本文の先頭へ
LNJ Logo 米国労働運動 : GM労働者、二層賃金を拒否してストライキに
Home 検索
 


〔解説〕10月号のレイバーノーツ誌は12年ぶりのGMのストライキを報道している。ここで問題になっている二層賃金制とは賃金合理化の一つで、現役の労働者の賃金体系には手を付けず、新規採用者の賃金体系を大幅に引き下げることである。全米自動車労組はこれまで二層賃金制をやむを得ない譲歩として受け入れてきており、これに対する一般組合員の反発が強まっていた。この記事の執筆者ジェーン・スロータはレイバーノーツの創設者の一人で、その前はGMで働いていた。長い記事なので要約した。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバー・ノーツ」誌の最新記事を紹介します。

GM労働者、二層賃金を拒否してストライキに

   ジェーンスロータ 元レイバーノーツ編集長

       9月16日からゼネラル・モーターズ(GM)の労働者49,000人がストライキに入っている。これは2007年にGM労働者がストライキに入って以来、最大の民間部門でのストライキである。GMの55の工場とパーツセンターで生産が停止した。一日当たり5000万ドルから1億ドルの損失が見込まれている。ストライキが起こる前には、この四半期で35億ドルの利益が見込まれていた。

 デトロイト市のハムトラック工場で勤続3年のショーン・エドワーズはストライキに入るのは「怖かったが、同時にワクワクした」と言う。「怖いのは生活が懸かってるし、いつまで続くか分からないから。いつまでもストをしたくはないけど、はっきりとけじめはつけたい」と彼女は言う。「ワクワクするのはついに立ち上がったから。何十億ドルも儲けているGMに譲歩はしない。そして皆一緒だから、その数に安心できるから。自分たちのために団結しているの」

 ストライキ労働者たちは、全米自動車労組UAWが2007年に二層賃金制を受け入れ、2008年のリーマンショックでGMが500億ドルの政府救済を受ける代わりにさらに譲歩を受け入れたことによって失ったものを取り返そうとしている。GMはその後、立ち直り、過去3年間に350億ドルの利益を上げ、昨年は連邦税を1ドルも納めず、CEOメリー・バラの報酬は2200万ドルだった。

 一方、労働者はかつては民間部門では最高の労働条件だったが、いまでは賃金が下がり続け、工場では低賃金の臨時工、下請け工とGMサブシステムという子会社の労働者たちがGMの正規労働者がかつてしていたのと同じ仕事を行っている。2007年にUAWがGMで2日間のストライキをした時には74,000人が働いており、現在の人数より5割多かった。

 デトロイトの組み立て工場での9月16日のピケに立った労働者たちは臨時工と二層労働者の待遇を正規労働者と同じにすることがストライキの最重点課題だと全員が語っていた。

●分断支配

 現在、工場を清掃するのは下請け労働者で時給15ドルである。しかし、かつてはGMの正規労働者で協約が適用され、時給31ドル受け取っていた。組み立てラインでの長年の労働で体を痛めた勤続年数の高い労働者かやる仕事だった。現在では組み立て部品をそろえて並べるような補助的な作業は下請け化されている。

 例えば、テネシー州スプリングヒルの工場では従業員5200人は全員UAWの組合員だが、GM協約の適用を受けるの3600人だけで、残りは「協力企業」の従業員である。

 ハムトラック工場で働く大工のマイケル・ムッチは父親の仕事を引き継いだが、父はGMの社員だったが、彼はアラマーク社の社員であり、上司は今も全く同じ人たちだ。

●「無期限臨時工」

 GMは臨時工と呼ばれるが実は「無期限臨時工」である労働者によって労働条件をさらに切り下げている。正規労働者と同じ仕事をしていて時給15ドルほどしか受け取れない。欠勤は年3日しか許されず、ボーナスもなく、週に7日働くこともあり、何年も働き続けている。

 最初に臨時工がビッグスリーで導入されたときは欠員や年休者の穴埋めだとされていた。しかし、今ではGMの現場労働者の7パーセントが臨時工であり、スプリングヒル工場には200人いる。

●会社の譲歩要求

 GMは健康保険の掛け金の従業員負担分の引き上げとインフレ率を下回る賃上げを提案している。具体的には1年目と3年目の2パーセントの引き上げと2年目と4年目の一時金支払いである。しかし、二層賃金の改善なしである。

 GMの対決姿勢はストライキ中の健康保険掛け金の負担を停止したことでも明らかである。かつてはストライキ中の掛け金を負担していた。

 ストライキ情勢が混迷しているのはUAW最高幹部の腐敗スキャンダルである。UAW委員長のゲイリー・ジョーンズ委員長とデニス・ウィリアムズ前委員長の自宅が8月28日にFBIの家宅捜査を受けた。ジョーンズ委員長の補佐だったバンス・ピアソンは組合費を個人で着服した容疑で起訴されており、次に起訴されるのはジョーンズとウィリアムズだと予想されている。ピアソンはまだUAWの執行委員であり、GMの協約改定交渉にも参加していた。最近UAWで汚職関連で起訴または有罪判決を受けた役員は6人で、ピアソンはその一人である。

 デトロイト近郊のロムラスエンジン工場で働くミッチ・フォックスは組合幹部の不祥事はストライキに有利になるかも知れないと言う。「こんなことになっているので、幹部たちは組合員の信頼を取り戻そうとして頑張るかも知れない、と希望的に予測している。」

●批准投票で否認

 過去の協約改定交渉から考えるとジョーンズ委員長の目指す協約は望ましいものではないと予想される。ストライキは会社よりも組合員を疲れさせるために打たれているとすると、解決一時金とさらなる二層賃金化で妥結するかも知れない。

 その場合、GMのストライキ労働者が使える手段は協約批准投票で否決する権利である。2015年にクライスラー労働者がやったことをやるのである、二層賃金制度を定めた労働協約を否決するのである。

 クライスラーの労働者たちは組合の指示も支持もなく、自分たちでビラやTシャツを作り、フェイスブックで運動を広め、組合集会に動員をかけた。それまでUAWでは不可能だとされていたが、組合本部の批准提案を2対1の票数で否決した。再交渉の結果、協約は改善され、二層賃金労働者は8年連続の賃上げを得て、一層賃金に追いつくことになった。

 「全てのGM労働者に同一賃金への道を示さない協約提案には賛成投票は投じない」とフリント工場のショーン・クロフォードは言う。「これは不可侵の原則であり、労働組合の神髄だ。今を逃したらもう実現する機会はないかも知れない」


Created by staff01. Last modified on 2019-09-30 11:56:03 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について