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事例3: 新しい抑圧機制としての知的財産権

ジュチョルファン 共有的知的財産権会合、IPLEFT 【この原稿の内容は「デジタルは自由だ」(以後)の内容を抜すい、要約したものです。】

97年末IMF以後、韓国での最も大きな希望は情報化であった。「情報化大国」 だけが破綻した経済状況で私たちを救う唯一の希望だった。このような情報 通信技術は、私たちに大きな希望と共に、ベンチャー事業の熱風を駆り立て た。既に米国をはじめとする第一世界の諸国家は、このような情報化を通じ て再び途方もない富を集めていて、私たちもいち早く対処しようという挙国 的運動が行われた。煙突産業を越えて、無公害、親環境的生産方式は人類全 体の希望で、新しい潮流のように見なされている。

情報社会は、情報を資源ではなく、一つの商品として把握する。これまで非 資本主義的な領域と考えられていた情報が、今では資本の領域に吸収されて いる。昔の言葉の「本泥棒は泥棒でない」は、本当に昔の言葉になってしまっ た。私が持っている知識を他人と共有する対価として私にお金を支払うこと、 私の知識を使用するのに私の許可を受けなければならないこと、すなわち知 識を生産した者がその権利を譲渡された者だけに、その知識に対する独占的 な権利を行使することが、まさに彼らが言い立てる情報化の姿である。以前 なら、代価なく分けあった知識の所有者を設定しているのである。知識は人 類共同の資産なのに、これに対して誰かが突然、この知識はぼくのものだか らお金を出すようにと言ったとすれば、どうだろうか? しかし、このような ことがおきていることに対して、われわれは特別な拒否感をもたない。あた かも、ずっと前から当然行なわれてきたように、知識に対して独占的所有権 を認めているのだ。このような知識に対する独占的所有権を知的財産権と言 う。知識を財産に認めようとするものだ。また、最近このような知的財産権 の保護範囲は途方もなく拡大していて、国際的な統一規格で私たちに強要さ れており、これはもうひとつの形態の植民地戦争を連想させる。

これに対し、知的財産権のうち最も強力な保護手段である特許を中心に、 その発端過程と問題点を叙述しよう。

特許制度の発達過程

特許制度が私益を強調する過程に変わるのは、情報に対する資本主義の内包 的拡張過程、すなわち、情報が商品化される過程として説明できる。情報を 商品化する過程は、必然的に特許の強化につながる。情報が商品化されるこ とは、情報財が持つ無限な利潤の可能性と、1950年代後半から表れた資本主 義の構造的不安定性にその原因を求められる。既存の産業社会では、エネル ギーと環境を費用要素として考慮しなかった。また、交通渋滞にともなう物 流費用、生産性の高度化にともなう市場の狭小化なども、初期の産業社会で はあまり重要な問題にならなかった。しかし、現在ではこれらすべての問題 が深刻な生産障害要素となっている。したがって、資本はエネルギーや環境 の破壊を最小化し、生産と流通の費用がほとんどかからない情報財という商 品に目を向け始めた。情報通信技術により生産、流通される情報財は、物質 的財貨と違って一度開発費用が投資されれば生産量の増加にともなう限界費 用がほとんど無視できる程に小さく、環境破壊やエネルギー消耗などの問題 もほとんどない。特に情報財の場合、初期開発費用を除けば再生産費用がほ とんどゼロに収斂するため、途方もない利潤が得られるという特徴がある。 【これはMSが売上額の順位では10位にも入らないのに、世界最大の金持ちの 順位の10位中3名がMS職員という事実がこれを証明する。たとえ保有株式の 価値のためだとはいえ、ソフトウェア産業が他の産業に比べて途方もない利 潤をもたらすためだ。】

したがって情報財の生産と販売は、無限な利潤の可能性を含蓄している新し い産業として注目されている。

普通の商品は、単純に言うと商品が市場に投入され、市場で物を売ればそれ に対する利潤が持たらられ、市場で生き残るためにより安くより良い製品に よって超過利潤を得る。

しかし情報財の場合は、資本主義的な生産方式で生産、流通するには多くの 限界が存在する。当初から、このような情報財の場合は一般的な商品とは相 異なる特性を持っているためだ。これは、商品自体に存在する排他的所有権 が情報財には存在しないためだ。例えば、私が靴を一足買っても、この靴を 他人と共有することはできない。もちろん貸すことはできるが、私が自分の 靴を履いている間は他人が私の靴を履けない。靴ばかりでなく、一般的なあ らゆる商品はすべてそうである。しかし情報財は違う。例えば私が持ってい るコンピュータプログラムは一つの情報だ。0と1で作られたこのデジタル情 報商品は、私が使うこの情報財を他人と分けて使うことができる。私がこの 製品をコピーすれば、原本と全く同じ製品を持つことができるのだ。

また、私が友人と分けて使っても、私が使っている商品の質が落ちることは ない。むしろさまざまな人が使えば使うほど、その商品の価値はむしろ増加 するのだが、たとえば「ハングル」というワープロソフトは、一部の人々が 使う時よりも多くの人々が使えば使うほど「ハングル」の価値が一層増加す るのと同じだ。自分がワープロを使おうとする時、数多くの人々が使ってい るワープロを自身も使いたいと思うからだ。【しばらく前にハンコム社が 「ハングル」開発中断を宣言した時、「ハングル」の社会的価値は2兆ウォ ンを越えるという分析が出された。また全国民の「ハングル助ける運動」は、 「ハングル」の社会的価値がそれほど大きかったからだ。またその価値が、 それほど大きな理由は、数多くの人々が「ハングル」を使っているためであ る。】

こういった情報財の特性上、誰かの独占的所有は不可能だった。このような 商品の稀少性が消えれば、水や空気のように資本主義的な商品価値が存在し なくなる。すなわち、あまり多くの資本の価値は消去された商品になってし まうためだ。したがって情報財が市場で商品の価値をもつためには、人為的 な稀少性を作らなければならない。このために、知的財産権という制度を通 じて人為的独占を作り、資本主義的商品の価値をもたせなければならない。 これは、情報財の自由な疎通を妨げ、商品価値を維持しようとするものだ。

知的財産権制度が本格的に世の中の関心を集めたのは、1980年代以後、米国 を中心にした西欧先進国の主張により、知的財産権の全地球的な統一化作業 が始まってからだ。だが、知的財産権制度強化を最も強力に支持した米国も、 1970年代末までは知的財産権制度を通した独占の正当性と効果をめぐって多 くの論議があった。

最も代表的な知的財産権の特許は当時、米国で発明の権利を保護するには非 効率的で虚弱な制度だと認識されていた。その結果、特許を通じて発明に対 する自身の権利を保護しようとする人々による、現在に比べて相対的に小さ かった特許制度を強化するための努力は、反独占法と衝突した。ところが、 1980 年代初め、米国大法院は独占権が特許付与の目的であり、特許とこれ を通じて独占的利潤を得ようとする努力は反独占法に外れないという判決を 相次いで出し、それ以後、議会は特許制度を強化するための各種の法案を承 認し、それまでばらばらに適用されてきた特許制度の統一化を進展させるこ とになる。この時期を過ぎて、米国での特許活動は急速に増加することにな る。【Jaffe, Adam B. (2000), "The U.S. patent system in transition: policy innovation and the innovation process, "Research Policy 29, pp. 532〜533.】

それでは、米国は何のために1980年初めから特許制度強化を政策を変更した のだろうか? 多様な解釈がありえるが、ここでは米国の経済政策と関連し、 その原因を考えてみよう。1970年代初めまで、持続的な経常収支黒字を維持 した米国は、1980年には計1596億ドルという史上最大の貿易赤字を記録した。 こういう状況の中で、米国は自国が競争力を持つ知的財産を新しい武器に登 場させた。すなわち、米国が自国の経済的困難を克服し、産業社会から知識 社会に転換する時代的変化の流れの中で、知識と資本の連係を通じて今後も 自国のヘゲモニーを維持すること願ったことに特許制度の変化の重要な原因 をさがすことができよう。

こうした変化は世界的に広がり、米国などの西欧先進国は、現在彼らが持つ 経済力を土台に、開発途上国と低開発国に対して強制的に貿易関連の知的財 産権協定TRIPsなど、私的財産に関する貿易協定に加入させ、この過程で米 国をはじめとする西欧先進国で使われる基準が他のあらゆる国でも同一に適 用されるように要求している。だが、これは西欧先進国を除く大多数の国家 に対して自国の実情に合わない制度変化を要求することであり、その結果、 現実と制度の乖離から派生した尖鋭な葛藤がおきている。全く同じ制度でも、 運営主体と環境の他にその差を認めない統一化の副作用といえる。

このような知的財産権強化の動きは、1980年のチャクラビティ事件(Diamond v. Chakbrabarty, 447U.S.303)で微生物特許を認めることによって、生命体 に対する特許の道を開いた。続いて米国法院は、翌年の1981年ディアディア 事件(Diamond v. Diehr, 450U.S.175)でソフトウェアアルゴリズムを含む発 明の特許性を認めた。これは1998年のステートストリート事件(State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group Inc.)につながり、 結局、ソフトウェアで実現されるビジネスの手法に対する特許性が米国法院 の支持を受けるようになり、これはインターネットを通したビジネスモデル にまで特許権が拡大される結果を産んだ。また、インターネットのビジネス モデルだけでなく、半導体の配置設計など、素子をどのように配置するかに まで独占的権利を与えようとしている。人間が思考し、開発するあらゆる技 術に対する独占的権利の付与は、人間の知識が蓄積された思考と経験による 人類共同の資産であるという点で、深刻な問題を惹起させるだろう。

特許制度の問題点

情報財が資本主義で一つの商品として認められるために、すなわち、商品に 稀少性を付与するために、資本と権力は情報財に対する自由な複製を制限す るようになる。これは、換言すれば情報を販売可能な商品として、また、支 払能力がある人だけに利用できるように変形させ、情報に商品性を付与する ために情報に対する独占的財産権を認めさせるものだ。このような独占権の 強化は、特許技術の自己矛盾を深刻化させ、情報の疎通性を窒息させている。 現在存在する有用なあらゆる価値に対する独占権を付与し、情報財に対する 自由な利用と交換は、深刻な制限を受けるようになるだろう。情報の特性は、 それを利用する人々が多いほどその価値が増加するが、このような情報財の 固有な特性を除いて自由な疎通を制限し、特許権者に独占的な利益を保障し ようとするのである。そのうち医療技術と手術法に対してさえ、医師は自身 の独占的権利を要求することになるだろうが、これに対する負担により医療 費は増加することになるだろう。既に製薬に対しては、このような傾向が一 般化している。昨年、南ア共和国では自国のAIDS患者に対する治療薬がその 価格により、大部分の国民が治療を受けることができなくなり、強制実施権 を動員して薬を非常に低価格で供給しようとした。しかし、薬に対する独占 的権利である製薬会社の要求によって挫折してしまった。このような特許権 者に対する独占的権利は、相対的に技術の恩恵を享受する一般民衆にその費 用を負担させる結果を持たらす。特許権の拡大と強化は、このような傾向を 引続き増加させるもので、これは資本主義独占の矛盾を一層深刻化している。

特許権者に独占的利益を保障する理由は、それを通じて開発者に創作の動機 を付与し、これを通じて技術の発展を試みるという目的にある。発明者を摸 倣から保護することによって発明者に革新費用を負担する動機を付与し、競 争者が発明を摸倣できないようにすることで開発者に創作者を保護しようと する。また、特許による技術公開を通じて、技術を引続き拡散させるという 目的を持っている。しかし果してそうだろうか? 特許による創作者の保護が、 技術開発を促進させているのだろうか? 前で言及したように、技術開発にと もなう公共の利益と技術開発という開発者の私益の保護は、現在、過度に私 益の権利を保護している。今では一つの技術を開発するためには、数多くの 技術の蓄積が必要だ。ソフトウェアのオペレーティングシステムでは、その コードが数百万から数千万ラインを越えている。これはまた数十万個の小さ な機能を担当するブロックに連結していて、既にこのそれぞれのブロックに は特許がかかっている。今では一つのプログラムを作る時、他の人の特許を 侵害せずに作ることは不可能になった。これに対してストールマンは、プロ グラマーを地雷原を歩いく人にたとえている。自身が引き写す意図が全くな いとしても「一つのプログラムを作るのに、数十万個の地雷を一つも踏まず にやりおおせるだろうか?」と問い直す。また、このような特許は既に多く のプログラマーが新しい機能を作る以前に作られた機能をもう一度作り直す ために、相当な時間を投資しなければならない。既に存在する機能より多少 劣っていても、特許を避けるために反復的で不必要な労働を行なっているの だ。

また、特許制度が確実で過度に認定される最近になっも、相変らず多くの学 者たちは何の金銭的補償や排他的権利を認めない学術雑誌に自分の研究成果 を公開しているという事実から、特許制度がなければ新しい研究はないとい う主張は説得力がないように見える。むしろ、最近の特許制度は自由な研究 成果が共有出来ないように妨害し重複的な研究を強要して産業の発展を阻害 しているのが実情だ。

知的財産権制度の政治的利用事例

知的財産権制度は、経済的抑圧だけでなく、政治的抑圧の機制としても使わ れる。情報の使用に対する排他的権利の利用は、望ましくない人や集団によ る使用を制限する方法として利用され得るためだ。制度的民主主義が比較的 よく整備されている第一世界諸国家において、国家は自身の政治的立場の強 化と民衆の支配のための直接的な検閲をするには多くの限界がある。民衆と 市民団体等の荒い抵抗と議会ロビーを通じてそうした監視と検閲を手段を容 易に資本と権力が持てないように絶えず抵抗するためだ。したがって、彼ら には新しい武器が必要だが、それがまさに知的財産権なのである。資本主義 が成熟した社会では、制度的民主主義の成長と共に、容易に民衆に対する抑 圧機構を直接使うのは多くの困難が存在するが、財産権の概念を導入すれば 矛盾を隠蔽しながら全く異なる接近方式で検閲と監視、排除が行える。民衆 に対する直接の抑圧の代わりに、財産権の行使というもう一つの名前で、す なわち知的財産権を政治的に利用することにより、民衆を抑圧するのだ。し たがって、これらは人間の基本的な権利の上に財産権を動員し、財産権の正 当な行使のために人権を侵害できるという洗練された論理で武装をしている のである。まだ知的財産権を本格的な抑圧の機制としては使われていないが、 その排他的利用という属性上、このような可能性は充分あるだろう。下の事 例はこれを示すものだ。

1980年、ジョージマンスターとリチャードウォルシュは「豪州の国防外交政 策に関する文書 (Documents on Australian Defence and Foreign Policy 1968-1975)」を発行したが、彼らはこの本でベトナム戦争参戦、インドネシ アの東ティモール侵略の発端になった事件、及びその他の政府のさまざまな 備忘録、ブリーフィングとその他文書を転載した。この文書が公開されるこ とで非常に困難な立場に立たされた豪州政府は、刑法と著作権法を主張して 臨時禁止命令を発行するという異例の措置を取り、販売されている本をすべ て押収した。この本の内容を抜すいして掲載した二つの主要日刊紙も、印刷 が中止された。豪州高等法院は刑法を適用しなかったが、政府所有の著作権 により、その資料が保護されなければならないという判決を下ろした。以後、 マンスターとウォルシュはこの情報を提供するために要約と短文引用を使用 して新しく本を製作した。【ブライアンマーティン、「知的財産権に反対す る」「デジタルは自由だ」より、2000】

これとは若干違うが、有名なサイトの名前やロゴを諷刺的な意味に若干変え たパロディサイトに対しても著作権問題が発生した。世界的なコンピュータ マイクロチップ製造会社であるインテルが、自身のコンピュータチップの誤 りを詳細に暴いたインターネットのあるサイトに対して是非を論じた。ロバー トコリンというコンピュータチップデザイナーは、95年からインターネット に「インテルの秘密:インテルが貴方に報せてくれたくないこと (http://www.x86.org)」というタイトルのサイトを作った。コリンが主に上 げる内容は、インテルチップを使うことで発生する問題と、それにともなう コンピュータプログラミング技法等だ。しかしインテル側が最も問題として いるのは、サイトの内容ではなくコリンが「intel」の中で「e」の文字だけ をひっくり返したインテルロゴをホームページのあちこちで題目として使っ ているということだ。中間の「e」の文字が下に降りてくるように描かれて いて、ロゴは単純な会社名ではない芸術作品であり、著作権侵害だと主張し ている【ハンギョレ新聞、1996.7.29】。

しかしこの事件は、インテルとコリンの合意によりこのサイトを閉鎖したが、 類似の事例は発生し続けている。1999年、フォード自動車のある労働者は、 利用者にとって非常に危険な不良を会社側が知っているのに、フォード自動 車は措置を行なわなかったという内容の機密文書を入手し、その内容をウェ ブサイトに掲載した。これに対してフォード自動車は、ISPに著作権違反嫌 疑で抗議し、ISPはサイトを閉鎖した【2000年6月18日、進歩ネットワークが 主催したリチャードストールマン講義の内容。 http://networker.jinbo.net/ stallman.htmlに接続すれば講義内容を realaudioで聞くことができる】という。

一般的に商品不良に対する情報は、利用者が正当に知らされるべき権利に該 当する。このような権利を通じて利用者は正しく商品を選択する自由を持つ のであって、生産者は新しい技術開発の動機を提供してくれる。しかし、著 作権はこのような権利を実に簡単に遮断するものとして作用する。権力は、 自身の排他的権利を利用して自身に不利な内容が一般に公開させないために、 著作権を利用して一般民衆の知る権利を抑圧するようになるのである。

最近、国内では労働運動の弾圧に著作権が利用されている。少し前に浦項製 鉄(以下浦項製鉄)は、サムミ特殊鋼労働者等のアンチポスコホームページ (http://antiposco.nodong.net)がポスコホームページ (http://www.posco.co.kr)のデザインをそのままパロディ化したのは著作権 法違反とし、このホームページ運営者を相手どって図案使用禁止仮処分申請 【仮処分とは、著作権侵害訴訟に対する裁判結果が出される前に著作者の権 利を保護するため、優先的にその侵害行為ができないように法院から臨時に 行われる措置を言う。著作権法で仮処分申請が受入れられたのは、今後の裁 判で原告が勝訴する確率が非常に高いとみるのが一般的だ。】をソウル地方 法院に出した。この仮処分申請で「被申請人はポスコのロゴとポスコのビル ディング背景画面などを使用してはならない」として部分認定決定が下され た。

サムミ特殊鋼は、1997年浦項製鉄の子会社の昌原特殊鋼に引き受ける時、約 245名の三美労働者を解雇した。アンチポスコホームページはこれに抗議し て再雇用を主張する内容で作られた【1997年12月に結局中央労働委員会全員 復職勝訴判決が出され、1999年1月22日、ソウル高等法院から全員元職服職 勝訴判決を勝ち取ったが、浦項製鉄により法執行が履行されずにいる。国際 労働機構(ILO)までが2000年3月31日、理事会雇用継承促求決議をした】。浦 項製鉄側は仮処分申込書で「アンチポスコホームページに含まれる内容が正 しいかどうかと関係なく、会社のホームページのデザインを摸倣したのであ り、これは明白な著作権侵害」だと主張しているが、一般的に著作権は営業 上の不利益があったり競争関係に置かれて深刻な被害を蒙った時に適用され る権利であって、アンチポスコサイトのように非営利目的のサイトには該当 しない。そして、インターネットで世界有数企業のパロディは一般的な表現 形態である。

また、最近は自社に批判的なアンチサイトや労働組合のドメインネームに対 する所有権まですべて会社が持ち、自身に対する批判的な勢力の活動を抑圧 し、外部に追い出そうと試みている。知的財産権に対する強化の傾向は、会 社に対して起きるあらゆる事件や関連文書に対し、すべて自身の所有権を主 張することにより、それに批判する勢力に対してまで自身の所有権を主張し ている実情だ。

これと同様に、表現の自由を遮断するために著作権が適用された例は宗教界 でも起きた。アライアースという人がサイエントロジー(Scientology)【54 年、空想科学小説作家のアメリカ人ドンハーバードが創始・創始し、ロスア ンゼルスに本部をおくサイエントロジーは、71年フランスに根をおろして以 来、被害者等の自殺、集団告訴など、多くの社会的物議をかもした】創始者 の著作物を引用して批評を作成し、これを私設BBSとネットコムというイン ターネットサービス業体を通じてニュースネットニュースグループに掲載し た事件があった。サイエントロジー創始者の著作権を持つ宗教技術センター (Religious Technology Center;以下RTC)は、ネットコム社に対して著作権 侵害嫌疑で告発した。この訴訟でRTCは敗訴したが、ネットコム社がRTCに著 作権侵害を立証する資料を要請した時にその要請を聞き入れたとすれば、ネッ トコム社は寄与責任があると判示したため、いつでも類似の事件が発生して 著作権侵害で表現の自由が遮断される余地を残している。普通、米国の法廷 では、教会の内部文件が教会反対者等により公開された時、その反対者等は 著作権を違反したと判決を下ろすことが一般的だ。しかし皮肉なことに、そ の文件が法律回報に載った時、あるいは法廷訴訟で使われた時は法院は公開 が妥当だと判定している。

この二つの事件はそれぞれ異なる内容だが、一般的に著作権法の論理上の批 判や討論を目的として引用する行為は著作権の例外条項として、利用者等の 「公正な利用(fair use)」の領域でなければならない。しかしそういう点を 無視した法執行の乱発によって著作権法により表現の自由が抑制されている のだ。

一般的に、表現の自由、知る権利、創作の自由など、人間の基本的な権利を 侵害した事件に対しては抵抗の声が社会の内に存在する。特に(新)自由主義 的市民団体がたくさん存在する国ではなおさらである。しかし大部分の(新) 自由主義的市民団体は、著作権により人間の基本権利を侵害した事件に対し ては一貫して沈黙する。まさに著作権は財産権を意味するため、資本主義社 会で人間の基本的権利より優れた私有財産保護の側面から見るためだ。社会 的関係の中で、このような力関係のため、著作権は現在一層拡張されていて、 これによって表現の自由、知る権利など多様な民主主義の要素が著作権によ り縮小調整されている。

しかし、幸いにもインターネットの片方では、創作者であり生産者である労 働者等と情報利用者等の介入が始まっている。米国のACLU (American Civil Liberties Union)、EPIC (the Electronic Privacy Information Center)、 HRW (Human Rights Watch)及びさまざまな人権団体たちで構成された「全地 球的インターネット自由運動」(Global Internet Liberty Campaign)を構成 して、インターネットでこのようなDVD-CSSを著作権を利用した表現の自由 侵害行為と見做してこれに反対するサイトを開設して全世界的な署名運動を 始めている【http://www.gilc.org/speech/DVD-CSS.html】。

アンチポスコホームページに対しては、2000年4月以来、国際進歩通信連合 (APC)の主導でミラーサイト【ミラー(mirror、鏡)サイトという言葉は、ホー ムページに対する内容を全く同じにして外国のコンピュータにそのまま見え るようにしというインターネット技術。普通、検閲されたサイトは、このよ うな方法でミラーサイトを作って闘争する。】を開設し始め、現在(2000年7 月)8か国で11のサイトを開設し、労働弾圧の道具に利用される著作権に反対 して三美労働者たちに対して連帯を表明し、国際的な署名運動も繰広げてい る。そしてあちこちでアンチポスコと類似のパロディサイトが一日いくつも 作られている。

以上、著作権の領域は経済的領域から次第に政治的領域に拡張され、創作者 と生産者の労働者と利用者等の人権まで侵害していることを注意深くみた。 それなら生産者と利用者すべてに悪い結果をもたらす著作権が何故持続的に 強化されて維持されるのか? その秘密は著作権が生産者と利用者等の公的所 有でなく、資本の所有であるためだ。

著作権は情報がデジタル化され、情報の共有が拡張されるという以前の論理 を色褪せさせ、合わせて双方向的ネットワークを著作権保護のために監視す る統制の手段に転落させている。このような傾向は、著作権に対する多様な 抵抗が単に著作権、すなわち財産権の問題に局限されるのではなく、私たち の主体的な暮らしに必須な人権保護のための闘争、民主主義を守るための闘 争、そしてこれを土台として情報の私有化に反対し、最終的に社会化を成し 遂げるための闘争に拡張されていることを意味する。


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