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〔週刊 本の発見〕『水田マリのわだかまり』 | ||||||
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工場で働く16歳のリアル●『水田マリのわだかまり』(宮崎誉子 新潮社)/評者:佐々木有美
マリは、洗剤をボトルやパウチ(詰め替え用)に充填するライン作業に従事する。『自動車絶望工場』の中で鎌田は、「さっきまで、ゆっくり回っているように見えたベルトのスピードは実際自分でやってみると物凄く速い」と書いている。マリも必死にスピードについていこうとする。「二リットルもある業務用ボトルを、次から次に持つので、五分で手が痛くなる」。不良品を取り除かないと、耳をつんざくエラー音が容赦なく鳴り響く職場。この臨場感がすごい。作者の宮崎誉子は、あとがきで、過去に工場で働いていたことがあると書いているが、なるほどと納得させられる。 工場は、危険な職場だ。工場長は、ベトナムの工場で指を二本失う労災があったと報告する。そう、この会社は多国籍企業なのだ。洗剤の臭いは鼻を刺し、目に入れば失明の危険性も。洗剤の原液を浴びて手を赤く腫れ上がらせたマリは早退する。おざなりの安全教育は実施されているが、ギリギリの人数でまわしている工場は安全とはほど遠い。「ミスとロスのないように」「工場って戦場だからね」という作業リーダーたちのことばは象徴的だ。
マリの唯一の救いは、フィリピーナのニコルだ。彼女は、いつも明るくてやさしい。でも「ワタシタチ、ナカマナメラレタラ、ミンナデヤリカエスネ」と話す。日本人にはない団結の力をマリは、うらやましく思う。この小説には、労働組合ということばが一度も登場しない。それほど、労働組合は、世の中から見えなくなっている。身体をむしばむ危険でハードな労働を強いられる労働者たちは、仲間への攻撃でうっぷんを晴らす以外に道がないのだ。マリの団結へのあこがれは、まっとうだ。マリの気持ちが労働組合につながる日は来るのか。 実は、マリは中学二年のとき、クラスメートがイジメ自殺をして、傍観した自分が許せないでいる。「容赦ないスピードで回転するベルトコンベヤーは、甘えが許されず、まるで罰を受けているみたいで安心する」というマリ。鎌田慧の「刑罰」ということばが、素朴にひびくほどの屈折。これが現代のリアルといえば、あまりにも切ない。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2018-05-23 21:58:16 Copyright: Default |