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●チャップリンの「モダン・タイムス」「殺人狂時代」
「蟹工船」の次はチャップリン 古典が再び輝き始める「悲劇」

 やれ金融危機だ、大量リストラだと大騒ぎの年の瀬。そんな時代にふさわしい映画がある。チャップリンの「モダン・タイムス」と「殺人狂時代」。そんな古い映画、何度も見ているよ、と一蹴する方にもお薦めしたい。というのも世界恐慌に至った時代の、今日と似たような問題がちゃんととらえられているからだ。

「モダン・タイムス」(1936年)は前半の20分だけでも見るといい。オートメ化さ れた工場を舞台に、現代にそのまま通じる典型的な労働者像がチャップリンのパントマ イムによって浮き彫りにされる。冒頭の大時計シーンから羊の群れとなって工場のタイ ムカードを押していく人々……。

 工場内はテレビなき時代にテレビで監視され、ナット締めのコンベヤーは限りなくス ピードアップが図られ、ついに主人公は過労で発狂してしまう。求められるのはどんな 製品かではなく、いかに時間効率を上げるかだ。その典型が有名な自動食事機のシーン 。これは手を使わない便利さをうたったものではない。食事をしつつ仕事もさせようと する恐るべき機械なのだ。労働者がいかに時間にがんじがらめにされる存在か、ここに 搾り取られる「労働」の残酷な本質がとらえられている。

“現代”とは、実は人々の内面にまで憑依している「労働時間」のことだと分かる。 「殺人狂時代」(47年)は、不況で解雇された元銀行員が、結婚をエサに中年の独身女 性を次々と誘い、殺してカネを奪う物語。まるで銀行業務のように殺人もビジネスと化 していて、奪った札束を数える手つきも出納係そのものだ。

 だが、カネを証券会社に注ぎ込んだものの世界恐慌によって無一文となり、やがて戦 争という巨大ビジネスが始まる―。死刑になる主人公は、彼を裁いた人々にこんなあい さつをする。「またお会いしましょう、近々」と。(木下昌明・「サンデー毎日」08年12月28日号)

写真 : 映画「モダン・タイムス」の一場面。書店の500円DVDコーナーなどで手に入る


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