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現代車非正規職、座り込み解除が急転した理由

「寒さの中、飢えた状態で言論の罵倒に驚いた家族の心配強く」

キム・ヨンウク記者(合同取材チーム) 2010.12.09 20:02

「私たちが座り込みを解いて降りて行けば、あの下のアルバイトが5年、10年後 にまた私たちのように闘うでしょう。」

寒さと空腹、電気が切れた漆黒のような工場、会社側管理者との限りない緊張。 その中で進められた現代車非正規職25日間の蔚山第1工場占拠座り込みは、韓国 社会に大きな話題を投じた。

絶え間ない雇用不安の中で、毎日苦しんできた非正規職が要求したのは、7月 22日大法院が不法派遣と判決した通りに正規職化することだった。しかし非正 規職はついに正規職化を勝ち取れずに座り込みを解いた。

▲9日午前、座り込み組合員が離脱した席はきれいに整理されていた。

座り込み解除は急速に進められた。一番大きな峠だった12月8日の現代車正規職 労組(支部)のストライキ賛否投票は、組合員にとって大きな圧力ではなかった。 当初から、組合員たちは正規職労組の連帯には限界があることをよく知ってい たからだ。また、現代車支部が拡大運営委で先座り込み解除を決めた時も組合員 たちは『今、用役でも公権力でも、本格的な戦いが始まる」と支部への期待を やめた。そして8日から一食も食事が入ってこなくなった。

25日間寝袋もなく寒さと飢えで疲れた組合員に、のりまき1本も切れたのは大き な苦痛だった。実際多くの組合員は闘争するにしても食べなければいけないと いう自嘲混じりの話と共に、当初から支部の意見に従わないのてなら、望まな い断食闘争になるだろうと察していた。

しかし座込場は12月8日の夜に急激に動揺し始めた。すでに覚悟し、食糧搬入の 中断も予告されたが、闘う意志を示していた組合員が崩れたのは、社側の8日座 り込み組合員への損害賠償と仮差押さえ脅迫が座込者の家族を襲ったことだ。 これに組合員たちの空腹が重なり、さらに苦しくなったという。

▲座り込み25日目、非正規職支会は交渉のために電撃的に座り込み解除を決めた。

「私を支持してくれた家族と初めて争った」

第1工場のある組合員は「私たちは損賠や仮差押さえはあまり恐くなかった」と し「だが24日間私を信じて必ず正規職になれと支持してくれた妻や両親の電話 が鳴った」と伝えた。この組合員はその日、初めて妻とけんかした。

エンジン変速機の他の組合員も「今日出た相当数の組合員が損賠仮差押さえで ひどい電話で苦しむのを見た。それでも頑張っていたが一人二人と抜け出た」 と状況を説明した。

実際8日には、会社と一部の正規職代議員からの全方向的な脅迫と懐柔攻勢があっ たと争対委は明らかにした。これに言論で報道された損賠と仮差押さえ、負傷 などを心配した家族の電話攻勢も、大きな心的負担を与えた。第1工場組合員は 「家族はもう正規職化も必要ないから怪我だけせずに出て来いという電話に、 正直、私も座込場を出て行く覚悟をした」と吐露した。

8日夜、組合員の座込場離脱は、午後5時の報告大会でイ・サンス支会長の発言 からも感知された。この日、イ・サンス非正規職支会長は「座込場の状況は難 しいが、闘争を望む仲間がいれば最後まで行く」が、「決断の時期が近付いて くる。決断する時は果敢に決断する」と話した。イ支会長は「個人的に組合員 が血を流すのを見たくない。私たちの闘争は正当だが、血を流してまで、痛み を感じてまで行く理由はない。支会長として、仲間たちが無事に家族のもとに 帰すことで、今後、この労組組織が保存でき、仲間が現場で現場の主人として 立つことができるような、あらゆる方式を悩んで決断する」と明らかにした。

イ支会長はまた「それまでは、苦しくても仲間たちが共にここを死守してほし い」とし「今、いろいろなことが起きている。それでもまだ私たちが最終的に 選択するまで一抹の時間がある。その時まで同僚と励ましあって24日間苦しい 闘争をしたことを再確認し、力強く闘争しよう」と訴えた。

こうしたイ・サンス支会長の発言は、すでに相当数の組合員が揺れていること を感知していたようだ。5時に報告大会が終わり、午後9時30分頃、暗闇の中で 10数人がカバンを持って座込場入口の階段に向かった。もういくつかの事業部 で相当数の組合員が離脱した後だった。この時から指導部は組合員に一日だけ 頑張ろうと説得に入った。そして個別の離脱が続き、11時10分頃また決意大会 を開いた。

この席でイ・サンス支会長は「今から私たちの行動一つ一つが使用者側に口実 を提供する行動になる」とし「使用者側が各種の行為で私たちを分裂させよう としている。私たちがここに上がる時、一つになって上がたように出て行くと きも、一つになって出て行くことで力を発揮できる」と離脱防止を訴えた。イ 支会長は続いて「明日午後、座込場総会を実施して今後の方向を決める。その 時までこの座込場で頑張らなければ、最低でも実現させようとした目的も消え る。明日、何としてでも形式でも交渉窓口を用意する。24日粘ったのだから、 最後になって何も得られないようなことがあってはならない。明日の午後まで 頑張ってほしい」と述べた。一部の組合員はこの日の夜に荷造りを始めた。こ れ以上、座込場維持が難しいかも知れないという事実を直感したのだ。

▲8日午前座込場風景

報告大会が終わった後、ある組合員はその後の事業部別懇談会で「組合員たち の離脱があっても、私だけでも最後まで残る。ここに100人いれば用役も入って こられない。ここであと何日か頑張れば、必ず会社が交渉に出てくる」と組合 員に語った。他の組合員は「3週間が過ぎ、からだも心も疲れた。疲れてしまい、 前は使用者側の携帯メールや脅迫も気にしなかったが、私も今は揺れる。誰か が言っていた。だが私たちの正規職化の熱望が大きければ、答が見えなくても、 もう少し粘れば必ず交渉ができる」と訴えた。

また他の組合員は「昨日今日で特別に状況が変わったのではない。すでに支部 長への期待もない。みんな疲れて苦しんでいて、もう座り込み組合員への損賠 が本当に負担になってきて、精神が疲れた」と分析した。彼は「言論が私たち を悪い奴にした。言論の話だけ聞いて、息子や夫が大変なことになると考えた のだろう。お母さんも今日はひどく癇癪を起こした。座込者だけに損賠を求め るというので正規職になれなくても、そのまま出てこいと言った。私をいつも 信じて支持してくれたお母さんがそうなのに、他人はどうだろうか」とため息 をついた。

座込者の急速な離脱の雰囲気を感じた第1工場のある組合員は、「どうも今回の 闘争はここまでが限界らしい」とし「今、下の私たちの席でアルバイトをして いる学生は、学校を卒業して5年か10年後にまた私たちのように戦うだろう。世 の中はそんなもんだ。みんな非正規職になる」と自嘲混じりの話を吐いた。

残った組合員248人、座り込み死守と解除をめぐり激論の末、全員一致

翌9日午前、座り込み組合員総会に集まった座り込み組合員は248人だった。 当初は200人にもならないと思われた組合員が争対委の離脱中断の呼び掛けを 受け入れて、当初の人員の半分程度が残った。

争対委は総会討論の前に「現在、外の組合員を中に入れる問題は容易ではない。 昨日も多くの同志が入ろうとしたが少数だった。座込場内への食物搬入も難し い。それでも248人がここを守れば守れる。食べ物がなければ断食もある。連れ 出されるという方法もある。こうした状況で、座込場死守を決めるのも、交渉 をするのも、みんなで決めることだ。ただ、どんな決定も、すべての組合員が 結果に従って共に動かなければならない」と訴えた。

総会は支会が会社と交渉し、交渉の結果、座り込み解除を指導部に委任するこ とにした。非正規職支会は座り込み組合員総会で全員一致でこれを決定した。 交渉で『正規職化の成果ある合意が出れば組合員総会をして、座り込みを解除 する』という当初の立場からかなり後退する案で整理された。

この過程で組合員たちは、ひとまず交渉して支会長に座り込み解除を判断する 権限を委任しようという側と、最後まで座り込みを解除せず、社側の侵奪と戦っ て、会社側が前向きに交渉に出てくるまで粘ろうという側が互角に意見を対立 させた。

座り込みで粘ろうというある組合員は「KEC事態を調べたが、あのようになりた くない。座り込み解除を前提に交渉しようという案は、05年の敗北と似たこと になる。これまで戦ったのに、こうした案がでてくることが率直に恥ずかしい」 と座り込みの維持を強調した。他の組合員も「こうした栄光の闘争は夢にも思 わなかった。第4工場のファン・イナ同志が焼身で抵抗し、まだ病床にいる。残 念だがわれわれは空腹と寒さ、使用者側の脅迫と弾圧に苦しんでいる。闘争の 可能性を考えると、座り込み維持に賛成してほしい」と訴えた。

だが座り込み解除を主張した組合員は「戦闘力で行こうというが私たちもこの 目で見た。初めて自尊心と良心で、さまざまな理由で離脱した。今は当然だと 思って出て行くという。空腹のためだと言う。空腹で出て行く組合員と、どう すれば最後まで行けるのか。30日近くいたのは雇用不安のためだった。何のた めに戦うのか考えよう。解雇通知があって自分の仕事がなくなれば、最後まで 行って何が残るのか。最後まで行こうと言うのなら、残る人が何人いるのかを 考えてみろ」と反対した。

シートのある組合員も「この闘争で最後まで行けば何が残るのかという質問が 多いが、自尊心を守ることができ、あるいはあるかもしれないもうひとつの経 路での交渉窓口がありえる」が「しかしそれは、もしを仮定した場合だ。何の 成果も内容もなく、最後にばらばらになって出て行けば、雇用をはじめ、すべ てが保障されなくなるだろう。みんな解雇者闘争になれば、今後の非正規職支 会の存立そのものが難しくなるだろう」と明らかにした。

組合員たちは、座り込み死守と解除をめぐり激しく討論した。しかしすでに、 かなりの組合員が座り込み死守を決めても個別離脱の可能性があると見ている 状態だった。イ・サンス支会長は自身に交渉の過程で座り込み解除を決定する 権限を委任を要請し、組合員たちはこれを受け入れた。そして組合員総会での 委任から一時間ほどで座り込み解除が決定された。

ある組合員は「ひとまず今度は残念ながら座り込みをやめるが、私たちには最 高裁の判決と訴訟がまだ残っている。組合員が法院でまた判決が出てくる時を もうひとつのカードと見ているようだ」と惜しみを表わした。座込場を出たあ る組合員も「今度は残念ながら出て行くが、次にはまた他の工場をいつでも占 拠できるという自信もできた。まだ私たちは切札が残っている」と自信を表わ した。

25日間寒さと空腹に震えた蔚山現代車非正規職組合員たちの座り込みは、ひと まず社側との交渉を前提として一段落した。今回の占拠座り込みは韓国社会に 多くの課題を残した。(蔚山=メディア忠清、蔚山労働ニュース、チャムセサン 合同取材チーム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-12-10 12:55:00 / Last modified on 2010-12-10 12:55:06 Copyright: Default

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