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「巨大なチェス板」から抜け出す可能性はまだ遠い

[朝鮮半島縄跳び]第52次韓米安保協議会(SCM)、何を残したか?

チャン・ヒェギョン(社会変革労働者党政策委員長) 2020.10.22 07:49

10月の韓米関係、さらに南北関係と東北アジア情勢の行方を判断する重要な会議があった。 10月14日(現地時間)、米国で韓米国防部長官(ソ・ウク国防部長官とエスパー国防部長官)が 第52次韓米安保協議会議(SCM)を開き、共同声明を発表したのだ。 しかし第52次韓米安保協議会議(SCM)の結果の共同声明は深刻な内容が含まれている。

[出処:国防部TV画面キャプチャー]

朝鮮半島非核化から北朝鮮非核化へ

第3項は「朝鮮半島の非核化(北の核廃棄+米国による韓国の核の傘廃棄)」ではなく 「北朝鮮の非核化」という表現を使った。 昨年の共同声明(第51次韓米安保協議会の共同声明)には 「双方は検証可能な方式の朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和定着という共同の目標を達成」すると表現した。 しかし今年は「北朝鮮の完全な非核化と弾道ミサイルプログラムの廃棄による 朝鮮半島の恒久的な平和定着」へと表現が変わった。 こうした変化は非核化の義務を北朝鮮だけに負わせるということで、 板門店南北首脳会談とシンガポール、北米首脳会談で合意した 「朝鮮半島の完全な非核化」から外れる点で退行的だ。

UN司令部の役割認定

第5項には「両国の長官はUN司令部が67年間、 韓半島の平和と安定を成功的に維持することに寄与し、 大韓民国の主権を完全に尊重しつつその任務と課題を遂行していることを確認」したと書いている。 ところでUN司令部は韓半島の平和と安定に寄与するのではなく、これを防いできた。 UN司令部の役割は停戦管理という軍事的役割に限定されているのに、 UN司令部は鉄道連結と南北経済協力など南北交流をことごとに妨害する越権を行使して韓国の主権を侵害してきた。 その上、米国は2014年からUN司令部再活性化プログラムという名前で UN司令部強化措置(組織・会員国・人員拡大など)を取ってきた一方、 2019年からUN司令部を中国を牽制する東アジア版NATOに成長させる可能性まで模索している。 米国は戦時作戦統制権転換後も政治・軍事的上位体のUN司令部を通じ、 韓国軍に対する統制を続ける可能性を模索しているのだ。 それでも政府はUN司令部の役割を認める屈辱的合意をした。

THAAD長期配置の推進

第6項には「星州基地THAAD砲台の安定した駐屯条件を用意するために長期的な計画を構築することにした」という内容が含まれている。 これは現在は臨時配置状態のTHAADを正式に長期配置するということで、 北朝鮮-中国‐ロシアの反発を呼ぶのは明らかだ。 その結果、東北アジアに新冷戦秩序が形成されて 朝鮮半島は米中競争の犠牲になる可能性がさらに高まった。

韓米連合軍事演習の継続を再確認

第8項は 「同盟の対応態勢を強化するために、 韓半島での連合練習および訓練の持続の必要性を再確認」した。 しかし北朝鮮は北米首脳会談とトランプに送った金正恩(キム・ジョンウン)の親書等で、 北朝鮮への威嚇を続ける韓米連合軍事演習を問題視してきた。 これで北朝鮮の核問題解決の入口と言われる いわゆる双方の中断(北核実験中断-韓米連合軍事演習中断)さえ 韓米両国は履行する意志がないことがまた確認された。

五里霧中になった戦時作戦統制権転換と米国製兵器の販売活路確保

文在寅(ムン・ジェイン)政府は任期内に戦時作戦統制権転換を終わらせるという目標をたてたが、もう不可能になった。 第11項で両国は 「両長官は戦時作戦権が未来連合司令部に転換される前に、 相互に合意した条件に基づく戦時作戦統制権転換計画に明示された条件が 十分に満たされなければならないという点を再確認した」と明示したためだ。 つまり、この文句は戦時作戦統制権転換は「時期」よりも「条件」が重要で、 条件の用意に集中すべきだという米国の利害が貫徹されたのだ。 すでに韓米は 「△韓国軍核心軍事能力確保、 △北朝鮮核・ミサイル威嚇対応能力確保、 △戦時作戦統制権転換に符合する安定した朝鮮半島および領域内安保環境充足」の 3種類の「条件」を評価して戦時作戦統制権転換を推進すると合意している。 つまり、今回の合意は予定された結果だと見られる。

さらに「条件充足」は、米国製兵器の販売と連結する。 「エスパー長官は(韓国軍の)補完能力の提供を公約し、 具体的な所要能力および期間を決めるに当たり、 優先的に韓国の獲得計画に対する理解が必要だという点に注目」した。 これに「ソ長官は朝鮮半島の防衛に必要な韓国軍の適切な防衛力量を獲得する大韓民国の公約を再確認」した。 しかし北朝鮮の核/ミサイルが高度化するとますますこれに備えるための防衛力量の基準も高まるほかはない。 したがって、戦時作戦統制権還収のための「条件充足」は、 戦時作戦統制権転換の時期を遅らせ、 米国製兵器の購買を強要する悪循環の輪を作るだけだ。 米国としては「キジも食べて卵も食べる」形だ。

韓米日軍事同盟強化

第7項の「両長官は東北アジアの平和と安定を増進させるために、 情報共有、韓米日安保会議(DTT)を含む高位級政策協議、連合訓練、人的交流活動などの 韓米日3者安保協力を続けることにした」というポイントも眼につく。 これは、韓日関係を事実上の軍事同盟の形にしていこうということだ。 実際、米国は中国を包囲するインド・太平洋戦略を推進し、 今年、米国・インド・日本・オーストラリアの4か国が参加する非公式安保会議体である 「クアッド(日米豪印戦略対話)(Quad)」を公式な国際機構、 すなわちNATO(北大西洋条約機構)のような多者安保同盟として公式機構化する意向を明らかにした。 さらに、これに韓国・ベトナム・ニュージーランドの3か国を加えた 「クアッドプラス」に拡大する意図も示した。 今回の共同声明に 「韓米日3者安保協力持続」が入ったことで、 米国のクアッドプラス構想に弾みがついた。 たとえクアッドプラスに韓国が公式に参加しないとしても、 韓米日軍事同盟の強化は米国の利害によって一次的に左右される 米日韓の序列的な軍事同盟に韓国が編入されることを意味する。

防衛費分担金大幅値上げの可能性

防衛費分担金を大幅に値上げする可能性を残した。 第19項は「エスパー長官は、防衛費分担金特別協定(SMA)が早期に合意に到達できない場合、 現在の協定の空白が同盟の準備態勢に持続的な影響を及ぼす恐れがあることに注目した。 双方は防衛費分担金交渉が公平かつ公正で、相互同意可能な水準で早期に妥結する必要性に共感した」と指摘しているためだ。

駐韓米軍、現水準維持の削除

今回の共同声明の特徴の一つは、2008年以後初めて 「駐韓米軍現水準維持」の文句が削除された点だ。 これは2種類の意味を持つと推定される。 一つは防衛費分担金値上げと駐韓米軍駐屯を連係させ、 韓国への分担金値上げの圧力をかける。 エスパー長官が冒頭発言で 「駐韓米軍の安定的駐屯を保障するために、できるだけ早期の合意が必要だ」と強調したことからこれを推定することができる。 もう一つは「インド太平洋で最大の競争者は中国」という 米国防分野の政策報告書に基づき、 米国防総省がインド太平洋地域の米軍再配置問題を検討していることと関連する。 すでに今年の7月、エスパー長官は「米軍の領域内再配置の重要性」を強調した。 インド太平洋領域内で効率的に中国を封鎖するために米軍を再配置することができ、 その一環として駐韓米軍の一部を削減する可能性があることを示唆した。 しかしこれは保守陣営の憂慮と異なり、 駐韓米軍撤収の一環や駐韓米軍による大韓半島への影響力行使を放棄するものではない。 対中国包囲戦略という大きな戦略の下で駐韓米軍の一部を再配置するもので、 韓国を対中国包囲戦略に引き込む戦略と共に推進されることだからだ。

カーター政府の時に米国外交安保特別補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが書いた本の「巨大なチェス板」にあるように、 米国にとって世界は自分たちが世界を支配するための巨大なチェス板だ。 米国にとって朝鮮半島は、チェス板の一部である東アジア板の中一部で、 韓国は米国が置くチェス板上の駒に過ぎない。

それでも韓国政府は米国の利害が貫徹された共同声明に合意した。 南北関係改善のため諸措置 (韓米連合軍事演習中断、武器システム高度化中断、UN司令部の越権行為反対) から出て行くことができなかった。 THAADの長期配置と韓米日軍事同盟強化に合意して、 米国の対中国封鎖戦略に吸い込まれている。 その具体的な値上額は韓米間の争点だが、 防衛費分担金の値上げそのものの既定事実化に合意して、 米国製兵器を購入することにすることにより、 米国にさらに多くの国民の血税を与えることになった。 戦時作戦統制権還収の条件用意を云々しながら、 戦時作戦統制権転換の時期を延期しようとする米国の利害に詰まって、 文在寅大統領の公約だった任期内戦時作戦統制権還収も遠のいた。

キャンドル政権を自任する現政権の退行を第52次韓米安保協議会(SCM)を通じて、 われわれは再び目撃している。 韓国が米国のチェスゲームから抜け出す可能性も希薄になっている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-11-01 11:16:19 / Last modified on 2020-11-01 11:16:20 Copyright: Default

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