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NHKスペシャル「特定秘密保護法を問う」を見て

             海渡 雄一(秘密保護法対策弁護団)

 NHKスペシャル「特定秘密保護法を問う」が8月1日22時から放送されました。私も見ました。なかなかの力作です。この番組は約50分の番組の中で、公正中立を旨とするNHKの番組ですから、法案廃止の立場に立つ私たちとは基本的立場が違いますし、法案の概要の解説だけでなく、安倍首相や森雅子担当大臣、住田裕子弁護士(情報保全諮問会議)も登場して政府の立場を説明するパートもあります。

 しかし、私が番組を見た感想として制作者が特に力を入れていたポイントは、
1)法案が策定される過程の省庁間協議の内容から浮かび上がる、今回の法案の突出点
2)アメリカのISOO、ISCAP、市民団体などの取材から浮かび上がる問題点
の二点を掘り下げていると感じました。

●省庁間協議の内容から浮かび上がる問題点

 第1の省庁間協議の内容から浮かび上がる問題点については、秘密指定の対象、処罰の対象などが取り上げられました。

 外国からもたらされた情報を広く秘密指定できるようにするように求める外務省に内閣法制局が抵抗していたなどの経緯が明らかにされていましたが、これは、集団的自衛権と同じ構図です。今回公表された運用基準においても、「自衛隊及びアメリカ合衆国の軍隊(以下「米軍」という。)の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究(同国において特定秘密保護法の規定により行政機関が特定秘密を保護するために講ずることとされる措置に相当する措置が講じられるものに限る。)」とされています。アメリカで秘密とされているものは、無条件で日本でも秘密にするという「日米地位協定・秘密保護法版」ともいうべき運用基準となっています。このような運用基準そのものが、秘密保護法が集団的自衛権を行使するための準備という性格を帯びていることは明らかだと思います。

 処罰の対象については、秘密指定官庁の公務員だけでなく、国会議員を対象とすることにも、かなりの反対論があったようです。このような議論が丁寧に紹介されていれば、与党議員の皆さんのこの法案に対する対応も持つと冷静なものになっていたでしょう。貴重な指摘です。惜しむらくは、海外と比較したときの秘密保護法の最大の問題点といえる特定取得行為についてきちんと取り上げられていなかった点です。

 7月24日に公表された自由権規約委員会の総括所見は、「ジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点について憂慮する(自由権規約19条)。」「日本政府は、特定秘密保護法とその運用が、自由権規約19条に定められる厳格な基準と合致することを確保するため、必要なあらゆる措置を取るべきである。」「(a)特定秘密に指定されうる情報のカテゴリーが狭く定義されていること、また、情報を収集し、受取り、発信する権利に対する制約が、適法かつ必要最小限度であって、国家安全保障に対する明確かつ特定された脅威を予防するための必要性を備えたものであること。」「(b)何人も、国家安全保障を害することのない真の公益に関する情報を拡散させたことによって罰せられないこと。」としています。ジャーナリストや市民活動家の行為がこの法律の下でどのような取扱をうけるのか、この点を掘り下げた番組を次の機会には期待したいものです。

●秘密大国アメリカから学ぶ

 第2に、アメリカのISOO、ISCAP、市民団体などの取材から浮かび上がる問題点について番組では二つの角度から問題を取り上げていました。一つは、アメリカのISOOは秘密指定官庁出身であっても、そこにはもう戻らない職員によって構成し、独立性を確保していること、ISCAPも各機関の相互批判によって、審査対象となった情報の大半を公開していること、最近スノーデン氏が内部告発によって明らかにしたNSAの情報監視システムについても、ISCAPの活動によって、少しずつではあるものの、その内容が明らかになってきていたことが明らかになっていたことなどが報じられていました。日本に作られる内閣府独立公文書管理監がどのような人材で構成されるのか、出向職員は元の官庁に帰ることができるのかなど、運用基準では何も明らかになっていないことを番組は鋭く指摘していました。この制度は独立性が要です。政府は、このNHKの批判にどう応えるのでしょうか。

 このように、アメリカの秘密指定制度は、重層的な監視制度のもとで、かなりの透明性を確保していると言えるが、他方で、ハルペリン氏がコメントするように、秘密指定のジャングルの中で真に必要な秘密が見分けられなくなり、現実にテロ対策上の重要情報が見逃されていたケースなども報告されていました。これも我々が危惧していた事態なのです。

●あなたもパプコメを書いてみませんか。

 籾井会長の下で、NHKがこのようなNHKスペシャルをつくり、金曜日の10時という時間帯に放映したことには大きな意義がある。この番組でもくりかえし、パブリックコメントが募集中であると告知されていました。

 この国の主権者である我々が、我々の社会の民主主義を守るためには国の保有する情報についても、情報主権を持つ必要があります。そして、秘密保護法に対しても、その廃止を含めて意見を述べていく権利と義務があります。パブリックコメントは、このような主権を行使する大切な機会です。NHK総合、8月6日(水)午前2時15分〜3時04分(5日深夜)に再放送が決まったようです。

 秘密保護法対策弁護団では、パプコメの出し方についての簡単なページを作りました。再放送を見ながら、こういうページも参考に、ぜひあなたもパブコメ意見を書いてみませんか。

*秘密法HP「パブコメの呼びかけ」  


Created by staff01. Last modified on 2014-08-04 14:25:01 Copyright: Default

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