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「高校無償化法」からの排除は差別―東京朝鮮高校生62人が国を提訴

                                              西中誠一郎

「公立高等学校の授業料無償化及び高等学校等就学支援金制度」(「就学支援金法」、旧「高校無償化法」)から、朝鮮高校の生徒を適用除外するのは違法だとして、東京朝鮮中高級学校高級部(東京都北区)に在籍する生徒のうち62人が、2月17日国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。一人あたり各10万円、合計620万円の慰謝料を求める内容である。

同法は「高等教育の機会均等を全ての人々に保障する」という、国際法(社会権規約)の義務に基づき民主党政権時の2010年3月に「高校無償化法」として成立した。「各種学校」の外国人学校もその対象とされたが、「拉致問題」や「延坪島事件」など北朝鮮との外交•政治関係を理由に、全国に10校ある朝鮮高級学校は審査手続きの凍結や先延ばしが続き、2012年暮れ第二次安倍政権が発足すると同時に下村文科大臣は朝鮮学校排除の方針を発表、昨年2月に省令自体を改定し適用除外を決定した。「高校無償化法」自体も、昨年暮れの国会で、所得制限付きの「就学支援金法」に後退した。

この問題は国連社会権規約委員会でも取り上げられ、昨年5月には「朝鮮高校の除外は差別にあたり、朝鮮高校生徒にも就学支援金制度の適用を求める」という勧告も出たが、日本政府は「差別ではない」としている。政府の動きに追随して地方自治体の朝鮮学校に対する補助金停止も相次ぎ、朝鮮学校全体の存立基盤が揺らいでいる。このため日本全国の朝鮮学校が提訴し、今回の裁判は大阪、愛知、広島、福岡に次いで提起された。

提訴後に行われた記者会見で、弁護団は訴訟の要点として次の四点を上げた。

(1)就学支援金の受給資格は学校ではなく生徒自身にあるので、政府の措置は生徒の受給権の直接の侵害にあたる。(2)省令改定による一部の規定削除は、「教育の機会均等」という法の目的に反して、高校無償化法の委任の範囲を逸脱し違法で無効。(3)原告生徒の意志の及ばない政治的理由による省令からの規定削除は、「全ての意志ある生徒の学びを保障する」という高校無償化法の趣旨を根底から覆すもので違法で無効。(4)東京朝鮮中高級学校は指定基準を全て満たしているので、就学支援金制度の対象として指定されなければならない。

「今までに何回も生徒たちに会って裁判の内容を説明し、本当に自分で裁判をやるべきだと考えた生徒に原告になってもらいました。本来適用されていれば、1年間に11万円余りが個々に受給できたはずで、金額が問題の裁判ではありません。朝鮮学校への差別であり教育権の侵害であるということです。生徒個人の権利を救済したいというのが唯一最大の目的です。この裁判で国の違法性が認定されれば、民族教育にとっても意義があることになると思います」と、弁護団の李春煕(リチュニ)弁護士は質問に答えた。      記者会見には原告の朝鮮高校生は参加しなかったが、直前に同校で全校集会を開催し、原告として立ち上がった生徒62人と共に、勝利するまで闘い続けることを誓い合った。

翌18日には都内で「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」結成集会が開催され、朝鮮学校で学ぶ現役高校生や卒業生、教師、保護者、日本人支援者など約600人が集まり、会場を埋め尽くした。

集会は「支援する会」の共同代表•田中宏外国人学校ネット代表の挨拶にはじまり、裁判に立ち上がった生徒たちと共に闘う同校生徒たちからのメッセージビデオの紹介や、同校合唱部の清らかで力強い女声合唱が続き、会場全体に熱い思いが満ちあふれた。

「朝鮮の言葉と歴史を学び、民族心を育むことは朝鮮学校でしかできないことです。日本で生活しながら祖国を身近に感じ、民族にふれあえるのが朝鮮学校です。そしてなにより朝鮮人の友達がいます。共に学び、共に笑い、共に悲しむ大切な友達がいます。1世、2世が守り育て続けてきた朝鮮学校は、わたちたちにとって、とても温かいもうひとつの家であり家族なのです」。高校生代表がメッセージを読み上げ始めると、会場からは大きな拍手とすすり泣く声が自然に沸き起こった。高校無償化法ができて4年間、朝鮮学校への制度適用を求めて、高校生自らが立ち上がり、街頭署名を集めたり、数多くのデモや市民集会、院内集会にも参加してきた。「どれだけ叫べばいいのだろう、どうれだけ闘い続ければいいのだろう、前が見えないまま何度も訴え続けました。朝鮮人として民族の言葉と歴史を学ぶことがそんなにいけないことなのか、学ぶ権利は全ての子ども達に平等に与えられるべきではないのか、自問自答しながら私たちは闘い続けました。しかし、私たちの声は日本政府には届きませんでした。それどころか学ぶ権利まで奪われようとしています。このままでは終れない。私たちは決心しました。共に闘おう。私たちの闘いの場は法廷闘争へと移ることになりました」

同校の申吉雄(シン・ギルン)校長は「今回の提訴と支援する会の結成に深く感謝します。朝鮮学校は在日朝鮮人の宝で、未来のある子どもたちを日本政府が傷つけたことは到底許せない。しかし日本政府が進んで私たちに権利をくれたことはない。闘いによって得てきたものです。権利を得ることは容易いことではない。制度的差別に気がついた当事者が立ち上がるしかないのです。皆さん、子どもたちの闘いを温かく支えて下さい」と決意を述べた。

保護者や弁護団、朝鮮学校支援を長年続けてきた人たちからの熱いメッセージが続いた。「国による朝鮮学校差別は、戦後ずっと行われてきた。これは民族教育を守る闘いであると同時に、植民地支配の過去清算が未だに行われていないという日本社会の問題。マイノリティの権利を勝ち取るための大きな闘いの一環でもあります。日本社会に人権や生活、ひとりひとりの尊厳を獲得する闘いに、高校生が立ち上がったということに決意を新たにしています。今の社会を変えなければ、人間としての尊厳が奪われる。長い闘いになると思いますが、皆が固く手をつないで一緒に闘っていきましょう」

【参照サイト】
「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」
http://mushokashien.blog.fc2.com/


Created by staff01. Last modified on 2014-02-26 14:20:44 Copyright: Default

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