本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:われわれはエイズでは死なない。差別と嫌悪で死ぬ
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1510705475945St...
Status: published
View


われわれはエイズでは死なない。まさにあなたの差別と嫌悪で死ぬ

龍仁の女子中学生、釜山女性エイズ感染者のマスコミ報道に対して送る

ユン・ガブリエルHIV/AIDS人権連帯ナヌリ+代表 2017.11.08 10:39

[出処:ビーマイナー]

最近、韓国社会にエイズの嵐が吹き荒れた。 ヨンインの女子中学生のエイズ感染者(以下感染者)と釜山の女性感染者が性売買して摘発されたという知らせに、 マスコミ各社は刺激的な題名で恐怖を拡散する記事を吐き出した。 まるで誰がもっとはやくエイズの恐怖を助長して嫌悪をあおるのかを競争でもするかのようにね。 これらの記事は問題の本質は無視して彼女たちの行為だけに焦点を合わせ、攻撃した。 コメントも加わり、無知と恐怖、その上、敵がい心まで表わしてヘイトのコメント爆弾を吐き出した。 記事を読んで胸が痛く、それ以上読めなかった。

今、この風景は珍しくない。 いや、むしろ馴染んでしまった。 時間を15年前に遡って映画「君は私の運命」の素材になったあの事件を思い出す。 当時、麗水で女性感染者が性売買をしたという理由でマスコミが沸き立った。 題名も、内容も、コメントも、今と何も違わない。 「麗水エイズ女性、不特定多数と性売買、エイズ拡散憂慮」、 「エイズ感染者の管理に穴」、 「麗水市民、エイズの恐怖に震える」など、 エイズの恐怖を助長する記事には、何かの公式が存在するようだ。 今の記事とそっくりだ。 感染者を見る視点も同じだ。 ほとんどすべての記事が彼女たちを性買収男性のすべてに 「ウイルスを伝播した大逆罪人」と言い募っている。 違う点を見つけようとすれば、麗水が釜山に変わったことだけだ。

15年前にもエイズは治療可能な慢性疾患だった。 15年経った今、エイズ治療はさらに進化して、 養成確診を受けても薬さえちゃんと飲めば50年以上、自然死する時まで生きられるという研究結果が報告されている。 しかし韓国社会は今、36年前に戻った。 エイズ予防法も、治療法もなく、「かかれば死ぬ」恐怖の病気だといっていたあの時期だ。

「金を払って死を買った」という記事は、 本当に無知と恐怖を助長する記事の行き着く果てだった。 言論は事実を報道して正確な情報を提供する責務があるのに、 唯一女性感染者の性売買に関しては理性を失ったように報道した。

少し関心を持って探せば、医学的感染確率や予防法などの情報は簡単に見つかる。 性関係時の感染確率は1%未満で、コンドームを使えばこれはさらに下がる。 感染者が薬を飲み、ウイルスの数値が150以下なら感染の確率は問題にならないほど下がり、 コンドームを使わなくても感染の可能性は薄いという。 身体の構造上、女性が男性に感染させる確率は低く、 男性が女性に感染させる確率の方が高い。 ところが記者はそんな最低の情報確認もしなかったというのか? もし記者がそんな情報らを熟知して記事を書いたのなら、 恐怖を助長するあんな記事は出てこなかっただろう。 いや、少なくとも「金を払って死を買った」という記事は書かなかっただろう。

理性を失った記事には、ほとんど狂奔状態に近いコメントがついた。 まるで中世の魔女狩りのように、彼女たちをギロチンに上げろというような態勢だった。 彼らが狂奔するのはいわゆる「清潔なからだ」を提供しないことに対する怒りが内包されている。 しかし初めから彼女たちの「清潔でないからだ」は、 性を買い予防しない「彼ら」が作り出したのではないのか。 彼女たちはむしろ性売買で疾病にかかった被害者であった。

韓国社会でHIV感染者として暮らすには、烙印と差別、人権侵害に耐えなければならない。 エイズに重ねてつけられた「淫乱」という烙印は、感染者の口をふさいでしまう。 それで不当なことを体験しても「病気にかかった私が罪人」だと言って何も言わずに耐える。 私は、耐えるな、病気にかかったのは罪ではないと説得するが、 堅く閉じられた口は開かない。

エイズ人権活動をしてきたこの14年は、人権はなく恐怖と烙印で存在するエイズを人権の問題として提起しつつ、嫌悪と差別と正面から闘ってきた時間だった。 そうしてエイズにかぶせられた烙印と差別をはがし、人権をかぶせるために苦しい闘争をしてきた。 もちろん成果もあった。 「HIV感染者にも人権があります」という私たちの叫びに応えて連帯する人権活動家が増え、 恐怖を助長して感染者の監視だけを主張した言論も人権問題として接近しながら関心を持ち始めた。 そんな人権活動に力づけられて、感染者当事者が集まるようになり、今では少しずつ口を開き始めた。 しかしエイズの嵐で彼らの口はまた閉じられてしまった。 この長い時間、苦しかったわれわれの闘争も水の泡になってしまいそうで、虚脱でみじめだ。

それでも何百回も騒いだ話をまた言わなければならない。 虚しさに陥った気力をまた絞り出して、絞り出して、叫ぶ。 エイズは伝染力が弱く、感染経路も確実で、予防しやすく、日常生活では伝染しないから、感染者と同じように暮らそうと! さらに腹が立つのは、保健当局がするべきことを感染者当事者がしているということだ。 こうした仕事をするために疾病管理本部ができたが、腕を組んで見物するだけだ。

エイズは恐ろしくない。 治療可能で、薬さえちゃんと飲めば痛いこともないのに、何が恐ろしいのだろうか! 恐ろしいのは烙印と差別だ。 エイズを理由として病気の人の治療を拒否し、働く権利を奪い、 共同体から追い出すなどの差別は、感染者に社会的な死を宣告することと同じだ。 そこに、こうした狂気じみたエイズの記事まで加われば、 「人権」は一刀のもとに飛んでいき、烙印と差別、嫌悪はさらに広がる。

感染者はエイズでは死なない。 まさにこうした社会的な視線が感染者を殺すのだ。 今のような現実に絶望する感染者が、治療を放棄して世の中に背を向けることによってだ。

今、私は人生を諦めずに烙印と差別に抵抗して戦おうと地団駄を踏む。 しかしそんな報道で怒りのあまり死にそうだ。 お願いだから狂気を止めろ。 「人」の問題として、これを見てくれることを願う。[記事提携=ビーマイナー]

付記
この記事はチャムセサン提携報道機関ビーマイナーの文です。

原文(ビーマイナー/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-11-15 09:24:35 / Last modified on 2017-11-15 09:24:38 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について