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4万大学講師の解雇を呼ぶ「講師法」…何が問題か

イム・スングァン韓国非正規教授労組委員長インタビュー

キム・ハンジュ記者 2017.09.12 16:44

8月23日、韓国非正規教授労働組合(韓教組)が世宗市教育部の前で 「時間講師法(高等教育法第14条第2項、第14条の2)」の廃棄と 「政府責任型非正規教授総合対策樹立」のための無期限野宿座り込みに突入した。 2018年1月1日施行される時間講師法が大規模解雇を呼ぶという理由からだ。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は候補の時、 韓教組に「時間講師問題に共感する」というメッセージを送ってきたが、 最終公約には時間講師対策はなく、 過去に非正規教授運動に連帯した金相坤(キム・サンゴン)教育部長官は、 座り込みにも黙々無返答だ。 なぜ時間講師法を廃棄しなければならないのか、 韓教組のイム・スングァン委員長と会って話を聞いた。

[出処:韓国非正規教授労働組合]

非正規教授4万人が解雇の危機

時間講師法による大量解雇はどうして起きるのか?

まず講師法趣旨を先に調べなければならない。 講師法は講師が劣悪な環境に処しているので、 彼らの権利を保障して雇用を安定しようというのが趣旨だ。 だが今、講師法が施行されれば、立法の趣旨と反対の結果を招く。

まず、講師法は講師の処遇を改善する趣旨で提案されたが、 これに関する内容も予算もない。 二つ目、大学が裁量で講師法を適用し、3万人近い講師を解雇する可能性が高い。 三つ目、講師に教員の法的地位を保障すると見られるが、制限された形態だ。 大学は抜け道を作り、むしろ全教員の非正規職化を招く。 われわれは来年から施行される講師法を代表的な教育積弊と見て反対している。

詳しく言えば、講師法で講師が教員になれば「教員の責任時数(1週9時間)」の適用を受ける。 講師は1週間に9時間以上、必ず講義しなければならないという意味だ。 だが今、大学で9時間以上講義する講師は殆どいない。 ほとんど一つか二つの科目を担当し、1週間に5〜6時間の講義をする。 9時間の責任時数もあちこちの大学ではなく、ひとつの大学だけで9時間以上講義しなければ認められない。 こうなると、少数に講義を集めてやり、残りは大量解雇される。 一部の非正規職がとても劣悪だからもっと金を払ってやろうと言って他の非正規職を切るわけだ。 こうした理由で講師法は過去に国会で3回も延期された。

2次的な解雇事態も予想される。 例えば、ある講師が講師法によってA大学で9時間講義して、教員地位の講師になったとしよう。 だがB大学に行くとその人は講師ではない。 A大学にいる時だけ講師だ。 B大学はこの講師に時給を払っても法的問題はないと主張する。 そうなると、すべての大学ができるだけ自分の講師は減らして他の大学の講師を招聘するだろう。 全体講師約6万人のうち、責任時数による1次大量解雇で約3万人が、 2次大量解雇で約1万人が追い出されるだろう。 合計60〜70%の講師が消えることになる。

少数講師に講義を集めれば、彼らは雇用安定は実現するか?

そうではない。 まず、少数のために多数を解雇するのは自家撞着だ。 そして講師法は雇用安定どころか、1年契約の非正規職を量産する。 講師法第14条の2は「任用期間は1年以上にする」と決める。 この数十年間、講師の契約期間は6か月単位だった。 最近になって退職金を受け取る機会を剥奪するため、 私立大を中心に契約期間を4か月に短縮するケースも多い。 だが任用期間が1年以上に延びても、大学は1年契約をして必要な時に延長すればそれまでだ。 あらかじめ2〜3年の契約をする理由はない。 とても短い契約期間は、講義の準備と研究計画の障害だ。 1回当たりの契約期間をさらに長くしなければならない。

「非正規教授、正規教授、学生までも被害を受ける」

講師法が通過した場合、既存の専任教員に被害はないか?

専任教員はさらに多くの講義を多く担当するようになる。 講師法が通過すれば大学は費用削減を試みて講師を減らし、 専任教員に講義をさせるようになる。 最近、大学が専任教員の講義担当率を50%から80%まで上げているが、 この脈絡は講師法の論理と通じる。 自動車生産工場を見れば、非正規職を解雇して正規職に残業手当てを払うようなものだ。

また学校が講師を減らすと、専任教員は非専門分野の講義をすることになる。 どうして自分が知らない分野の講義ができるか。 学生に教材を覚えろというような授業しかできない。 高等教育の質が下がり、学生まで被害を受ける。 その上、学校が講義数を減らすと学生は授業選択権を剥奪され、 学問多様性が破壊される。 講師法で得るものはないのに、失うものはとても多い。

労組は時間講師法廃棄とともに「非定年トラック専任教員制度」、大学評価指標問題も指摘しているが。

非定年トラック専任教員制度は2003年に延世大が初めて導入し、 2004年から急激に広がった教授契約制の一形態だ。 導入当時は1〜3年の短期契約で任用し、その後、再採用(再契約)を1〜3回に制限し、 任期が満了すれば当然退職する時限付きの短期任用制度であった。 2012年に大法院が「私立学校法上、再採用の審査手続きをせずに行った免職処分は違法だ」という判決を出した。 その後、一部の大学は名称を「専門担当トラック」、 「特性化トラック」などと変更したが、 名称がどうであれ、規定上彼らは定年トラック教員には転換されず、 顕著に低い給与で、昇進にも制限を受ける。 金太年(キム・テニョン)議員室(2015年)によれば、 全国78の4年制大学で2011年には2179人だった非定年トラック教員は、 2015年には4379人と2倍増加した。

大学評価指標も非正規教授の運命を社会的他殺に追いやっている。 つまり2年ごとに大学評価が施行される。 大学構造調整のための大学評価指標には、 専任教員確保率、専任教員講義担当割合項目が追加され、 時間講師雇用は2万以上が消えた。 時間講師法が施行されると最低4万人以上がさらに解雇されるものと見られる。 さらに、大学構造改革法が通過すれば韓神大程度の規模の大学は10年間で100校ほど消えるので、 非正規教授もまたその数が半分に減るだろう。

講師法廃止を主張するのなら、非正規教員の生存権はどう保障されるか?

「政府責任型非正規教授総合対策」を実施して、国会に特別委を設置しなければならない。 非正規教授に法的地位を付与する法案を作るという前提で、 処遇改善、職場健康保険適用、退職金支払い、意志決定権、講座開設申請権などの総合対策を樹立しなければならない。 各種の非定年トラック専任教員制度を廃止して、 研究講義教授制度に統合しなければならない。 再契約と報酬基準などを大学に任せず、法律(研究講義教授制度)で生活賃金と雇用安定を保障しなければならない。

最近講師法に関して闘争している大学はあるのか?

非正規教授労組朝鮮大分会が去る6月からストライキをしている。 朝鮮大分会闘争の本質は、使用者側の反労組主義と非正規教授に対する差別だ。 2017年度ではなく、2016年度の賃金団体協議がまだ続いている。 交渉で、学校側は相変らず賃金凍結案を主張している。 学校は教員の号俸を昇級し、職員賃金も3%引上げるが、 唯一非正規教授労組に対してだけは頑張り続けている。 人間として認められるためには戦うほかはない。

[出処:韓国非正規教授労働組合]

文大統領、労政交渉の約束を破棄するか

政権が変わったのに、非正規教授対策は進展がないのか?

無きに等しい。 政権が変わっても大学内の極端な差別は相変わらずだ。 金相坤(キム・サンゴン)長官も講師法問題をすべて知っている。 しかし与野が合意して通過した法案だという理由で3回延期して、誰も責任を取らない。 2012年に民主党の柳基洪(ユ・ギホン)議員、 2013年に民主党の尹官石(ユン・グァンソク)、 2015年にはセヌリ党の姜恩姫(カン・ウンヒ)議員が講師法施行直前に延期案を出した。 数年間、教育部は国会に、国会は教育部に、与党は野党に「爆弾回し」をしている形だ。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領も同じだ。 労組が今回の大統領選挙の時に文在寅キャンプに質疑書を送ると、 「問題に共感する」というメッセージを送ってきた。 しかし最終公約集には非正規教授対策が抜けていた。 われわれは教育部に労政交渉要求文書を送ったが、まともな回答もこなかった。 労政交渉は文在寅政権が民主労総に約束したことだ。

非正規教授労組の今後の闘争方向は?

座り込みは当分続くだろう。 10月には国政監査に対応する闘争を検討している。 国政監査以後は青瓦台闘争拠点も念頭に置いている。 法と予算の問題なので、教育部と国会が主な対象になるほかはない。 今でも大学労組と民教協、平等学父母会が支持声明書を発表するなど、 連帯も広がっており、集中集会も真剣に検討している。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-09-21 21:23:47 / Last modified on 2017-09-21 21:23:50 Copyright: Default

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