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第7回・チェニジア「ジャスミン革命」の波及力

●さ お り◎チェニジアの「ジャスミン革命」から始まった民衆の反政府運動がアルジェリア、イエメン、ヨルダンからエジプトまで波及しているけど、反失業や物価騰貴反対などの経済的要求が先行していると報道されているね。デモに参加したハムディさん37歳は、「いま声を上げないと、これから妻と娘を食べさせていけない」と、カイロの特派員に訴えたという。車用品店販売員の彼の月給は、1日11時間、週6日働いて、たったの1万3000円。やはり、地中海を越えたヨーロッパ諸国の経済危機とも関係しているのかな?

★オッチャン◇そうだね、2008年から始まった世界恐慌がまだ継続しているということだ。長期化する世界恐慌は昨年、ギリシャの金融危機から始まり、南欧からアイルランドへとEU全域へ波及し、EUとIMFの緊縮財政政策に反対するデモやストライキがギリシャ、ポルトガル、スペイン、アイルランドへと拡大している。これらの闘いは孤立したものでなく連動しているとみていい。いつまたどこで労働者が行動を起こすかわからない。北アフリカの反政府運動も、どこまで拡大していくかわからない。中東全域へと波及する可能性もある。移民受入れ国であるEU諸国と、移民送出し国の北アフリカ諸国の間に、経済的な関係はもちろん、労働者同士の政治的・社会的関係がより緊密なものとなっていることも、今回の民衆蜂起の原因のひとつだと思う。ヨーロッパのストライキ闘争と北アフリカの反政府行動は、グローバリゼーション時代における「大衆ストライキ」の新しい様相なのかもしれないね。

●さ お り◎「大衆ストライキ」って、普通のストライキとちがうの?

★オッチャン◇「大衆ストライキ」の名付け親は、1871年にポーランドに生まれ1919年のドイツ革命で虐殺された革命家ローザ・ルクセンブルクだ。「大衆ストライキ」は、1905年の第一次ロシア革命のときに初めて起きた。1905年革命の「大衆ストライキ」が、1917年の第二次ロシア革命を導いたんだ。

●さ お り◎具体的にはどんなストライキ闘争なの?

★オッチャン◇争議に参加する労働者が一斉にストライキをする、街頭デモをする。それが一回限りのものでなく、数次にわたって何回も何回も繰り返して起こる。ローザによると「大衆ストライキ」とは、「ある時は幅広い波浪のように全土に押し寄せ、ある時は無数の細流に分裂し、ある時は地下深く吸い込まれてしまう」といった労働者の波状的かつ持続的な闘争を表す言葉なんだ。自身も第一次ロシア革命を担ったローザは、現代を「大衆ストライキの時代」と呼んだ。

●さ お り◎でも、第一次ロシア革命といったら100年以上も前のことなのに、いまも「大衆ストライキの時代」といっていいのかな? ソ連も崩壊しちゃったし。

★オッチャン◇ローザのいう「大衆ストライキの時代」とは、「封建制から資本主義的近代へ」とか「資本主義から社会主義への移行期」といった時代規定と同じように、かなり長い歴史的期間にわたるものと考えてほしい。いまもわたしたちは「大衆ストライキの時代」に生きているし、「大衆ストライキ」がいつどこで起こっても不思議でない状況のなかに住んでいる。「大衆ストライキ」は実際にはなかなか起こらない。でも、そういう時代だということを意識することが必要だと思うね。ソ連崩壊という大事件も「資本主義から社会主義への移行期」における社会主義運動の無数の敗北のうちの、決定的ではあるが、ひとつであって、それがなぜ起きたのかを自己批判的に検証していかなくてはね。

●さ お り◎ふーん。ロシア革命以降も「大衆ストライキ」は起こったの?

★オッチャン◇ほぼ年代順にいくつかあげれば、1918〜19年のオーストリア革命、ドイツ革命、ハンガリー革命のとき。20年のイタリアの工場占拠運動。36〜7年のアメリカのシットダウン・ストライキ。日本では敗戦直後の生産管理闘争、60年安保闘争と炭労の闘い。1968年前後のベトナム反戦を契機とした資本主義諸国での反政府運動――とくにフランスの5月革命とイタリアの熱い秋。時代は少し下って、1996〜97年の韓国におけるゼネラル・ストライキ、同時期のフランスの反失業闘争。そして、いまのEU諸国と北アフリカ諸国の闘い。

●さ お り◎「大衆ストライキ」は、労働運動が強くて盛んなところに起きているの?

★オッチャン◇そんなことはない。第一次ロシア革命もそうだったけれど、日本の生産管理闘争も韓国のゼネストも、闘いの過程で労働組合を拡大し強力にしていったんだ。ローザはこうもいっている。「強力な組織がつくられてからでなければ闘争ができないというのは、弁証法を知らぬ、まったくの機械論にすぎない。逆に、組織は闘争そのもののなかで、階級対立についての明確な認識とともに生れてくるのだ」と。「大衆ストライキ」というのは、大衆が直面している日常的な問題の具体的な解決と、資本主義体制の存続そのものへの大衆的挑戦とを結合させた闘争だといっていい。

●さ お り◎日本も含めた東アジアでも、これからの状況しだいで再び「大衆ストライキ」が起きる可能性はあるんだね。

【2011/01/31 通算11回目/転載・引用・援用など、すべて自由】


Created bystaff01. Created on 2011-01-31 11:05:23 / Last modified on 2011-01-31 11:08:21 Copyright: Default

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