってもいられなくなっ た日帝本国人一同が、一斉に土下座をはじめました」と書かれていた。
〔注1〕「排外主義的団体が愛知で『日本人のための芸術祭』 大村知事『明確にヘイト 』」『毎日新聞』電子版2019年10月30日 https://mainichi.jp/articles/20191030/k00/00m/040/008000c 〔注2〕限界のろくでなし旅のサムライ 2020年9月26日午前11時25分 https://twitter.com/itumono_samurai/status/1309680475946983424 〔注3〕でみたろ&生配信チャンネルは毎日20時〜 2020年10月27日午後1時27分 https://twitter.com/kIE7abNZpqJriAF/status/1310073456424177664

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