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盧武鉉が裏切ったインターネット、李明博が噛みつく

[李明博時代展望](6) -李明博と情報人権

チャン・ヨギョン(進歩ネットワークセンター)/ 2007年12月22日9時40分

異変はなかった。2002年のような、終盤にたたきつけるようなインターネット の力も見られなかった。BBK動画が出回ったがすでに6月から息を殺していたイ ンターネットは、実名制期間中、ぺったりひざまずいた姿勢を最後まで維持し た。改革派としては残念だっただろう。だがこれは実名制をはじめ、さまざま なインターネットコンテンツ規制政策を導入してきた政府与党が招いたことだ。

盧武鉉はインターネットを裏切った。大統領として当選した時は、盧武鉉後援 会など、インターネットで組織された世論の世話になったし、大統領当選の後 には弾劾反対キャンドル・デモで危機を乗り越えた彼だった。しかし参与政府 が構成された2003年のはじめから、インターネット実名制が推進された。

情報人権運動陣営はその時から実名制反対運動を行ってきたが、毎年状況が悪 化して行った。最もうんざりする点は、一般の大衆が実名制を支持し始めたこ とだ。実名制が実際に誹謗中傷の防止という目的を達成できるのかという合理 的な分析はなかった。実名制の導入で一般国民が失うものについての静かな省 察もなかった。実名制は、利用者追跡を容易にするインターネットシステムを 整備することで、これは国民のためではなく政府とその捜査機関のためのもの だったのだが、一方的な世論が形成された。理由は一つ。「ゴミを見えないよ うにしてくれ」。

いつのまにか、韓国社会で最も重要な価値は、技術的な便宜性になってしまっ たようだ。恐らく新自由主義的な二極化社会で、ますます重苦しくなる暮らし に、前後を振り返る暇もなくなったためだろう。金儲けに飛び回らなければな らない時、交通をマヒさせるだけの集会・デモの権利がちょっと制限したらど うだ、私の駐車空間を侵害してゴミで家周辺の美観を損なう人をCCTVで撮影す るのが何が問題なのか。

労働者民衆には選挙権も与えなかった野蛮なブルジョア的人権論理が今日また 生き返っているようだ。人権は、自分の財産権を擁護する時だけに価値があり、 自分の財産を所有する教養のある市民だけが享受できるのだ。そして自分の実 名を公開して発言することに何の萎縮も感じない主流の存在だけに発言する機 会を与えるという政策を、大衆は淡々と受け入れた。こうした世論が李明博を 選択したのだろう。

李明博の当選は、こんな傾向を強化することを予告する。金大中-盧武鉉政権か ら続いてきた新自由主義的な情報通信政策は、李明博政府の下でさらに露骨に 市場を中心として継承-再編されるだろう。

開発主義を復活させそうな経済大統領の産業政策は、韓半島大運河がよく知ら れているが、IT政策もかなり重く扱われた。朴正煕政権の時と違った産業界の 地形で、今日の経済成長は単なる土建だけでは達成できないからだ。韓半島大 運河にユビキタスIT技術を接続して「未来型Uシティ」を建設するという抱負は こうして出てきた。

李明博のIT政策は「デジタル最強国コリアのためのIT七大戦略」と「国民の苦 情減らす3大IT民生プロジェクト」の公約に集約されている。核心は最近注目さ れているIT融合技術だ。IT新技術産業を成長の動力として投資を呼び、雇用も 増やす計画だ。これは基本的に金大中-盧武鉉政権下のIT政策と特に違わない。

すべての人に発言の機会が与えられたという意味で、一時、インターネットは 反乱のメディアとして脚光を浴びた。だが、最近になっては実に市場従属的な メディアであることがあらわれている。資本主導的なインターネット環境は、 開放的な技術的属性を越える閉鎖的な韓国型ミニホームページと韓国型ポータ ルを誕生させた。世界的なインフラは、世界的な情報/芸能商品の消費者群を形 成し、本来は自由な複製が可能だった情報商品は今、資本の限度の範囲でのみ 利用が許される。もしも消費者が市場秩序をかく乱させる情報共有でもすれば、 政府と市場が一致協力して著作権による摘発を強化してきた。関連産業を育成 するために、個人情報の自己決定権は副次的なものとなり、政府は実名制を義 務化して官民による住民登録番号の収集と利用を拡大した。

世界的な速度で推進されたこうした環境変化の背景には、政府主導の情報化と ベンチャー政策があった。IMFによる韓国経済の危機を突破するために、当時の 金大中政権が万病に効く薬として提示したものが情報化だったのだ。ITベン チャー産業は、景気浮揚策であり、国家競争力であり、さらに失業解消策でも あった。こうした状況の中で、情報人権などが考慮されるはずもなかった。頑 として推進された情報化は、2003年にいわゆるNEIS(教育行政情報システム)の 議論があった時、国民的な抵抗に直面してしばらく停滞したが、大勢は変わら なかった。最近、生体(電子)パスポートの導入をめぐって起きている問題は、 人権ではない。全国民の旅券再発給を前にして電卓をたたく市場の関心が大き い。その他の問題には無関心だけが広まる。

この苦々しい経験が、今後5年間に拡大再生産される可能性が高くなった。特に 李明博当選者が七大戦略と三大プロジェクトで、あれほど強調してやまない放 送と通信の融合環境においては市場的な価値だけが最優先視されれば、国民は 財布を持った野次馬に転落するだろう。ケーブル、衛星、ポータルに至るまで、 メディアのチャンネルは増え続けたが、これだけ多くのチャンネルでそれだけ 多様な少数者の姿は見られず、画一的な芸能情報が反復再生されているだけで はないか。ウェブ2.0の参加的論理さえ、ポータルの市場戦略の中に抱き込まれ てしまったインターネット生態系の境遇から考えて、融合メディアへの国民の 参加と主権ははるかに遠いのかもしれない。

李明博当選者の公約の中にも、個人情報の保護と情報格差の解消という情報人 権的な主題も含まれてはいる。しかし具体的な方案はない。市場政策の中に含 まれているからだ。これも盧武鉉政権と変わらない。個人情報は人権の観点で はなく、住民登録番号流出といった財産権侵害の観点から消極的に扱われ、情 報格差の解消は公共支援ではなくハードウェア、ソフトウェア市場創出の次元 で議論されてきた。

李明博はこれに加え、権利の論理のレトリックを捨て去り、露骨なIT産業戦略 の一環としてこの問題を扱っている。しかし、個人情報保護や情報格差解消を はじめとする情報人権の問題は、市場的な方法で解けるものではない。個人情 報保護委員会の設立と住民登録制度の整備、そして普遍的サービスをはじめと する公共的規制の強力な介入が必要なのだ。

公共規制に逆らう李明博のIT政策は、いわゆるIT民生プロジェクトの公約にも よくあらわれている。IP-TVにより、塾などにかかる費用の軽減、規制緩和によ る通信費用の引き下げなどがそれだ。果たしてIP-TVが塾などにかかる費用を軽 減することができ、規制緩和が通信費を削減できるだろうか? 公共性は眼中に もない市場の政策で公共性を達成するということで、論理的矛盾が感じられる。 公共性の名分も、市場のために動員されたような感じが拭えない。

一方、「安全で逆機能のないITの世の中」のために、移動通信網を利用した社 会安全網を強化し、サイバー暴力に対処するという部分では、他の憂慮が生じ る。李明博の実用政府が押し通す新自由主義的な規制緩和は、企業だけに当て はまる話だ。国民の世論を監視して統制する機能は、技術の支援でこれまでに なる強化されるだろう。インターネットでの北朝鮮掲示物や名誉毀損、インター ネット資料保管などの問題で、これまでハンナラ党が取ってきた立場も規制強 化論だった。

特に、著作権を保護するためのインターネット実名制の拡大実施は、李明博候 補が直接明らかにした政策でもある。ウェブハードとP2P(ファイル共有)サイト で著作権を侵害する利用者を容易に追跡できるようにするという。結局、企業 への規制は弱めるが、一般国民のインターネット利用の規制は強化される。

大統領選挙が終わってわずか数日しかたっていないが、すでに総選挙の前に選 挙法の規制は始まった。いわゆる180日前のUCC禁止である。UCCだけでなくパロ ディ映像も、反論コメント文討論も自制しなければならない。大統領選挙が終 わるとすぐ、またすぐに喉を締められるこの状況が、今後の5年を予告するかの ようだ。資本と、そのための政府、彼らに動員される情報化は、われわれの情 報人権を萎縮させるだろう。情報人権運動の崩れた戦列を整えて、戦いを準備 しなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-12-27 15:54:06 / Last modified on 2007-12-27 15:54:07 Copyright: Default

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