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「階級の反逆者」、韓国のルーズベルトは誰か?

文在寅の金融連合と大統領選挙、そしてニューディール

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2021.04.07 08:42

「ニューディール」は米国のフランクリン・ルーズベルト(FDR)大統領が出した 一連の経済社会政策をいう。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨年4月、非常経済会議で 「雇用を守るのは生存の問題」とし、 政府に韓国版ニューディール企画団の設置を指示した。 新型コロナのパンデミックによる景気低迷など、大恐慌に対応する国家主導事業だった。 先立って文在寅大統領は自分がロールモデルにしたい人として 米国のルーズベルト大統領に言及した。

だがニューディールはルーズベルト時代には経済的な成果がなかった。 失業率は1930年代ずっと二桁を記録し、 再選以後は経済成長率も落ち、1938年には6.1%まで墜落した。 この時の投資増加率は31.2%だった。 もし1939年に第二次世界大戦が勃発していなければ、 この時に始まった景気低迷は1929年の大恐慌に続き、 さらに深い沈滞につながったかもしれない。

しかしニューディールの政治的成果は大成功だった。 2次ニューディール後の1936年に行われた大統領選挙で ルーズベルトは歴代選挙人集団獲得数2位を記録して再選に成功した。 議会選挙では上院96人のうち76人、下院435人のうち334人で、 民主党歴史上最多の議席を確保し、その後30年の長期政権の土台を形成した。 ルーズベルトのニューディール神話はこのように経済的成功ではなく、政治的成功であり、 ニューディール連合により民主党の再編と共和党の孤立、 そして政治的勝利をつなげて行くことができた。

ニューディール連合でなく金融連合

ではそれなら文在寅のニューディール連合はどうか? 与党では2017年の大統領選挙勝利と2020年の総選挙での共に民主党圧勝が ニューディール連合を通した政党再編と同じ事例だと分析したりもする。 また、朴槿恵(パク・クネ)弾劾キャンドル運動で形成された「キャンドル連合」の連続として、 自分たちの政策に大衆的な同意と支持が確保されたと解釈する。 だが、いわゆるキャンドル連合とニューディール連合は、性格と方向において明確に違う。 また2020年の総選挙は新型コロナ初期に行われ、 これでニューディール連合と同じ政治的構成を語ることができる条件ではない。

文在寅政府のニューディール連合、 すなわち経済復興政策を媒介としたさまざまな階級と階層の政治的連合は、 ほとんど形成されなかった。 他の何よりルーズベルトのニューディール連合は労働者との連帯連合だが、 時代的条件を考慮しても文在寅政府は 既存の支持勢力以外にどんな勢力とも可視的に連合することができなかった。 その理由は、まず2020年の総選挙過程であらわれるように、 正義党、緑色党その上、市民社会陣営などの進歩勢力とも連帯する必要性を感じられなかった独歩的な支持率に対する錯覚と傲慢のためだ。 この支持率は、政府を支持するというよりも、 これを代替する代案勢力の不在によるものだった。

次に、現在、階級的・政治的に進出する女性や環境運動などとも連帯しなかった。 きらびやかなスローガンを掲げた女性政策は、 高位公務員の女性役員の割合が多少上がったこと以外、何も変わらなかった。 その上、自治体長の性暴力事件が続き、 民主党と支持者が2次加害を始め、自ら女性を裏切った。 また、環境部門ではグリーンニューディールという名前を借用しただけで、 「正しい転換」とはほど遠い煙突大企業の転換費用を支援するだけの 「不正義な転換」を打ち出した。

三つ目に、政府の支持者らは抵抗勢力叩きだけに没頭した。 ニューディール連合も労働者のストライキと農民の抵抗デモが続き、 ルーズベルトのニューディール政策と結合するようになった。 だが文在寅政府の支持者は 政府に対するあらゆる批判を政権叩きと認識し、 労働者、女性、貧民の生存権的な要求さえ敵対的に認識して踏みにじろうとした。 一方では文在寅政府との親密さにより、 いつかは政府が親労働、親女性、親環境政策を施行するだろうと期待して闘争を自制した。 まともな問題提起や抵抗をしないのに、 社会問題や社会的主体勢力と認識されることができなかった。

文在寅政府は 可視的な政治連合は形成できなかったが、暗黙的な連合を形成した。 政府の新型コロナ対応とK-ニューディール計画は金融市場を救済・扶養し、 財閥大企業の構造調整と(産業およびエネルギー)転換費用を国家が調達する内容で綴られている。 言い換えれば文在寅政府のニューディール連合は、 労働者-女性-環境-少数者と自由主義者の連合ではなく、 金融資産家-債権者-大株主-ビルのオーナー-財閥と連合した「金融連合」の性格を持つ。 しかし問題は、この連合が暗黙的で黙示的なので、 彼らも政府を積極的に支持しないということだ。

ルーズベルトのニューディール連合

ルーズベルトは任期二回目の日の1933年3月5日、 銀行一時閉鎖と金融取り引き中断措置を施行し、すぐ緊急銀行法を制定した。 1か月後には金本位制度を中断して初めて証券業を規制する連邦証券法と、 投資銀行と商業銀行を分離する「第二回グラス-スティーガル法」を施行した。 金融への統制だけでなく、新しく金融秩序を組んだのだった。 農業を支援し、産業と雇用を増進する法律も制定した。 就任後100日間に行われたこれらすべてを「1次ニューディール」と呼ぶ。

だが、こうした措置にもかかわらず、相変らず失業率は高く、 労働者と農民の経済的現実は変わらなかった。 結局、1934年から労働者は大規模なストライキで抗議し、対抗し始めた。 するとルーズベルトは1935年の社会保障法を始め、 ニューディール連合を形成する政策や立法に本格的に乗り出した。 銀行法、電力持ち株会社法、ワグナー法とも呼ばれる労働三権を保障する連邦労働関係法と 金持ち増税のような税制改革も推進した。 年間5万ドル以上の個人所得に累進率を適用し、 500万ドルを超える高所得には75%の税率を適用した。

このように、ルーズベルトがニューディール連合を形成できた改革立法の基礎は、 (1)金融統制政策、(2)農業農民保護政策、(3)国家主導産業復興および反独占、 (4)福祉と労働権保障政策だった。 これを通じてこれまで保守-南部-白人-キリスト教が主軸だった民主党は、 リベラル(自由主義)-労組(労働者)と農民-都市庶民-黒人-少数民族が参加する 広範囲な自由主義連合、ニューディール連合を形成した。

文在寅政府はどう金融連合を形成したか?

文在寅政府は 新型コロナへの対応としてGDPの13.6%にのぼる260兆ウォン以上を市中に供給した。 そのうち金融市場の浮揚には135兆以上を注ぎ込んだが、 大企業関連の支援金が3分の2に達した。 これとは別に、大企業の構造調整資金を支援するために 基幹産業安定基金40兆ウォンも運用した。 実物被害支援金もほとんどビルのオーナーの賃貸料減免と輸出企業支援に焦点を合わせた。 その上、国家投資と需要振興のためK-ニューディールは、 水素経済、デジタル転換、エネルギー転換事業など、 財閥が独占市場を維持したり新市場を開拓することにほとんどが集中している。 しかし、政府は一般国民と零細自営業者、フリーランサー、特殊雇用労働者など、 コロナで経済的被害を受けた階層にはネズミの尻尾ほどの支援しかしなかった。 全国民と被害階層支援に使った1次〜4次緊急災害支援金の規模はせいぜい44.8兆ウォン水準だ。

このように、金融市場の安定、大企業の支援、ビルのオーナーと不労所得者の支援、 低金利、量的緩和であふれた資金は(不足な)消費支出を越え、 株式、債権、不動産などに押し寄せた。 だが労働者の雇用危機は続き、自営業者らは破産したり1人自営業に転換した。 コロナ危機の状況でも半導体、電子業種など一部の輸出大企業はコロナ特殊を享受して、 非対面、プラットフォーム大企業は市場の外部効果で独占的成長を繰り返した。

特に、資産市場は実物経済から完全に乖離して爆発的な成長をして金をかき集めた。 新型コロナ前よりも画期的に取引量は増え、資産市場の収益率は最高点を打った。 韓国の株式市場上昇率は世界1位だ。 大部分の国家で資産市場は回復を越えて爆発的成長をしたため、 資産家の資産価格上昇はものすごく、 それにより貧富の格差と不平等指数も上昇局面を迎えた。 韓国統計庁の家計金融福祉調査によれば、 純資産ジニ係数が2017年の0.584から2020年0.602に上がり、 純資産上位10%世帯の占有率も41.8%から43.7%に上がった。 この調査は2020年3月末基準、新型コロナ発生初期の結果だ。 2020年末にまた調査をすれば、資産不平等の割合はさらに深刻な水準で現れるだろう。

法制度でも文在寅政府の「連合」がどこに向かっているのかがはっきりあらわれている。 政府・与党はILO中核的協約批准のために国内法体系を整備すると主張したが、 ILO中核的協約批准は影も形もなく、むしろILOの勧告と国際基準に反する方向で労働基本権が改悪された。 週52時間労働制の施行にもかかわらず、 労働柔軟化の拡大と労働基本権の改悪で労働者の人生はさらに疲れ果てた。

公正経済3法改正は、少数株主権を微かながら一部拡大したが、 主に財閥支配構造を合理化・安定化する措置で構成された。 脆弱な支配構造に安全性を加え、 大株主の理事会支配力と私益詐取の手段を維持・拡大し続けることを可能にしたに過ぎなかった。 政府の妥協的態度と財界の執拗なロビーで、 重大災害企業処罰法は多くの抜け道や穴が作られ、「災害企業保護法」という批判まで受けている。

盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は執権後半期に土建族とサムスンに掌握されたと批判された。 文在寅政府も不動産価格暴騰をめぐり似た評価を受けるかもしれない。 流動性の増大により不動産価格が動揺し、雑な需要抑制政策を展開して不動産価格の暴騰が繰り返され、 結局新都市開発という供給対策に急旋回して (公共開発であれ民間開発であれ)開発中心の不動産対策を推進した。 家の価格が上がるため、保証金も家賃も同時に高騰し、無住宅、低所得世帯の負担はさらに加重した。

ルーズベルトよりフーバー

政策の性格で見れば文在寅政府とルーズベルト政府の対応基調は反対だ。 まず、ルーズベルトは金融統制に基づいた金融改革を追求したが、 文在寅は金融市場安定だけを追求した。 また、ルーズベルトは労組法、社会保障法など、 労働者と社会的弱者を強く保護する立法を推進したが、 文在寅政府は非常に貧弱か、 むしろ使用者側に有利な立法をした。 プラットフォーム従事者保護法、家事勤労者法、自営業者国民年金加入拡大などの措置は、 一方では不安定労働者を法的な労働者と認めない内容を含んでおり、 労働者の反発を買っている。

特に金融や独占規制に関してルーズベルトは銀行法、国家産業復興法など、 国家主導産業改革や反独占を拡大するさまざまな措置を施行した。 これにより米国経済の構造改革を試みた。 しかし文在寅政府は 財閥規制に関しては公正取り引き3法のような形式的な措置しか取らず、 K-ニューディール等でさらに独占を強化する事業を進めた。 その結果、政府はコロナ パンデミック局面で縮小され調整されるべき 金融市場と不良大企業を保護し浮揚することにより、さらに大きな危機の種を抱え込んだ。

結局、こうした政府の政策方向は、 ルーズベルト以前のフーバー大統領の政策と同じだ。 1929年3月に任期を始めたフーバー大統領は、その年の10月末に ニューヨーク証券市場の大暴落で始まった「大恐慌」と向き合った。 フーバーはこれを一時的恐慌と見て、いくつかの対策を講じた。 彼が出した危機対応政策は、自国の産業保護のための関税引き上げ、 金本位制を守るための金利引き上げなど、 ほとんど既存の秩序を維持して保護することに片寄っていた。 その結果、恐慌はさらに深刻化して失業と生産縮小で多くの人が苦痛をあじわった。

これにより北部の労働者と農民が反発し、 共和党は自分の政治的基盤を失われた。 1928年の大統領選挙と共に行われた下院議員選挙で共和党は270議席、 万年野党の民主党は164議席を得て、フーバー大統領は安定した政治行為ができた。 だが大恐慌以後、共和党は壊滅に近い成績表を握るしかなく、 権力は民主党に、大統領は民主党のルーズベルトに渡った。 その後、共和党は(2次大戦戦争英雄のアイゼンハワーの執権を除いて) 30年間支離滅裂になって、1960年代に入ってバリー・ゴールドウォーター上院議員が率いる保守主義改革運動を通じ、 党内進歩勢力を追い出して南部地域の男性白人の支持を受けて保守主義に変革した後、 安定した地位についた。

韓国のルーズベルト、「階級の反逆者」は誰か?

ルーズベルト以前の民主党は南部に基盤をおいていたので、 今の共和党と同じように保守的だった。 しかし北部と黒人労働者を基盤にする共和党は、今の民主党と政治指向が似ていた。 ところが民主党のルーズベルトがニューディール連合で選挙で常勝疾走し、 民主党は北部、黒人中心に再編された。 反対に共和党は南部の保守的な白人層に支えるほかはない政治構図が形成された。 ルーズベルトは当時、民主党内部で「階級の反逆者」という声まで聞いて民主党内部を再編した。

新型コロナと政府の対応で資産の不平等は歴史的な水準で行われた。 ジニ係数などの分配指標も悪化し、失業率も高い水準でとどまっている。 特に最近、現政権に対する20代の女性の支持撤回は象徴するところが非常に大きい。 今の状況だけをみれば、ルーズベルトになる機会は国民の力に渡った。 国民の力が現在の状況を利用して強力なニューディール政策で執権し、 労働者-女性-環境-少数者を合わせる政治連合を構成すれば、 また何年か後には民主党と国民の力の政治指向は反対になるかもしれない。 しかし大統領選挙まで1年ほど残す現在、 「反逆者」という声を聞く程に豪胆で感覚がある保守政治家は見つからない。 既存秩序を変えるどころか、相手政党の誤りに頼って反射利益だけを狙う無能な政治勢力でいっぱいだ。 しかしこの状況は、進歩・変革的政治勢力にとってはもうひとつの機会でもある。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-04-14 02:46:07 / Last modified on 2021-04-14 02:46:09 Copyright: Default

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