本文の先頭へ
米国 : アリゾナ州の反動的な新移民法に抗議
Home 検索
「労働情報」掲載予定のレポートです。喜多幡
+++

アリゾナ州の反動的な新移民法に抗議、プロ野球・バスケットボール選手も同州をボイコットへ

4月23日、アリゾナ州のジャン・ブリュワー知事は「不法移民」の規制を目的とする新たな移民法(SB1070)に署名した。この法律によると、警察官は「不法移民」の疑いがあるとみなした者を拘留することができ、移住者が滞在許可証を携行しない場合は犯罪とみなされる。施行は8月からとされている。

この法律は全国でも例のない抑圧的な法律であり、特にラテンアメリカ系住民に対する嫌がらせと差別を煽るものである。

オバマ大統領は同日、この法律について「われわれがアメリカ人として抱いている公正さの基本的な概念と、われわれの安全を維持するために不可欠の警察官と市民社会の間の信頼関係を脅かす」と非難した。

トーマス・ジェファーソン法律学校の教授のマージョリー・コーンさんは次のように指摘している。

「この法律は警察官が民族や人種を根拠にして『不法移民』の疑いがあるとみなし、尋問することを禁止していない。警察官がアイルランド人やドイツ人を居住証明書の確認のために拘束するとは思えない。この法律はアリゾナ州で通行する非白人を潜在的犯罪者とみなすものだ」(「Zネット」4月29日付)。

メキシコの外務省は、同州に在住するメキシコ市民の権利と、同州との関係についての懸念を表明した。ロサンゼルスのロジャー・M・マホニー枢機卿は、警察に在留許可証の提示を求める権限を付与することは「ナチズム」であると非難した。

メキシコに隣接するアリゾナ州には、米国に滞在する約1080万人(推定)の許可証を持たない移住者のうち46万人が在留し、建設、農業、レストラン、保育等の労働に従事している。

移住者の権利を擁護するグループや労働組合は、SB1070の撤回を求めて、アリゾナ州に対するボイコット運動を展開している。大リーグのアリゾナ・ダイアモンドバックス(同州の「広告塔」となっており、球団オーナーは同州の共和党の後援者)の試合、グランドキャニオンの観光、ビジネス会議などがターゲットとなっている。

バスケットボールのスティーブ・ナッシュ選手(南アフリカ生まれで、カナダで育った)らが属しているフェニックス・サンズは、メキシコの祝日にあたる5月5日の試合に、ラテンアメリカ系のファン向けイベントで使うジャージを着用することによってSB1070に反対する意思を示した。会場の外でもSB1070反対のデモが行われ、試合の中継でもゲストの元選手たちがアリゾナ州を強く非難した。ナッシュ選手はESPN(スポーツ専門のチャンネル)のインタビューで次のように語っている。「NBAリーグは多文化的だ。選手は世界中から来ており、私のチームメートにも他のチームにも外国人がたくさんいる」(5月6日放送の「デモクラシーナウ」による)。

プロ野球大リーグの労組(選手会)はSB1070反対の声明を発表した。大リーグの選手の27・7%がラテンアメリカ出身であり、多くの選手が自身や家族の問題としてこの問題への関心を表明している。ベネズエラ出身の有力選手は、2011年のオールスターが同州フェニックスで開催されるならボイコットすると表明している。

ロサンゼルス、ミルウォーキー、ボストン、サンフランシスコなどの市議会では、アリゾナ州に対するボイコット(同州との金融取引や同州の企業との取引の中止)を呼びかける決議が準備されている。


Created by staff01. Last modified on 2010-05-19 12:47:27 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について