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高井弘之 : 強制「徴用」被害者遺族「記者会見」報告
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投稿者 : 高井弘之

【強制「徴用」被害者遺族「記者会見」報告】

◆私たち「平澤―愛媛市民交流会」は、韓国・平澤市から、強制「徴用」被害者遺族の方お二人を招いて、「記者会見」(5月30日)と「証言会」(6月1日)を行った。

とりわけ、「記者会見」の方の設定には、私の中に、小さくはない不安もあった。それは、設定して、仮に、ニュース性はあるからと報道各社―記者が来ても、この問題に対するいまの日本の報道状況を考えると、そこで、遺族の方々に失礼な、あるいは、傷つけるような質問が発せられる可能性もあるのではないかということだった。

◆しかし、これは杞憂だった。「会見」には、NHK松山放送局や、毎日新聞・愛媛新聞の記者らが参加したが、みんな、遺族の方らの話に熱心に耳を傾けてくれた。

その後の「質疑応答」では、とりわけ、NHKの二人の記者は、遺族の方らが、慣れないそのような場所では語れていなかった大事な内容・問題を、「申し訳ないのですが」という姿勢を維持したまま、質問して聞き出そうとした。

◆お二人は、それに応じる形で、強制徴用された父親への思いや、解放―帰国後の父親の状況などについて語り続けた。広島三菱重工に強制動員され、強制労働を強いられ、さらに被曝したお二人の父親は、帰国後も後遺症にさいなまれ、なかなか、普通に働くことができなかった。

二人のうちのお一人であるパク サンボクさんの父親は30代のころにすでに杖をついていたといい、イ キュメさんの父親は、自分が働けなくて子どもをきちんと育てられなかったと自分を責め、子どもであるキュメさんに、何度も謝り続けていたという。

◆1時間弱を予定していた会見は、2時間を超えたが、誰も帰らなかった。30年余り、愛媛の地で、さまざまな運動に携わり、数え切れない「記者会見」を設定し、参加してきたが、このような「会見」は初めてだった。私は、この三十年余で初めて、記者らに感謝の言葉を述べた。記者らの年齢は、みな、20代後半くらいに見えた。

日本の植民地支配による被害への賠償は「日韓請求権協定で解決済み」という政府やマスコミの主張が全く虚偽であることについての簡単な説明に対しても、彼・彼女らは反発することなく耳を傾けてくれた。

劣化し続け、ヒドクなり続けるばかりのいまのマスコミ全体の状況を考えると、正直、信じられない場が、ここ愛媛で、突然、実現したという思いであった。

◆このような場でとても大切な位置にあり、困難な仕事である通訳は、私たちが交流を続けている四国朝鮮初中級学校の(元)先生らが担ってくれ、その重責を果たしてくれた。とても頼もしく、ありがたかった。

そして、「徴用」された遺族の方々に来てもらうことができ、このような場を設定することができたのは、やはり、私たちが十数年にわたって交流を続けている平澤の市民団体の仲間たちのおかげである。

私たちは、ほんとうの友好・交流関係を築くには歴史認識の一致・共有が大切であり必要であるとの考えから、毎年、「日韓市民共同歴史シンポジウム」を、それぞれの地で交互に行ってきた。

昨秋の「韓国大法院判決」後の、日本の政府・マスコミ・社会の、「この問題を解決する責任は韓国の側にあり、間違っているのも韓国だ」というような、加害国側としてあり得ない、まさに転倒した、「逆切れ」的な状況を受け、今回は、その「シンポ」を、「証言会」の形で設定した。

私たちは、この「証言会」の最後に、平澤の市民団体と共に、【「徴用工問題」に対する日韓市民共同声明―日本の政府・メディア・社会に向けて―】を共同発表した。この内容については、次の投稿に記載したい。


Created by staff01. Last modified on 2019-06-03 17:35:28 Copyright: Default

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