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■定例会リポート(2012年1月24日)
なぜシリアが標的なのか 米が狙うダマスカスからテヘランへの道
青山弘之(東京外国語大学准教授)

 シリアをめぐる情勢が緊迫している。一連の「アラブの春」に連なる形で昨春
始まった反体制運動をアサド政権が弾圧する対立構造は2年目を迎え た。とこ
ろが一方で、英国やカタールの特殊部隊に率いられた反乱部隊、リビアで政府軍
と戦った傭兵がシリア国内に送り込まれ、インフラの破壊から 住民殺害まで不
安定化作戦を展開している。こうした反体制派との戦闘による死者は7000人
を超えたという推計もある。アラブ連盟など国際社会の 非難を浴びながらもア
サド体制は揺るがず、国連安保理は2月4日、アサド大統領退陣を求める決議案
をロシア、中国の拒否権行使によって否決した。 新憲法制定など一定の改革構
想も示しているアサド政権は、このまま続いていくのか。シリアの行く末は、米
国およびイスラエルと一触即発のイランの 情勢とも連動しうる。「なぜシリア
が標的なのか 米が狙うダマスカスからテヘランへの道」と題して、シリア留
学、アジア経済研究所などを経て東京 外国語大学で教鞭をふるう新進気鋭の研
究者・青山弘之さんに解説していただいた。なお、本講演は安保理開催前の1月
24日に行われた。(編集部)


■「シリアでの戦いは対イラン代理戦争である」 
シリア情勢を誤解させるメディア
シュテファン・レンドマン(政治アナリスト)

 「戦争は通常はるか遠い国での人の生き死に関わる出来事だ。ジャーナリズム
がその真相を抉って読者に生々しく事実を伝える努力を怠れば、メディ アは不
作為という名の検閲機関になり下がる」。著者レンドマンは権力側の翼賛団体に
堕した西側主流メディアの現在のシリア情勢の報道ぶりに危機感 を募らせ、こ
のように訴えている。世界の大半を植民地化した欧米帝国主義は第2次大戦後の
被植民者の民族自決・自主独立の動きをかいくぐり、「自 由・民主・人権の擁
護」といったレトリックを用い、新たな装いで旧植民地での権益を追求し続けて
きた。この視点を欠落させる限り、「シリアでの戦 いはイランとの代理戦争で
ある」と見抜くことは困難だ。西側メディアは読者を「アサド政権=悪党」と洗
脳している。シリアが米欧の思惑通り体制転 換すれば、米・イスラエルは脅威
であるイランを追い詰め、中東を自由に支配できる。筆者はこのような権力の思
惑を汲み、情報操作に加担する既成メ ディアを「大悪党」と糾弾する。(編集部)


■シリアの騒乱は“トンキン湾事件”の再現か 
対イラン戦争への米国の陰謀
ダニエル・マカダム(ジャーナリスト)

 米西戦争の発端となったキューバ・ハバナ港での米海軍艦船メイン号の爆破・
沈没事件、真珠湾攻撃、そして米国がベトナム戦争に本格介入する契機 となっ
た、1964年の北ベトナム(当時)で発生したトンキン湾事件等々。米国は
“敵の攻撃”を自作自演、あるいは敵の奇襲を事前に知りながらそれを放置して、
被害を口実に国民の戦意を高揚させてこれまで数々の戦争を遂行してきた。
9・11にもその影はちらつく。同時に、この米政府の常套手段に迎合し、“敵
の悪らつさ、非道、残虐性”を煽りたて、しっかりと利益拡大を図った のが商業
メディアであった。米国のイエロージャーナリズムの伝統がシリアで繰り返さ
れ、それが対イラン戦争の悪夢を現実のものにする恐れが出てき た。筆者はこ
のからくりを綿密に検証して、断罪している。(編集部)


■南米のオルタナティブ放送局がワシントンを震撼させている 
テレスールと反米同盟
ニル・ニカンドロフ(ジャーナリスト)

 変節したカタールの放送局アルジャジーラに代わるオルタナティブ放送局がベ
ネズエラの首都カラカスに誕生している。中南米全域をカバーするスペ イン語
衛星放送局テレスール(Television del Sur=南のテレビ 略称teleSUR)であ
る。米国は中南米地域での反米同盟を牽引するチャベス・ベネズエラ大統領の発
案で2005年に創設されたこの新放送局を“チャベ スの私的なTV局”とみな
して過剰なまでに警戒し、軍事侵攻の準備まで整えている。最初の攻撃目標にテ
レスールを含めており、まず情報戦を制そう としている。チャベスは中南米諸
国の統合を視野に入れつつ、市場原理を排した自由な報道活動で世界的に注目さ
れていたアルジャジーラを手本とし た。だが、本通信235号(2012年2
月5日発行)で本格的に伝えたようにアルジャジーラは親米御用報道機関に堕し
てしまった。テレスールの将 来も今年のベネズエラ大統領選の帰趨に懸かって
いる。チャベスが創設時に約束した政治の不介入と自由で真に独立した報道が保
証され続け、英語放送 部門が設けられて世界中で放送されれば既成メディアに
さらなるインパクトを与えよう。(編集部)


■ウィキリークスの公電暴露の舞台裏を抉る(1) 
NYTは米政府と露骨に連携
ミッシェル・チョフドフスキー(オタワ大学)

 ウィキリークスが大量の米機密公電を暴露して1年数カ月が経った。確かに衝
撃的な事件であった。流出文書を入手したニューヨークタイムズ (NYT)な
ど米欧の主流メディアはこれを編集して“画期的な報道”を行った。ウィキリーク
スの編集者アサンジ氏は絶賛され、一躍時の人となっ た。しかし、オルタナ
ティブメディアの老舗を主宰するチョスドフスキー博士は「ちょっと待て」とブ
レーキをかけ、ウィキリークスの背後で蠢くもの を抉り出そうと努めた。あら
ゆる事件には表と裏がある。メディアの一線記者にとっては「常識中の常識」な
のだが、洪水のような権力側の発表情報の 処理に分刻みで追われていると常識
を忘却してしまうのが現実である。著者はウィキリークスの資金源と支援者、
ロックフェラー財閥の“僕”である NYTをはじめ英、独の代表メディアとの連
携、NYTが漏洩した情報を米政府に配慮しながら“編集した”事実を“歯に衣着
せず”描き出している。 博士の卓越した論考を2回に分けて連載する。(編集部)


■諜報活動の不可欠な手段となったSNS 
米国は政敵の体制転換に活用
ジュリー・レベック(メディア・オフィサー)

 西側諸国の衛星放送を通じて入ってきた情報が体制転換のドミノを促した
1980年代末の東欧革命から約四半世紀。この間、20世紀末にIT革命 と
称される情報伝達の一大変革が発生し、社会的ネットワークをインターネット上
で構築するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が爆 発的に普
及した。それは情報収集用の手段にとどまらず、米英諜報機関は機密作戦を支
援、展開するため身元捏造やさまざまなプロパガンダに活用し て、“カラー革
命”や“アラブの春”を誘導した。筆者は今後、米主導の西側諸国が敵性国家の中
国、キューバ、イラン、シリア、ロシアなどの現体制 破壊に“サイバー反体制活
動家”をフルに活用しようと、訓練に余念がないことを伝えている。(編集部)


■ギリシャでの抗議運動で蘇るサンカラ最後の演説 
債権者に挑んだアフリカのゲバラ
レオニダス・オイコノマキス(アクティビスト)

 2012年2月半ばのギリシャ議会での新たな緊縮財政策の受け入れ合意とそ
の見返りとしての追加金融支援策の決定は“世界”をいったん安堵させ た。対円
レートで見ると、1ユーロ=90円台半ばまで下落していたユーロは瞬く間に同
110円近くまで上昇した。これで巨額の富を手に入れたのは 投機筋という名
の強欲資本家たちである。これとつながる既成メディアが伝える“世界”とは第2
次大戦後の米国の覇権維持機関である世界銀行と国際 通貨基金、そして欧州連
合諸機関、さらにこれと一蓮托生のウオールストリートを筆頭とする金融・資本
市場であることは疑いの余地がない。約70億 人の人口の過半が日々の生活に
喘ぐ世界を繰り返し破綻させて、火事場泥棒同様、ここぞとばかりにぼろ儲けす
るネオリベ、カジノ資本主義の信者た ち。その仮面を四半世紀前に果敢に剥い
だのがアフリカのチェ・ゲバラと称えられながら、暗殺されたトーマス・サンカ
ラ(ブルキナファソ第5代大統 領)だった。混乱の続くギリシャで今、金融危
機の本質を先駆的に喝破した革命家の最後の演説がエコーとなって蘇ってい
る。(編集部)


■「普天間飛行場・固定化」を危惧 急浮上の「グアム先行移転」計画
池田龍夫(ジャーナリスト、毎日新聞ОB)

「米海兵隊のグアム先行移転」計画が急浮上して、その波紋が広がっている。果
たして、米軍基地に悩む「沖縄」の負担軽減につながるだろうか。…手 詰まり状
態の「普天間飛行場の辺野古移設」を打開するため、米国防総省が打ち出したも
ので、米軍再編計画のパッケージから「普天間」を切り離し て、グアム先行移
転で、日本政府を揺さぶる米側の深慮遠謀を感じさせる動きである。


■政府、西山太吉氏に謝罪せず 沖縄「密約」隠避に遺憾

 沖縄返還をめぐる日米両政府の「密約」問題について、糸数慶子参院議員(無
所属)の質問主意書と2月21日に政府が閣議決定した答弁書を掲載す る。問
題をスクープし、後に国家公務員法違反で有罪となった元毎日新聞記者の西山太
吉氏に対し「長期間、国民に明らかにされてこなかったことは遺 憾だ」とする
一方、公式に謝罪する意思はなく、名誉回復措置を取る考えもないことを明らか
にした。なお最高裁で争われている密約文書の情報開示を 求める訴訟への言及
はなかった。(編集部)


■「まだ絶望を語る時ではない」
書評 山口二郎著『政権交代とは何だったのか』(岩波新書 2012年)

■「大メディアの敗北から1年 公共財としてのジャーナリズムは生き残れるか」
書評 青木理・神保哲生・高田昌幸『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレ
ビの深層』(産学社)


※本文は通信上でお読みください。

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