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イエメン難民申請者が韓国政府に対してデモを準備

難民認定をアピール...「帰れば死ぬということがわかりませんか?」

チャムセサン編集チーム 2016.09.13 21:49

「家族と会いたい。本当に」。 イエメンを離れてもう3年になったムハンマド・アリ(仮名)氏が韓国語でぽつりぽつりと話した。 2時間近く続いたインタビューの途中、秋夕を控えて出てきた家族の話に涙を流した。 彼の同僚アルバイトのナニー・サルレ(仮名)氏は 「いつか戦争が終わって帰れるようになれば、 『韓国の政府と人たちが私を助けてくれたんだなあ、私と一緒にしたんだなあ』と思えるようになればうれしい」と語った。

9月8日、ソウル市安国洞の公益法センターアピールの事務室で会った30代初めのイエメン青年二人。 彼らは300人ほどのイエメン出身難民申請者を代表して、韓国の言論に初めて口を開いた。 イエメン難民地位申請者たちは現在、韓国政府に対する集会を計画している。 難民申請者の人権保障と難民地位認定を訴えるための努力だ。

イエメン内戦20か月...死亡者だけで1万人

イエメンでは現在20か月近く内戦が続いている。 2011年のアラブの春の余波で起きた革命の後に続いた政治勢力間紛争の中で、 地域の列強が介入したことで起きたことだ。 2014年、フーシ反乱軍は政府が政府側勢力中心の連邦制案を曲げなかったため武力示威を始めて首都を掌握し、 続いて2015年3月、サウジアラビアが主導する連合軍が政府側で対応攻撃を始めて戦争は始まった。 連合軍にはサウジとアラブ首長国連邦、クウェート、カタールなどが参加している。 米国と英国、フランスとトルコの支援も受けている。 アルカイダのアラビア半島支部もまたイエメン中部と海岸一帯を掌握しており、自称イスラム国(IS)も内戦に加勢している。

イエメン内戦はシリア内戦ほどに惨めだ。 8月25日に国連が発表したイエメン内戦報告書によれば、内戦が始まってから8月までに、 3799人の民間人をはじめ約1万人が戦争で死亡した。 民間人死亡者の60%はサウジが主導する連合軍の空襲の犠牲になった。 民間人被害はこれだけでは終わらない。 イエメンの人口2600万人のうち300万人が避難し、このうち2万人は海外をさまよっている。 1400万人以上は食べ物が不足して苦しんでいて、さらに700万人は栄養不足の状態だ。

民間人被害は想像を超える。 8月に国連が「サウジ主導連合軍の攻撃により、結婚式場と市場、学校と病院でも民間人犠牲者が出た」とし 「このような攻撃は、軍事的目標が何だったのかわからなかった」と非難するほどであった。 連合軍は世界で100以上の国家が禁じている米国産クラスター爆弾で民間人を攻撃した。 昨年5月以来、米国の人権団体ヒューマンライツウォッチなどはこれを何度も非難した。 連合軍は昨年10月には国境なき医師団が管轄する病院も爆撃した。

しかしこうした内戦と民間人の被害状況はあまり伝えられていない。 米国国家安保局(NSA)の大衆監聴プログラムの存在を暴露したグレン・グリーンウォルドが昨年、インターセプトに 「罪のないイエメン人の死は、米国政府とその前提的な同盟の手で強行されているので、 米国のマスコミはいかなる犠牲者についても報道しないのは自明だ」と指摘した内容と同じだ。 米国の中東政策に追従する韓国政府と主流言論の立場も違わない。

シリアと似たイエメン内戦

イエメン内戦の実状が隠蔽され、被害を受ける人々は、無残に死んでいくイエメン現地人だけではない。 世界のあちこちに散った難民、そして生きるために韓国まで避難しなければならなかったイエメン難民も同じ境遇だ。

アリ氏は「私たちの状況はシリアと同じ水準です。 マスコミはシリア内戦についてはいかに深刻かをよく伝えるが、 イエメンについては何の関心もありません。 内戦が本当に深刻なのに、なぜ韓国政府は私たちの難民申請を拒否するのかわかりません」と話した。

アリ氏は2013年6月に韓国にきた。 2002年、韓国でワールドカップが開催された時に受けた印象が良かったという。 だが出入国管理所に行って難民申請をした時、韓国の人々はTVで見た彼らとは違っていた。 彼らは自分たちを獣のように扱ったという。 「出入国管理所の人たちは私たちを獣のように見ました。 人種主義者でした」。 彼もイエメンではコンピュータ工学を専攻した前途有望な青年だった。 卒業後には6か月の職場生活もした。 だが革命の後に政局がまた不安定になり、難民になった。 「2004年からフーシ反乱軍が政府と戦い始めました。 2011年まで7回の戦争がありました。 この戦争のために多くの人々が死にました。 2011年には生存できないほどに物価が上がり、革命が起きました。 革命の後、全てが変わりましたが、また戦争で落ち込みました。 とうてい暮らせる国ではありませんでした。」

サルレ氏は2014年初めに韓国を訪れた。 彼はフーシ軍と戦わなければならなかった軍人だったが、政府に捨てられたという。 「2006年に2か月間訓練を受けて戦闘に投入されました。 50人が7万人もの反乱軍と戦わなければなりませんでした。 その時、同僚の軍人2人が死んだのに政府は何も助けてくれかったのです。 母がいる故郷に避難しましたが、反乱軍が掌握していたのでマレーシアに発ちました。 ここで8年を過ごしました。 結局、とても家族と会いたくて、母の引き止めにもかかわらず故郷を訪れたが、反乱軍の勢いはさらに大きくなっていました。 それでまたインドネシアに逃げたのですが、ここも安全ではなく、韓国を訪れることになりました」。 彼の家族は現在、エジプト、サウジ、米国と、全員がばらばらに散っている。 彼の息子もインドネシアにいる。

「政府が難民相手に商売している」

二人の難民は、韓国政府に難民申請をして待機している。 戦争の危険から逃げてきたが、二人とも3年近く難民の地位を認められずにいる。 2013年に制定された難民法により、難民は難民認定されなければ、 法務部に対して行政訴訟ができるようになったが、 問題は時間もかかり、多くの費用もかかるということだ。

アリ氏は「地方法院、大法院まで行くたびに数十万ウォンかかります。 弁護士費用、翻訳料と通訳費、交通費などは、私たちにはとても払えない金額です。 私は昨年約300万ウォンを使わなければなりませんでした」と吐露した。 サルレ氏も「最近2か月間、仕事が出来ずに一か月の家賃も払えませんでした。 しかしすぐ明日裁判があるので、友人から金を借りました。 政府はまるで難民に商売をしているようです」と愚痴った。

雇用も不安定な状況で、難民にとってこうした金額は大きな負担にならざるをえない。 サルレ氏は記者にオーストラリアに亡命して、難民の地位を認められた友人の写真を見せて、 オーストラリアでは難民申請者に就職するまで毎月約1000ドルを支援しているという。 写真の中の友人は難民認定訴訟のために困難を味わっているサルレ氏に 「なぜ難民が金を払わなければならないのか?」と尋ねた。 韓国では難民申請後、6か月経てば働くことが出来る。 だが身分が不安定な彼らが安定した良い雇用を得るのは、当初から不可能なことだ。

アリ氏もサルレ氏も、そのように約束なく働いた。 単純な日雇いアルバイトもして、工場で働いた。 すべて賃金も少なく、労働契約もなかった。 サルレ氏は「働こうとして工場に行き、難民申請者だと言うと『帰れ、帰れ』と言われ、そのまま帰るように言われました」と話した。 仕事をする時は普通12-13時間程度で、夜昼交代で働く時もあったという。 工場で事故がおきれば友人のカンパで治療費にしたり、運が良ければ政府が20%程度を補助したりもしたと伝えた。

雇用は不安定だったが、彼らにとってさらに大きい傷になったのは、人格的な冒涜だった。 サルレ氏は「社長だけでなく、職員すべてが私たちを人扱いしません。 毎日『この野郎』と呼びます。 『さっさとやれ』という言葉と一緒です」と話した。 アリ氏も似た経験を語った。 「働いて家に帰ると、工場でのでき事のために眠れませんでした。 内戦で家族と一緒にいらず、ただでさえ大変で孤独で悲しいのに、 工場に行くとみんなが毎日のように悪口を言うのですからとても苦痛です。 人間的に生きたいと逃げてきたのに、イエメンよりひどい生活を送っています。 まるで監獄のようです」。

「帰れば死ぬということがわかりませんか?」

アリ氏は当初、韓国政府に大きいなことを期待はしていなかった。 「韓国語教育や職業または文化に関する教育を受けることができました。 しかし何も提起されませんでした。 本当に大きいことは望みませんでした。 むしろ医療保険もなく、病院に行けばさらに多くの金を払わなければなりません」。 サルレ氏も「韓国は安全な国だが、難民に対してだけは人間的な待遇をしません。 私たちをまるで虫けらのように扱います。 韓国の人々も内戦で難民になった経験があるから、私たちを喜んで受け入れてくれるだろうと考えていました。 トルコは数百万人の難民を受け入れましたが、ここではイエメン難民申請者はせいぜい300人ぐらいでしょう」と話した。

現在、彼らは韓国政府に対して難民認定を訴えるための集会を準備している。 イエメン出身の難民申請者約100人が参加の意思を明らかにした。 同じ人間として扱って欲しいというメッセージを韓国政府に訴えることが集会の目的だ。 また韓国の人々がイエメンがどんな危機に置かれているのかを知らせたいとも言う。

アリ氏は難民の人権だけでなく、テロを防ぐためにも韓国政府の役割は重要だという。 「韓国政府が北朝鮮に対しては韓国を尊重せずに核開発すると非難しながら、どうして私たちにはこんなに侮辱して尊重しないのか、 どうしてそんなことが出来るのかわかりません。 しかし政府が難民を拒否すれば、ISが喜ぶだけです。 もし戦争で満ちた世の中で家族が飢えていたら、果たしてどうしますか? 韓国の人々は、イエメンの戦争について、もっと関心を持ってほしい。」

内戦勃発からほぼ2年になるイエメン。 毎日13人が戦争に死んでいく苦痛は、こうして韓国でも続いていた。 アリ氏はインタビューを終えながら、韓国政府が難民申請を認めずに発行した二か月出国猶予と書かれた友人のパスポートの写真を見せた。 彼は「帰れば死ぬということを知っているのに、なぜ帰れと言うのですか?」と尋ねた。 出国通知書を受けた難民申請者の気持ちはどうだろうか? 韓国政府は彼らに死亡通知書を渡しているのではないだろうか?

この日のインタビューは、公益法センターアピールの支援で行われた。 通訳はアピールのインターン、イ・ドンギュが手伝った。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-09-20 20:34:53 / Last modified on 2016-09-20 20:34:54 Copyright: Default

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