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私の友人「ラル」を忘れないでください

「移住労働者も同じ人、人間としての尊厳を持っている」

キム・ジョンヨル(労働健康文化空間新しい場所運営委員・大宇造船現民闘事務局長) 2017.06.20 16:31

ネパールから来た青年、 タパ・チェトリ・ラル・バハドゥル。 略してラル・バウドゥルと呼ぶが、 私は彼を「ラル」と呼ぶ。 ラルと私は友人だ。

私たちの縁は2015年初めの移住労働者テコンドーの会に遡る。 移住労働者の友だちのほとんどがそうだが、 ラルは高強度・長時間労働にいつも疲れていたし、 そんな彼にとってテコンドーの授業は自分が楽しめる唯一の文化生活であり解放区であった。 よほど特別なことがなければ、何とかしてこの会に参加するほど熱心だった。

▲チェトリ・ラル・バハドゥルの姿

そんなラルはの会のたびにいつも肩と腰の痛みを訴えた。 結局、状態が悪化したのか、体調が悪いとして何か月か会を休み、 2016年11月からは姿を見せなかった。

またラルに会ったのは8か月後だった。 久しぶりに会った彼は冷たい遺体になって霊安室に横になっていた。

▲ラルの遺影

2017年6月14日、大宇造船C岸壁4303号線で発生した重大災害の被害者がラルだった。 ラルはこの日の午後1時36分頃、コンテナ船のラッシング・ブリッジ(大型コンテナ積載を固定する鉄の構造物)の塗装作業のために最上部に移動しようとして7〜8メートル下に転落した。 事故の直後には右顔面陥没、肩骨折、大腿部骨折とすい臓、肝臓の損傷でかろうじて命はあった。 急いで釜山大学病院外傷センターに移送されたが脳死状態で、 6月15日午前2時30分、事故発生から半日で死亡判定を受けた。 ラルは遠い異国の地で息をひきとった。

ラルの事故の知らせを聞くとすぐ、いつも肩や腰の痛みを訴えていた彼の姿が思い出された。 当時、ラルの労働時間は月400時間を越えており、しばしば会を休んだ理由も遅くまで残業をしたためだ。 もちろん体調が良くない時もあったが、造船業が一番好調だった2009年からパワー工(仕上工)として 殺人的な搾取を受けてきたので体調がいいはずがなかった。

しかし会社は事故原因を 「垂直はしご移動時3点不支持」、 「引揚げロープ不使用」だとし、 個人なミスとして片付けた。 果たして事実だろうか?

▲ラルのカカオトーク状態メッセージ

▲ラルのカカオトーク状態メッセージ

「元請が産業安全保健法を守っていればラルは死ななかった」

死亡事故が発生した4303号コンテナ船は、6月14日(事故当日)船主に引き渡す予定だったが、 どんな理由だったのか17日に日程が延期された。 それだけ仕上工程が差し迫っていたのだろう。 また大宇造船は会社が苦しいという理由でいつよりも生産性に血眼になっており、 死亡事故は十分に予告された人災であることを推論させる。

それだけではない。 ラルは少なくともテコンドーの会に参加するまでは、明らかにパワー工だった。 そんな彼が塗装作業をして墜落した。 いったいなぜ? 何の理由で? いつ塗装(ペンキ)に変わったのか?

ネパールの友人Sの陳述によれば、ラルは肩の痛みを訴え続け、もう仕上げ作業ができないと言って役職変更を要請した (当然労災申請で治療を受けるべきだが、 下請労働者にとって労災はすぐブラックリスト登録で解雇だ)。

今年の初めに休暇で出かけたラルは、ネパールで肩の治療を受けたという。 職種が変更された正確な日は分からないが、 休暇前後と見れば塗装作業を始めてから長くても6か月しかならない。

もちろん塗装作業も決して楽な仕事ではない。 しかし筋骨格系疾患で身体がめちゃくちゃになったラルに、 はしごに登って腕を肩以上に上げるペイント工の作業をさせたということは、 彼を死に追いやった殺人行為そのものだ。

2人1組の危険な作業だったが、彼は一人で仕事をしていて被害に遭った。 2メートル以上の高所作業をする時、 会社は墜落防止のための安全措置をしなければならないが、 事故が起きたラッシング・ブリッジには網も、踏み台も、ライフラインもなかった。 これは当然、元請の大宇造船海洋に責任がある。 元請が産業安全保健法を守っていれば、彼は死ななかった。

▲ラルを追慕するために集まったネパールの労働者たち。大宇造船ドンチャン食堂の前

危険な仕事を拒否できず、言われるままやるしかないという制度的な問題も彼を死に追いやった。 まさに雇用許可制と呼ばれる現代版奴隷制だ。 より良い条件、安全な会社に離職したくても、社長の許しがなければ移動できない。 もし自分の権利を要求して嫌われれば未登録者になって、 強制追放されるかもしれないので、彼らには選択の余地がない。

全てをあわせて見れば、ラルの死は結局国家と資本の貪欲による予告された殺人だ。 人が死んでもせいぜい何十から何百万ウォンの罰金で軽い処罰に終わるので、 企業主は安全費用を支出する必要がなく、 国家は企業のためだけの雇用許可制で移住労働者を弾圧する構造が繰返される。 生命より利益を追求する労災共和国、大韓民国の積弊がラルを殺したのだ。

「人のアイデンティティは肌の色や腎臓色ではありません。 人のアイデンティティは心と考え方で定義されます。」

ラルは幼い娘と妊娠した妻をおいて再び戻ることができない遠い所に行った。 私たちもあなたと同じ人であり、人間としての尊厳を持っていると話した彼であった。

ぜひ労災のない世の中で ゆっくり休んでください! (ラルを記憶する皆にこの映像を捧げます)

付記
この文は慶南労働者民衆行動ブログ『筆箱』と巨済ニュース広場にも共に掲載されました。写真は書いた人キム・ジョンヨルさんです。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-23 20:42:41 / Last modified on 2017-06-23 20:47:49 Copyright: Default

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