本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:基幹産業労働者には国家責任雇用が必要だ
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1623267808748St...
Status: published
View


基幹産業労働者には国家責任雇用が必要だ

[連続寄稿(3)]船を作る韓進重工業の労働者が国家責任雇用を語る理由

パク・ソンホ(韓進重工業労働者、社会変革労働者党釜山市党合同分会長) 2021.05.20 15:46

[出処:チャムセサン資料写真]

大韓民国造船1番

釜山影島の蓬莱山の裾に造船所がある。 1960年代末までは韓国で最大の造船所だった所だ。 「大韓民国造船1番」、最初のドックがあった所にたてられた石材造形物の文句は ここが韓国造船業の母胎であることを示す。

韓進重工業は1930年代に釜山造船廠という国営企業として設立された 韓国造船技術の元祖企業だ。 現代重工、大宇造船など他の造船所の技術人材のほとんどが韓進重工業から受給された。 建造能力もまた優れていた。 メンブレイン型の天然液化ガス運搬船(LNG船)、 氷河を割って探査活動を支援する砕氷船、 ダム工法でドックよりさらに長い8000TEUコンテナ船を韓国で最初に建造した。 当時、韓国企業が作った最大のコンテナ船だった。 特殊船の部門でもヘリコプター輸送船隊の独島艦と、 韓国で一番大きな軍艦の馬羅島艦を建造した。 特に船体の曲直技術が特に優れていて、 最優秀コンテナ船建造造船所の地位を独占した所がまさに韓進重工業だ。 韓国が世界1位の造船強国に浮上する過程で 韓進重工業労働者の技術が基礎的な役割を果たしたと言えるだろう。

1960年後半、政権が当時国営企業の大韓造船公社、 現在の韓進重工業を民営化して資本に売り払った時、 労働者はこれに反対して全面ストライキで対抗した。 軍部が万事可能な権力を振るっていた時期にも基幹産業の売却に堂々と抵抗した労働者たちだった。 抵抗の結果は残酷だった。 当時の労組執行部は全員警察に連行され、核心幹部は解雇されて路上に追いやられた。

趙南鎬、韓進グループ支配体制の没落

1989年、韓進グループの趙重勲(チョ・ジュンフン)会長は、 安値で大韓造船公社を買収して韓進重工業と名前を変えた。 その後、韓進重工業は10年連続黒字を出し、 趙重勲会長は 息子の趙南鎬(チョ・ナモ)にグループを譲渡した。

韓進重工業の使用者側は去る2004年、 フィリピンのスービックに船舶ブロック工場を建設すると労働者に説明会を開き、 バラ色の展望をならべて2兆ウォンを越える資金を投入した。 その金はすべて釜山影島造船所の労働者の血と汗だった。

2008年、スービック造船所の初船舶の命名式で趙南鎬会長は 「既存の通念を破って新しくて創造的な大きな思考で判断しなければならない、 スービック造船所は韓進重工業が追求するグローバル経営の初の産物であり結実」とし、 身内で祝杯をあげた。 だが幻想に過ぎなかった。 2009年から本格化した造船産業の沈滞は韓進重工業の流動性危機を呼び、 10年経ってまさにその財閥総師2世は空っぽになって戻った。

こうした状況は予想されていた。 趙南鎬会長は、 スービック造船所を建設するとすぐ造船所の人員を建設工員を投入した。 家を作る技術者がどうして突然船を作れると思ったのか? 船をどう作るのかについての最低の知識もなく、 財閥総師2世という理由だけで経営権を振り回した趙南鎬体制の必然的な没落だった。

産業銀行が支配する韓進重工業、総帥一家支配と全く違わない

韓進重工業主債権銀行の産業銀行は2019年3月に株主総会を開き、 韓進重工業の趙南鎬会長とイ・ユニ社長を解任し、 STX造船海洋の社長だったイ・ビョンモを社長に任命した。 初の民営化から50余年が経ち、韓進重工業はまた国家所有になった。

しかし産業銀行は徹底的に投資資金の回収だけに没頭した。 これとともに趙南鎬会長の下で働いた核心労務管理人員をそのまま活用し、 労働者の抵抗を無力化しようとした。 趙南鎬会長の時の積弊経営陣は 労組破壊専門労務法人、創造コンサルティングの諮問を受けて御用労組を建設した。 産業銀行は彼らを前面に出して金属労組をさらに押し倒すつもりだったのだろう。 今でも労務管理者たちは企業労組を動員して会社の売却に同調させる一方、 キム・ジンスク解雇労働者の復職にも反対する立場を出している。

産業銀行の支配は韓進重工業の経営陣にみかけ良い名分を作ってやった。 会社の役員は労働者の要求に対して「何の決定もできない」、 「労働者に良くしてやりたくても産業銀行に要求するのは難しい」という弁解をするのが常だった。 その上、労働組合を訪ねてきて 「労働組合が産業銀行に行って賃金上昇分を受けてくれば賃金を引き上げてやる」とも言った。 産業銀行が支配する韓進重工業ではこうした荒唐無稽な経営が行われている。

産業銀行が支配する韓進重工業労働者の経験は、 同じように産業銀行が支配する大宇造船海洋の労働者の経験と違わない。 大宇造船海洋も国策銀行である産業銀行が運営する国有企業だが、 落下傘経営陣を送り、あらゆる不正を行って配当金だけを取り、 思い切り構造調整した後に現代重工に売り払おうとしている。 このように、国家が所有すること自体で何かが良くなるという保障はない。 韓進重工業を所有した産業銀行は最も苛酷な構造調整の指揮者であり、 同時に最も腐りきった不正の温床だった。

産業銀行が所有するが公企業ではない、ただ構造調整以後にまた売却するための 「国策銀行所有私企業」という経営形態が生んだ結果だ。 経営陣はただ歳月を過ごして高額の年俸を取り、 機会があれば一役して会社をやめれば良いという思考を持つようになるのだ。 それで企業不正が続出し、誰も責任を取らない構造的運営リスクが発生する。

労働者たちは、国家経済に重要な企業が不良経営で倒産すれば、 国家が動いて生命の紐を繋いてくれるということをたびたび経験した。 大宇造船、韓進重工業など多くの基幹産業に血税が投入され、 その過程で実際に国家が経営権を行使してきた。 しかし国家は彼らを公共機関に指定して、公企業にしない。 その上、「国家所有企業」と称することもない。 ただ構造調整後にまた売却するのが目的だからだ。

東部建設が韓進重工業を買おうとする理由

この50年、国家基幹産業を財閥に売り払った結果は何だったか? 総帥一家は腹を肥やし、労働者は解雇と死に追いやられた。 財閥総師が経営を破綻させ、政府と産業銀行はまた「静かに」韓進重工業を国有化した。 そしてまた東部建設に売却しようとしている。

4月15日、産業銀行と8つの銀行で構成された韓進重工業株主協議会は、 東部建設が主導するコンソーシアムと株式売買契約(SPA)を締結した。 これで実態調査および価格調整、政府承認を得て、取り引きが完了する予定だ。 ではなぜ東部建設は韓進重工業を買収しようとしているのだろうか? 良い船を作りたい? 違う。 ただ影島造船所敷地を売却したり、 船を作っていた土地にアパートや商店街を作り、差益を得るためでしかない。

いま、また戦いを始めなければならない。 国家が静かに韓進重工業を国有化してまた売ろうとしている今、 われわれは国有企業、韓進重工業をきちんと統制して運営しようと、 公開で騒々しく要求しなければならない。 韓進重工業をまた民間資本に奪われてはいけない。

国家責任雇用と基幹産業国有化を要求する

構造調整に直面した労働者が戦うのは容易ではない。 使用者側の言葉を信じているからではなく、 本当に会社が苦しいように見えるからだ。 しかし青年たちが失業に苦しむ理由が青年の能力が不足しているからではないのと同じように、 労働者が仕事ができずにクビになるのではない。 全体雇用を増やさなければ青年失業は解消できない。 同じように、総帥一家の手の中でただ彼らの利益のために存在してきた 基幹産業に対する国家的統制なしでは、 基幹産業労働者の雇用保障は不可能だ。 個別資本ではなく産業全体、国家と戦わなければならない。 ちょうど民主労総も11月のゼネスト1番要求に 「雇用危機基幹産業国有化」をかかげている。 民主労総も現場基幹産業労働者も、 こうした要求が空文句で終わらないように努力しなければならない。

文在寅(ムン・ジェイン)政府が公共部門で低賃金短時間雇用ばかり量産したため、 まるで国家は「公共勤労」のような日当制雇用しか作れないかのように認識されている。 違う。 筆者が何度も説明した韓進重工業の歴史でわかるようにだ。 筆者が働いている韓進重工業でも、大宇造船でも、双竜車にしても、 産業銀行はどうであれ売れさえすれば良いという式だ。 問題は「新しい主人」は不況が過ぎて好況局面がきたり、 大量解雇や資産売却により不況局面でも利益を得られる状況でのみ入札に出るということだ。 彼らが入札に動く理由は、不動産投機屋が裁判所の競売を期待しているからのようだ。 いったいいつまで基幹産業が資本の利益のために犠牲になるのか? 船を作るひとりの労働者として、 国家責任雇用と基幹産業国有化を要求する。 また、これが単に要求に終わらず大きな闘いに発展するために、 地域と現場で努力すると明らかにする。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-06-10 04:43:28 / Last modified on 2021-06-10 04:43:32 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について