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人は一瞬にして無能にならない

セウォル号事故7件の裁判が進行中... あちこちで記録作業

ヨン・ソンノク記者 2015.05.28 10:50

法廷は起訴された事件だけ扱うという限界がある
セウォル号法廷裁判の過程を30冊の手帳に記録してファクトに接近

オ・ジュノ作家は昨年6月10日の初公判準備期日から5か月間、 セウォル号惨事の裁判を傍聴して記録した。 彼は船員の裁判は33回のうち31回を傍聴し、清海鎮の裁判と海上警察の裁判まで足せば40回以上傍聴した。 彼が裁判の過程を記録した手帳は30冊分だ。 オ作家はこれを集めて「セウォル号を記録する」という本にまとめ上げた。 オ・ジュノ作家はセウォル号事故を船舶管理、船員の過失、構造的な問題に分けて説明した。

▲4月16日、蔚山大公園同窓で開かれたセウォル号1周年蔚山市民追慕祭[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]

セウォル号を運航していた清海鎮海運は、2003年の3月に日本から「セウォル号」を持ってきた。 セウォル号は1989年9月に日本の三菱重工下関造船所で建造されたカーフェリーで、 2003年2月まで運航して2月に退役した。

清海鎮海運はもっと金を稼ぐためにセウォル号を買い入れた。 仁川〜済州の間を運航する目的だった。 セウォル号を運航する前に港湾庁に行って船の収益率がいくらなのかを検証しなければならなかったが、 その時、公務員に3千万ウォンも賄賂を贈り路線を得た。 路線を得ても船が韓国の安全基準に合っているかどうかの検査を受けなければならない。 清海鎮海運はセウォル号を増築し、貨物室を増やす計画だった。 船を増築する前に韓国船級という所で、増設前に安全について検査を受けなければならない。 韓国船級は、危険だが荷物が少なければよいといった。

韓国船級は増築を許可した。 船体は増築により、上の部分が重くなった。 船の下には船がバランスを取るためのバラスト水を入れるが、そこには荷物が満載された。 重心が合わなければ船は片側に傾き、起きあがる復原力が弱くなる。 乗務員が会社に抗議しても、そのまま運航しろという指示が出された。

船舶に荷物を積むと、荷物が動かないように縛らなければならない。 これを固縛というが、固定の手続きは非常に厳格だ。 だがセウォル号は荷物を過密に載せており規定を守っていなかった。 固縛業者は清海鎮海運の言う通りに働いたと主張する。 会社と固縛業者は裁判で互いに争い 「最終的な責任は船員にあるからわれわれには責任がない」と言っている。 法廷は彼らの主張を認めず、過失や共犯関係を認めた。

セウォル号事故を固縛業者のせいと見るのか、清海鎮海運と見るのか、船員の過失と見るのかは、正確に区分しにくい。 誰の責任かわからないから、誰の責任でもないというのはおかしい。 固縛業者と船舶会社が激しく争った部分がこの部分だ。 遺族と市民はセウォル号事故の構造的な真実を明らかにするために船を引き揚げろといったが、 清海鎮海運弁護団はもうひとつの側面から真実を明らかにしようと言って引き揚げようといった。

セウォル号事故の当時、操舵室には8人がいた。 事故が起きれば各々の役割を分担して、救命艇を担当する、救助要請する人などの役割を分けなければならないが、 船員らは誰も各々救助要請をするなどの役割を分担しなかった。 船員は海上警察がきた時に脱出した。 オ作家は、セウォル号は普段、貨物を運ぶ船だったので、乗務員には乗客に責任を持つマインドが形成されていなかったのではないかと推測する。 操舵室の船員は、普段はあまり乗客と会うことがなかった。 操舵室はそうだったが、中間部で働いていた乗務員たちは、自分の役割を果たす。 パク・チェヒョン氏も最後まで救命胴衣を配り命を失った。 乗客と迎え合ったり関係した人々は自分の役割を果たしたのだ。 検察はプレゼンテーションファイルに操舵室船員の罪を羅列し、赤い文字で「30年求刑」と書いた。 検察は感情的なイメージで死刑を求刑し、ある女性船員は30年を求刑された。

事故当時、セウォル号は復原性が悪く、大きく傾いて、これにより荷物が押し出されて水が漏れて入ってきた。 だがセウォル号は安全点検テストをすべて通過した。 セウォル号ばかりか、2011年から2013年の間に点検を受けた旅客船1万1000隻の点検通過率は100%であった。 旅客船事故は2倍増加した。

人は一瞬にして無能にならない
「世の中が傾かないようにバラスト水を入れよう」

セウォル号のパク某乗務員は事故当時、「じっとしていろ」と放送した人だ。 この乗務員は、船が危険な時にどうすればいいのか、何も教育を受けていなかった。 緊急だからじっとしていろと放送を始めた。 水が入ってきているのに救命胴衣も着ずに1時間ほど放送を続けた。 判断マヒ状態にあったのだ。

▲オ・ジュノ作家が蔚山大学校視聴覚室で講演した[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]

無能とは何か。 人は、一瞬で無能になるのではない。 海上警察は2011年以後、いつも大事故が発生するのではないので、 救助装備や人員を常時保有するのは無理だとし、 これを民間に任せれば良いと発言した。 オ・ジュノ作家はさらに多くの利益をあげるための民営化が事故と無関係ではないと指摘した。

1987年、英国ではエンタープライズというRo-Ro船(フェリーの一種)が扉を閉じずに出港し、90秒で200人が水没する事故があった。 その後、英国では企業殺人法制定運動が起きた。 職員はなぜ扉を閉めなかったのか? はやく出港しろと言われたから。 マニュアルには安全規則遵守はあるが、作業者がこれを守るのが難しい状況では、ボタン押さなかった人よりも企業の責任の方が大きい。

裁判所は起訴された内容に対してのみ判断する。 無責任な社会構造は誰の責任か。 一年に労働災害で死亡する人は2千人を超えるが、企業を処罰しない社会だ。 セウォル号の真実を究明しようとする市民を放水銃で鎮圧する政権に、真実究明は期待するのは難しい。 こうした巨大なシステムの中で個人は何ができるのだろうか。

オ・ジュノ作家は人との関係を結ぶにあたり「バラスト水」を入れようという。 オ作家は「事故の後、公共機関が安全点検をするようにするなど、少なくとも船舶関連のいくつかの規定は強化された」とし、 政府の対処はとても残念だが、小さな変化を実現するのは個人だと話した。 続いてセウォル号特別法特別調査委員会が裁判を超える真実究明と安全な社会を作るために寄与することを希望するという。 特調委は政府の施行令問題でまだ何の真実も明らかにできずにいる。 「セウォル号を記録する」も裁判の一部分を入れた記録だ。

オ・ジュノ作家は「4.16セウォル号惨事市民記録委員会作家記録団」に参加し、 被害者の声の記録に参加していた。 マウナリゾート崩壊事故、聖水大橋崩壊事故などの大事故にも、 被害者の声を記録した本はなかった。 作家団は、セウォル号遺族に取材したが、警察のスパイではないのかと追い出されたり、 ある作家は署名を集めているとき、商人から抗議(何が特別なのか交通事故で死ぬ人も多いのになど)された。 セウォル号遺族は初めは心を開かなかったが、作家たちは「金曜日には帰って」でセウォル号被害者らの声を記録した。

オ・ジュノ作家は、安山檀園高等学校と美容院などを回り、セウォル号事故をどう見るのかと質問した。 質問された人は何も言わず沈黙が流れた。 質問する人もうんざりするのは同じだった。 そのうちにオ作家は昨年6月10日、セウォル号船員を対象に開かれた初公判を傍聴する。 この時からオ作家はセウォル号裁判の記録を始めた。 彼は裁判を見て、事故真相を究明するのは何が一番信憑性あるファクトなのかを記録することだと感じた。 誰かが親切に教えてくれないファクトなら、法廷で争う過程でファクトを見つけなければと考えた。

オ・ジュノ作家は5月21日午前、蔚山市民iCOOP生協三山空間、 午後には蔚山大学校視聴覚教育館で「セウォル号を記録する」の著者として講演した。

セウォル号事故7件の裁判が進行中

セウォル号事故の後、裁判は7つに分類されて進行していた。 セウォル号船長と乗務員、セウォル号船主の清海鎮海運役職員、 珍島VTS(海上交通管制センター)所属海上警察13人、当時木浦海上警察所属123艇長、 韓国船級検査員、救命イカダ整備業体関係者4人、 セウォル号証書認可などの過程で金品をやり取りした前職・現職公務員などだ。

乗務員と船長に対する控訴審(2審)裁判が4月28日に終わった。 裁判所は2審でセウォル号船長に殺人の未必的故意を認めて無期懲役を宣告し、 他の乗務員にはそれぞれ懲役1年6か月〜12年を宣告した。 裁判所は1審では船員の他に清海鎮会社を主に扱った。 1審では業務上過失と背任横領などで懲役10年を宣告、2審では7年が宣告された。

セウォル号関連の書籍が何冊か出版

10年ほど時間が経った後で2014年の4月16日を思い出せば、 「水に沈んだ船体、学生たち、黄色いリボン」といったイメージを思い出すだろう。 記録がなければ時間が経つほどに過去は忘れ去られていく。 セウォル号を記録する人々は「記録」と「真相究明」、「世の中の変化」のための作業をあちこちでしている。 事故から1年経つ間、セウォル号を記録した本が何冊か出てきた。

セウォル号事故を扱った本としては、 「大事故はなぜ繰り返されるのか(パク・サンウン、社会運動)」、 「416セウォル号民主弁護士会の記録(民主社会のための弁護士の会、考えの道)」、 「彭木港から吹く風(人文学協同組合、現実文化)」、 「セウォル号が私たちに問う(ソウル大学校社会発展研究所、ハヌルアカデミー)」、 「金曜日には帰って(4.16セウォル号惨事市民記録委員会作家記録団、チャンビ)」、 「セウォル号を記録する(オ・ジュノ、未知ブックス)」等がある。

一方、京畿道教育庁安山教育回復支援団は、 来年の出版を目標としてセウォル号犠牲学生と教師260余人の伝記発行事業を進めている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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