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産業団地構造高度化は不動産再開発

[非正規職の世の中を見る]公団ニュータウン法、その実状と弊害

ユン・ジヨン(公益人権法財団共感弁護士、全国不安定労働撤廃連帯法律委員) 2015.10.07 11:16

以前は工団、今では産団(産業団地)と呼ばれる所が全国に1082か所ある(2015年1分期基準)。 2015年の1分期だけで244兆以上の生産活動が産業団地で行われた。 産業団地に入居する企業は8万1千社ほどに達し、2百万以上の人々が産業団地で働いている。 特に10人以上の製造業に従事する労働者の35%が産業団地で働いている。 産業団地はおそらく大韓民国の産業、中でも製造業と雇用の根幹だと言える。 ところが産業団地も年を取る。 初めて出来た時から50年の歳月が流れた。 古く老朽化した産業団地は活力を失っている。 また産業団地に活力を吹き込み、働きがいのある空間にすることは、政府と国会の役割だ。

しかしこれまで国会と政府は誤った処方をしてきた。 表面では老朽化した産業団地の整備だが、内容を見れば産業団地の色を奪う不動産再開発と違わなかった。 ここに決定打を飛ばしたのは、昨年12月9日に作られた 「老朽拠点産業団地の活力増進および競争力強化のための特別法(以下「産業団地構造高度化特別法」)」だ。

製造業の萎縮と労働者の生活の質の低下

産業団地構造高度化特別法の最初の問題は、規制緩和にある。 国家主導の産業政策によって既存の産業団地関連法令は、 製造業者への工場の土地の提供と入居企業の厳格な管理に焦点が合わされていた。 しかし国会と政府は産業団地の規制をますます緩和し、 産業団地構造高度化特別法はその決定版だといえる。 無分別な土地開発と建築を防ぐために「国土の計画および利用に関する法律」は、 用途地域別の建蔽率と容積率の限度を設定し、 該当地方自治体の条例で建蔽率と容積率を決めるとしているが、 産業団地構造高度化特別法は条例にこだわらずに建蔽率と容積率を緩和し、 事業を施行できるように決めている。 また、産業団地構造高度化特別法は、いかなる企業や施設でも産業団地に入れるようにしている。 産業団地構造高度化特別法によって事業計画の承認を受ければ、28本の法律の許認可が擬制処理されるが、 その中には「流通産業発展法」第8条による大規模店舗の開設登録や「観光振興法」第52条による観光地および観光団地の指定も含まれている。 デパート、大型流通スーパー、観光地まで、産業団地に入れるということだ。

非製造業者が産業団地に入ると製造業は萎縮するほかはない。 入居できる企業と施設の幅が広がれば、入居希望企業間の競争が激しくなる。 それと共に、不動産価格は自然に上昇し、既存の製造業者は不動産売買により利益を得て産業団地から出て行くことになるのだ。 また資本を持つ企業等(デパート、大型流通業者、劇場など)が産業団地に入る代わりに、本当の生産をしようとする企業は進入そのものが難しくなる。 一方、産業団地本来の趣旨も色あせるほかはない。 産業の特化を阻害し、人員派遣業者、賃貸業者など低質の企業の入居により産業団地が空洞化する可能性も排除できない。 これに対して国会と政府は高付加価値化産業に転換すべきだという点に言及する。 IT、情報通信業種で産業団地の業種を再編するというが、 これは結局、製造業放棄に違わない。 製造業を放棄すれば製造業に従事する多くの労働者は職場を失うことになる。 国会と政府は、工場で働いていた人々はデパートの販売職員になればいいと考えているのだろうか。

これに加えて、産業団地の中に住居施設の設置も可能になれば、労働者の暮らしはさらに苦しくなるしかない。 もちろん近距離に住居空間と職場があるということは便利に思われる。 政府もこうした理由で職場と同じ空間に住居施設と商業施設を持ってくるということだ。 しかし、工業地域、住居地域、商業地域などの分離は、団地造成の原則だ。 これらの地域はそれぞれの固有な目的を持っているためだ。 住居地域は居住の安寧と健全な生活環境の保護のために必要で、 商業地域は商業や業務の便益を増進するために必要で、 工業地域は工業の便益を増進するために必要だから、 これに合わせた配置と構成が必要だ。 職場と住居が混在すると労働者の仕事と家庭も分離できず、労働者は快適ではない住居環境で暮らすことになる。

実状は公団ニュータウン政策

次のような点で、 産業団地構造高度化特別法は産業団地という不動産の再開発のための法だといっても過言ではない。

まず産業団地構造高度化特別法は、開発事業の範囲を大幅に拡大した。 産業団地構造高度化特別法が具体的な事業として上げているものは、 「駅勢圏の開発および利用に関する法律」第2条第2号による駅勢圏開発事業と 「港湾法」第2条第8号による港湾再開発事業がある。 駅勢圏開発や港湾再開発は、老朽化した産業団地の再開発整備とは関係がない。 たとえ産業団地内に鉄道駅や港湾が存在していても、 鉄道の駅や港湾の周辺地域に住居、教育、保健、福祉、観光、文化、商業、体育などの機能を持つ団地の造成や施設の設置のために施行する事業は、 産業団地の機能向上とは何の関係もない。 駅勢圏開発事業や港湾再開発事業が必要な時は、該当法令により推進すれば良い。 それにもかかわらず、こうした事業が産業団地構造高度化特別法に入ってきたのは、 結局、老朽化した産業団地の競争力を強化するという名分で、 事実上、産業団地という位置づけの包括的な再開発を試みようとするためだ。 産業団地構造高度化特別法の下で、産業団地の機能はあまり考慮すべき事項ではない。 ただ産業団地を含む該当地域の再開発が重要なだけだ。

また産業団地構造高度化特別法は、 民間の営利事業者が再開発事業を施行できるとしている。 また、産業団地構造高度化特別法は、開発利益の一部だけを再投資できるようにすることにより、 民間の事業施行者が営利を目的として競争力強化事業ができるようにしている。 これは2つのことを意味する。

まず事業の施行可否が収益の可能性に左右されるということ、 つまり老朽化が激しく再配置が切実な産業団地でも収益の可能性がなければ事業が施行されず、 まだ保守は必要ないが都心との距離などを理由に開発時の収益が発生する産業団地は、事業が施行されるのだ。 特に、地方にある産業団地の場合、地方自治体の財政状況では事業施行者になるのが難しいため、 外部の事業施行者を探すほかはない。 ところが地方の産業団地は開発されても収益が創出される可能性が低いため、 産業団地の老朽化が深刻でも事業施行者を見つけることが出来ず、 老朽拠点産業団地の指定申請さえできない可能性が高い。 もし事業施行者が見つかって指定申請をしても、産業団地構造高度化特別法は 「競争力強化事業推進のための財源確保方案」を評価指標にするため、 指定されない可能性が高い。 バランスが取れた地域発展を目的として制定された産業団地構造高度化特別法が、 むしろ地域間の不均衡を深める可能性を高くするのだ。

二番目に、収益をあげるために産業団地の機能と本質を阻害する可能性があるということ、 事業施行者は収益をあげるために分譲率が高い商業施設を作り、 施設の分譲価格と賃貸料を高く策定する可能性が高い。 それにもかかわらず、老朽化した産業団地は増え続けており、 政府は投資財源の不足を理由としてますます民間営利事業者に頼っている。 民間営利事業者にとって有利にように規制を緩和すればするほど、 供給用地の価格は上昇し、公共施設の設置財源は減少し、産業団地は本来の機能を喪失することになる。

産業団地構造高度化特別法は、不動産再開発に焦点を合わせているので土地の所有者や入居企業は考慮の対象になっても、 入居企業で働く労働者は考慮の対象ではない。 入居企業と土地の所有者は競争力強化関係者協議会の設立の主体になれるが、 労働者はそうではない。 もちろん、産業団地構造高度化特別法は労働者のための定住条件など、 勤労者の生活環境改善や文化環境改善に言及している。 しかしこうした事業も結局、不動産再開発事業の一環でしかない。

ではなぜ産業団地構造高度化特別法は不動産再開発だけに頼るのであろうか。 まず産業団地の位置づけにある。 以前は都心から離れていた産業団地が、都心が広がったことでますます都心に近くなったり、あるいはまったく都心に位置するようになった。 そうなると再開発後の不動産売買収益を得ようとする者が産業団地に関心を持つほかはない。 また、人々の往来が多く、交通が発達しているためデパートや劇場などの大型小売業者ももの欲しげに見るだろう。 産業団地はただおいしい土地としてだけ見られるようになるのだ。 二つ目に、産業団地再開発=地域経済復活という幻想があるためだ。 地域経済が低迷し、国会議員は各々投票者の気持ちを考えながら、自分の地元の経済再生に血眼になる。 この時、短期間で地域経済を再生する方法が不動産再開発だ。 国会に在籍する議員210人のうち199人も、こうした思いで産業団地構造高度化特別法を通過させたのだろう。 国家産業全体で産業団地が持つ意味は度外視された。

なぜ労働者たちを無視するのか

今までクラスター、構造高度化、QWLバレー事業など、多様な形態の産業団地支援や老朽産業団地整備および保守制度が実施されてきた。 しかし名称が違うだけで、実状は差がわからないほど重複的だ。 その一方で制度の成功に関する正確な評価なく、次々と似たような制度が作られている。 産業団地構造高度化特別法も同じだ。 構造高度化事業が持つ問題点、つまり不動産開発事業でしかないという限界は、 産業団地構造高度化特別法でさらに深刻になった。 産業団地構造高度化特別法のもとでは老朽拠点産業団地に指定されても問題で、 指定されなくても問題だ。 指定されれば地価上昇、入居企業の離脱、解雇労働者の量産、産業団地の機能喪失の問題が発生し、 指定されなければ産業団地の老朽化はさらに激しくなるだろう。 こうした問題が発生するのは、政策の不在が決定的な原因として作用する。 企業と労働者が望む政策、企業と労働者が生産活動に専念できるようにする政策、 そして韓国の産業の基盤である製造業をさらに強くする政策を考えるのではなく、 既存の制度を踏襲して全てを土地開発の論理で接近することで発生する問題だ。

老朽化した産業団地の開発や機能向上の核心は、入居企業の力量を強化し、入居企業が健康に生産活動にまい進し、労働者が安定して人間的な労働条件と環境で働けるようにすることだ。 そのためには下請け取り引きの公正化や研究生産活動の支援、安定した雇用および快適で人間的な業務環境の確保が核心だ。 今のように下請業者が拡大して企業間の不公正な取り引きが深刻化している状況では、さらにそうだ。 それにもかかわらず、現行法からはこのような内容が抜けている。 その代わりに特別法は不動産再開発方式のような方式で構造高度化事業を施行できるようにするだけだ。 まさに企業と労働者が望む内容は抜け落ち、老朽化した産業団地の発展の可能性は不動産開発だけに焦点を合わせた制度のために抜き差しならない羽目に陥るのだ。 こうなると、既存の入居企業は構造高度化事業を不動産売買による利益実現の機会としか感じられなくなる。 利益をあげて出て行った企業の空地には、解雇された労働者と高い価格の不動産しか残らなくなる。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-10-08 14:07:40 / Last modified on 2015-10-08 14:07:42 Copyright: Default

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