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〔週刊 本の発見〕『子どもたちの朝鮮戦争 ユギオ6・25』 | ||||||
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「分断・離散・死」人々に残した傷痕●『子どもたちの朝鮮戦争 ユギオ6・25』(素人社 1998)李 元寿、申 東一、姜 小泉、権 正生(編訳=仲村修)/評者:金塚荒夫
父ソ・チンギュの家 これは一体誰が、誰に見せるために、誰のために、書いたものなのか? ところで、このチャンスリ湖はまだ幼い。水力発電という国家的な事業のために、もともとここにあったチャンスリ集落一帯がすべて湖になった、人工湖だからだ。 ここに住んでいたのが立て札を書いたスッキであり、その祖母であった。ある日、家に届いたのは、水力発電用のダムを開発する、国家から補償は出るから不平を言うな、引っ越せ、と命じる役所からの通知だった。しかし祖母は頑なに立ち退こうとしない。朝鮮戦争の際、人民軍のもとへ行ったきり、帰って来ていない息子がいたからだ。スパイとして夜にこっそり帰ってくるのではないか・・・というのが、戦争から10年あまりたった祖母のかすかな希望だった。今自分が住んでいる家が湖に沈んでしまったら、息子はどこに帰ってくるというのか。祖母は抵抗をしたが、結局開発を推し進める国家は家をまるごと湖の底に沈めてしまった。そして数ヶ月後、祖母は死んだ。 かつて集落があった湖の底を見つめると、水流で屋根が流され、壁だけが残った家が見える。しかし、祖母の切ない思いを知る村の人々には祖母が洗濯をする姿も見える。未だ帰らぬ息子を待つ亡霊の姿がそこにはあった。その姿を湖の底に見たスッキは、会ったことのない父が突然湖にやってきて我が家を探す気がして、 父ソ・チンギュの家 と自らの署名とともに立て札を書いたのであった。 ひとびとに残る戦争の傷痕。傷痕を顧みずに進められる国家的事業。完成された「美しい」湖。埋没した家。「美しい」湖に生きる“亡霊”。亡霊の代わりに所在していた過去を書き、そこに署名するスッキ。 開発軍事独裁の韓国の歴史を想起するとき、そして戦争の傷痕を癒そうとする人々の努力を想起するとき、この短編の中で出てくるひと、亡霊たちは絶えることのない問いを投げかけている。帰りたい場所、帰るべき場所に帰るということができないということ。日常的に共に生活できるはずの人々と生活ができないということ。朝鮮戦争の傷痕を描くこのアンソロジーが今、問いかけてくることに、私たちはどう応答することができるのだろうか? *追記:朝鮮戦争と日本の歴史的関係性について、簡潔にまとめた『DAYS JAPAN』2018年8月号もおススメです。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2018-08-30 12:34:03 Copyright: Default |