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●映画「人生に乾杯!」

俺たちにも明日はあるんだ! いまこそ「老人力」を使うとき

 その昔“怒れる若者たち”という言葉がはやった。中高年のアイドル、綾小路きみまろではないが「あれからうん十年……」。若者たちはいまや怒れる老人たちになりつつある。その走りともいうべき映画が、OECD加盟国で自殺率の一番高いハンガリーから二番目に高い日本にやってきた。ガーボル・ロホニ監督の「人生に乾杯!」がそれだ。

 主人公のエミルは81歳で、寄りそうヒロインも70歳の妻ヘディ。二人が高級車を乗り回し拳銃を突きつけて強盗の旅をする活劇もの―といえばカッコイイが、彼はギックリ腰だし彼女は糖尿病で注射器を手放せない。銃は旧式のトカレフで車はチャイカという社会主義時代の遺物。その時代、若きエミルは党幹部の運転手だった。スパイ容疑で豪邸を捜索したとき、令嬢だったヘディを救ったのが縁で二人は結ばれた。やがて社会は資本主義へ再転換した。それで人々は幸せになったか?

“あれからうん十年”、二人は公営アパートで細々と暮らしていた。そこへ家賃滞納の取り立て人がやってきてしつこくブザーを鳴らす。エミルは息をひそめ、床にはいつくばって隠れたものの腰を痛めて身動きできない。無残。彼らは年金で余生を過ごすはずだったのに、グローバリゼーションの市場経済の波に襲われ、もはや年金だけでは立ちゆかなくなった。その彼がついに立ち上がる。妻の誇りにしていたイヤリングまでが借金のカタにとられたからだ。

 この映画に、かつての「俺たちに明日はない」を連想する人もいよう。が、それと違うのは、強盗をテレビで知った高齢者たちが共感し、デモにまで発展してしまうことだ。

 映画パンフレットで、84歳の俳優、大滝秀治が「こういう生き方があるのか」と「感動」している。年金問題で揺れる日本の高齢者も、怒りをこめて立ち上がれ!―と映画は訴えている!? (木下昌明/「サンデー毎日」2009年6月28日号)

*映画「人生に乾杯!」は6月20日から東京・シネスイッチ銀座でロードショー、ほか全国順次公開 写真(c) M&M Films Ltd.


Created bystaff01. Created on 2009-06-19 11:42:36 / Last modified on 2009-06-19 11:48:10 Copyright: Default

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