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LNJ Logo 「変貌する米国労働運動の行方−米国労働運動の課題とその対応−」
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7月26日午後、東京で連合との定期協議のために来日したAFL-CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)会長 ・ジョン・スウィニーが 独立行政法人 労働政策研究・研修機構と連合が共催した国際フォーラム「変貌する米国労働運動の行方−米国労働運動の課題とその対応−」 で講演した。スウィニー会長はブッシュ政権の下で労働者の賃金も福利厚生も最低の悪化した。ブッシュを倒すために脱退した組合とも共闘しつつ中間選挙を頑張りたいと語った。同席したロン・ゲッテルフィンガー UAW(全米自動車労組)会長は、米自動車産業は日本・アジア勢にシェアを奪われ、苦境にあるが、GM,日産、ルノーの提携を真剣に注目していると語った。      (報告:高幣真公)

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「AFL-CIOの挑戦−米国労働運動の課題とその対応」

ジョン・スウィニー AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)会長

 私はブッシュ政権に対して強い危機感を持っている。それは無謀な通商・貿易政策によって世界市場を非常に危険で持続不可能な状況に追いやってきたからだ。それはアメリカの危機であると同時に世界の危機でもある。今年5月の貿易赤字は7千億ドルを越え、その赤字は1日20億ドルを中国や日本から借金しているのと同じである。今や日本と中国で2兆ドルの資産を所有している。これはアメリカの通商政策のほとんどすべての次元での失敗の結果である。

 その結果もたらされたものは、労働者の雇用とコミュニティの破壊であり、平等と民主主義と開発への打撃であり、アメリカとその同盟国の安全保障の危機である。生産者も労働者も世界市場における競争力を失った。その責任はブッシュ政権であり、それが突き進めた盲目的な自由市場・ファンダメンタリズムの結果である。有名な経済学者ポール・サミュエルソンがこれを「雪崩現象」と表現している。

 問題の発生源は言うまでもなくアメリカだが、その解決と犠牲は日本を含めた国際的な協力が求められる。通商政策のダメージはアメリカの労働者とその家族、賃金や健康保険などさまざまな分野に与えている。一方で企業利益やCEOのサラリーは急上昇し、対極にある労働者の貧困との間で歴史的な格差を生み出している。

 ブッシュ政権の過去6年間の通商政策の失敗は、製造業における290万人の雇用減、労働力の17%の減少、製造事業所4万箇所の現象という数字で示される。労働組合に組織された繊維、コンピュータ、機械など主な製造業で軒並み2桁の雇用減になった。その失業者は他の産業でも雇用されされなかった。その結果、賃金、福利厚生、労働諸権利が低下した。それだけではなく関連産業の雇用や賃金も低下さえ、国や地方の税収も減少させた。

 多国籍企業の経営者は言う。多数の労働者や厳しい労働を必要な製造業は海外の低賃金労働者に任せ、アメリカの労働者は専門的な技術を要する産業やサービス産業に移れば良いと。しかし、情報、電気通信、コンピュータ、会計などの職業も軒並み雇用減が起こっている。企業の海外進出とアウトソーシングによって高学歴者の失業が増えている。大学の工学部入学者が減っている。卒業しても就職口がないからだ。

 失業者の50%が貿易に関わる産業で起きている。今や経営者は労働組合が過去に獲得してきた賃金や給付、権益を攻撃している。確定年金や医療給付の廃止や減額の攻撃を拡大している。また、労働者に組合脱退を画策したり、新規の組合加入を妨害している。その結果、アメリカでは組合員数は横ばいであり、組織率は低下している。

 このような貿易不均衡の破壊的な影響は単にアメリカ一国に留まるわけではない。数年遅れて日本もその足跡を追っているのだ。なぜならグローバル経済の瓦解は日本のシステムの破壊につながらない訳がない。「炭鉱に入る時、カナリヤを連れて行け」という格言が正しい。つまり安全確認のためである。

 その警告は今、GMとボーイング社に示されている。ゴーンが日産でやったことは、企業にも国にも破壊的な道筋であった。GM・ニッサン・ルノーの提携問題はその懸念を教える。ボーイングの最新鋭機787ドリームライナーはたいへん好売れ行きである。しかし、ボーイング社が過去5年間に2.5万人の労働者を解雇した。そして、この新鋭機の70%が日本、中国、イタリアで製造される。シアトルで新たに雇用されるのは1800人だけだ。多国籍企業に国境はない。労働者は賃金や労働条件を守るために国際的に協力し、資本の専制を封じ込めなければならない。各国で製造業を防衛しなければ、国の安全保障も守れない。

 多国籍企業が進めるWTOの通商交渉や横暴な通貨操作に対して、労働組合は国際的な基準を作り労働権と環境を防衛していかねばならない。第3世界の労働者の権利も防衛していかねばならない。ブッシュ政権と闘うことはわれわれの労働組合の任務である。われわれは秋の中間選挙を全力で闘い抜くであろう。

 ↓ AFLCIO会長と両副会長
 

<質疑応答>

ロン・ゲッテルフィンガー UAW(全米自動車労組)会長

 アメリカの大手自動車ビッグ3は国内販売シェアをどんどん落とし、05年は56.8%で、ニッサン、トヨタ、ホンダその他アジア系のシェアは36.6%となった。部品の80%を国内・カナダに依存するビッグスリーの凋落はアメリカ経済全体に大きな影響を与えている。またグローバリズム波の下で海外生産への流れも大きな脅威となっている。

↓ ロン・ゲッテルフィンガー UAW(全米自動車労組)会長
 

トーマス・ブッフェンバーガー IAM(国際機械工労組)会長

 グローバリズムはさまざまな問題を日米ともに与えており、来日にしてIMFJCの皆さんとその対策を話し合った。グローバリゼーションを上手く管理して人類に貢献するようにしなければならない。

↓ トーマス・ブッフェンバーガー IAM(国際機械工労組)会長
 

Q1 製造業の海外移転やパートタイマーの増加など労働者に厳しい環境にAFLCIOは如何に対処しているのか?

 J.スゥイニー コスト削減のための非典型雇用の増大は、賃金や福利を低下させる重要な問題だ。そのために第1に、週40時間制など労働基準法を維持し、中流労働者と労働者の社会的地位を守るソーシャル・セイフティ・ネットの構築が課題だ。第2に、北米でも中南米でも通商協定が正しく実行されず、労働者保護の実効がない。すべての国にメリットのある通商協定にしなければならない。そうなっていないから、メキシコから大量の人びとが国境を越えてきているのだ。

↓ ジョン・スウィニー AFLCIO会長
 

Q2 50周年を迎えた大会でAFLCIOは分裂したが、反対派(CTW)との違いは何か、次の大統領選での協力の可能性はあるのか?

 J.スゥイニー 反対派との論点は2つで、組織化戦略と政府改革の路線である。政治プログラムは各組合が作り、全国組織としてのAFLCIOはそれを補完する立場にある。地方レベルでの共闘は徐々に拡大している。また連邦法は労組の政治活動をAFLCIOの組合員であることを前提にしている。統一の重要性は中間選挙に向けて認識されて来ている。分裂の理由はパワーとコントロールだ。早く統一するべきだと思っている。

Q3 GM、ニッサン、ルノーの提携問題にいかに対処するつもりか?

 L・ゲッテルフィンガー JAW(自動車総連)の加藤さんとも話し合ったが、日米共同の課題である。6月第3週に発表された書簡はマスコミを賑わせるものであった。GMとUAWにとっても大きな衝撃である。そして、変更させることは困難だと思う。ダイムラーとクライスラーの合併の経験もあるが、移行に数年間要する。いまだ提携の戦略もそれが労組に与えるインパクトも不明だ。JAWとともに今後大いに注視していきたい。

Q4 5月の移民労働者の雇用保障を要求するデモはたいへん大きな運動であったが、AFLCIOはどのように対応していくのか?

 J.スゥイニー 連合とも議論したが、これは世界的な問題でもある。アメリカにおいて移民法の改正に関わって政治問題化した。ブッシュ政権の移民労働者に対する身分や労働条件、政治対策等で不十分である。われわれ組合は搾取を排除し、すべての労働者が同じ法律を適用され、労働者の権利が保障され、児童労働が禁止されることを目指している。移民労働者がセイフティネットからこぼれることがないようにすべきだ。何故ならアメリカは移民が建国した国であるから。移民も含めてすべての労働者が保護される新しい移民法の早期成立を望む。

Q5 組織率の低下に対するAFLCIOの戦略は?

 J.スゥイニー さまざまなアプローチをしており、毎年数十万人を新たに組織している。その一方で、好条件の賃金、福利を確保してきた一産業において300万人の雇用喪失が起こっている。原因はアウトソーシングと通商政策による生産拠点の海外移転だ。あらたな雇用が生まれているが、低賃金やパートタイマーなどである。現政権の政策と貿易によって雇用は厳しい環境にある。AFLCIOは各産別の組織化を支援しながら、今後も未組織労働者の組織化を大きなテーマとして取り組んでいく。

 L・ゲッテルフィンガー アメリカにおいては組織化は非常に困難だ。労組潰しが大きなビジネスになっている。しかし、労働者は組合に入ることで、企業に対して自由な選択権を持つことができるのだ。 

 T・ブッフェンバーガー アメリカではあらゆる分野で規制緩和が行われた。唯一の例外は労働組合である。世界中の労働者が圧力から解放され、組合の規制緩和が行われたら、現在の産業は成り立たなくなるだろう。その前に企業は組合と団交で話し合うべきである。

  


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