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国際刑事裁判所回付を勧告した国連の北朝鮮人権決議案

[人権オルム]人権の名で強行される暴力

チョンノク(人権運動サランバン) 2014.11.27 11:13

11月18日、国連総会第3委員会で北朝鮮人権決議案が通過した。 これに対して11月22日、北朝鮮(脚注)の祖国平和統一委は、 韓国が米国を追従して行った全面的な宣戦布告だと強く非難した。 11月23日には国防委声明を通じ、超強硬な対応を宣言して、米国、日本、韓国がその対象だとし、核戦争が起きれば青瓦台も安全ではないと脅した。 事実、国連は2003年から毎年、人権理事会または総会決議案の形で北朝鮮人権決議を採択してきた。 それでも北朝鮮が今回の決議案に対して戦争に言及してまで強く反発するのは理由がある。 今回の決議案が北朝鮮当局の責任者を反人道的な犯罪を犯した加害者だと規定し、国際刑事裁判所への回付を勧告したからだ。 そして北朝鮮の強い反発は、単に政治指導者と体制に対する冒涜のためではない。 北朝鮮が核戦争を口にしているのは冒涜に対する報復のためではなく、北朝鮮に対する戦争の威嚇が具体化したからだ。 われわれは人権を掲げて始まった行動が最も深刻な権利剥奪状態の戦争につながりかねない驚くべき状況を目撃している。

国連と北朝鮮人権

北朝鮮の人権問題を解決して責任を問うため、国際刑事裁判所が北朝鮮人権問題を扱えという主張がなぜ戦争の威嚇になるのか? これを理解するためには、北朝鮮をめぐる国際関係、北朝鮮人権が国連で扱われてきた文脈を調べる必要がある。 1991年、南北が同時に国連に加入して、国際社会で独立主権国家として公式に認められ、国連の人権関連国際条約に加入して人権保障の責任と義務を受け入れた。 こうした変化は、50年ほどの間に社会主義-資本主義体制の対決で構造化された朝鮮半島情勢が社会主義圏の崩壊で急変し、 陣営間の対決ではなく個別の主権国家に基づいて敵対関係を解消しようとする南北の政策の変化が反映された結果だった。 しかし、韓中、韓ソの修交は実現したが、米朝、日朝の修交は結ばれないまま、北朝鮮は単独で敵対関係の中に孤立させられる。 その結果はひどいものだった。 特に石油、天然ガスといった化石燃料の輸入不足は産業発展をマヒさせ、 化学肥料がない農業生産は各種の自然災害までが重なって最悪の食糧難を引き起こした。 北朝鮮自身が「苦難の行軍」と称する90年代の中後半を経て、北朝鮮から離脱する住民が急増する。

生存のために北朝鮮から脱出した人たちから北朝鮮の人権状況についての証言があふれ、2000年代から国際社会で「北朝鮮人権問題」が台頭する。 国連は2005年から毎年、北朝鮮人権特別報告官を任命し、北朝鮮の人権状況に対する報告書を作成させてきた。 特別報告官の報告書は劣悪な食糧事情の他にも、公開処刑、連座制、拷問、政治犯収容所の問題を提起して、北朝鮮住民の自由権が甚大に侵害されていると報告してきた。 ほとんどは北朝鮮離脱住民の証言に依存する収集情報の限界、偏向性、事実関係の問題は別としても、 「北朝鮮人権特別報告官」という国連の国家別人権モニター制度は国連でも問題提起があった。 「侮辱的式接近(naming and shaming)」、「国家間の利害による人権問題の政治化」などだ。 イスラム原理主義者が権力を握るサウジアラビアをはじめとする西南アジアの産油国の人権状況はどうだろうか。 三代世襲が恥ずかしくなるほど、政治的な権利が剥奪され、女性への差別と暴力が日常化しているところではないか? サウジは王政だからいいのだろうか? 誰が石油がある親米国家を怒らせるだろうか。 こうした状況なので、国家別の特別報告官制度が実質的な人権改善のための行動ではなく、特定の国家を非難して罰するための政治的な道具として活用されていると言われても、言い返せない。

2006年に国連人権理事会が設立され、国家別特別報告官制度の廃止が深刻に議論されたが、結局維持された。 その代わりに会員国全体が報告書を提出し、人権状況の検討を受ける人権定期検討(Universal Periodic Review)が導入された。 多国的な枠組みで平等に人権対話が形成されるよう主張した北朝鮮は、人権定期検討(UPR)には応じている。 北朝鮮も自国の人権問題そのものを否定してはおらず、すべての国家が平等に人権問題を議論すべきだと主張しているのだ。 問題は、北朝鮮が多国的人権対話に応じているのに毎年、北朝鮮人権特別報告官が任命されて活動し、 結局、2013年には北朝鮮人権調査委員会までが発足することになったのだ。

国連調査委員会と国際刑事裁判所

今回の国連総会第3委員会の決議の前、今年のはじめに北朝鮮人権の実態を国際刑事裁判所に回付すべきだという国連機構の意見が発表された。 国連人権理事会の決議で設立された北朝鮮人権調査委員会の2014年2月の報告書がそれだ。 これまで国連は、ルワンダ、スーダン(ダルフール)、レバノン、リビア、シリアなど、特に内戦中の大量虐殺(genocide)と人道に反する罪など、 組織的かつ広範囲な人権侵害が発生した地域に対して調査委員会を構成してきた。 内戦のように日常的な政府活動が麻痺し、大量の人命被害が発生する時、責任の所在を明らかにして被害者を保護するためだった。 その点で、北朝鮮の人権調査委員会は前例がないケースだ。 北朝鮮政府が国連の多国間人権対話に応じているのに、北朝鮮で深刻な人権侵害行為が長期間にわたり持続的に行われていると判断し、責任者を処罰するための国連次元の行動を始めたのだ。 2003年から始まった国連の北朝鮮人権決議は、2005年から毎年続く北朝鮮人権特別報告官の報告書と勧告を経て、 2014年の北朝鮮人権調査委員会の国際刑事裁判所回付勧告へとつながり、 これがそのまま国連総会第3委員会の決議にまで至らせたのである。 国際刑事裁判所への回付が当事国の要請と安保理の決定だけで可能な現実では、 北朝鮮の人権に対する国連の対応は近い将来開かれる総会の本会議決議で終わるだろう。 だが実際に回付されるかどうかとは無関係に、集団殺害の罪、人道に反する罪、戦争犯罪、侵略犯罪についての責任を問う国際刑事裁判所への回付を国連が決議したという事実だけでも、 北朝鮮政府と政治指導者に対するいわゆる国際社会の倫理的判断が下されたと見られる。

米国は10数年前に大量破壊兵器という操作された情報で世界の平和とイラク国民の人権と自由を臆面もなく打ち出して、国連も反対した侵略戦争を起こした。 その結果はこの10年間、私たちが目撃した通りだ。 北朝鮮は、国家樹立後から米国と政治的・軍事的に敵対しており、この20年ほどの間には核兵器の開発に関連し、その対立がさらに激しくなった。 そうした状況で、普遍的人権の名で国連は北朝鮮政府と政治指導者を深刻な人権侵害を犯した反人道的犯罪者だと規定したのである。 これまで国連調査委員会の報告書と国連決議は、目前の虐殺と暴力を防がなければならないので加害者の処罰を具体的に明示してきたが、 これはユーゴスラビア、リビア、シリアなどに対するNATOと米国の戦争行為を正当化するための大きな役割を果たしてきた。 2月に北朝鮮人権調査委員会の最終報告書が発表された後、 北朝鮮は15年ぶりに国連総会に参加して自主的な人権報告書を提出し、 10月7日の国連総会で開かれた北朝鮮人権関連の説明会で人権問題に関して国際社会との対話と協力を続けるという立場を発表した。 具体化された戦争の威嚇の前で、北朝鮮としてはどのようにしてでも国連総会での決議を防がなければならない切迫感があったのだ。 国連総会の決議を目前にした今、もう朝鮮半島での戦争は少なくとも名分ではなく、実行と決断の領域へと渡っている。

人権の名で強行される暴力

北朝鮮人権調査委員会のマイケル・カービー委員長は、委員会設立後、ただ事実に基づく調査活動をするという抱負を明らかにしてきた。 だが調査委員会は北朝鮮の人権問題調査の核心地域である北朝鮮と中国は訪問もできなかった。 韓国、日本、タイ、英国、米国に散在する民間人権団体と北朝鮮離脱住民の証言に基づいて報告書を発行した。 北朝鮮当局の責任者の国際刑事裁判所回付を勧告した報告書の内容に至っては、貧弱なことこの上ない。 委員会は訪問を拒否した北朝鮮と中国などのせいにするが、これは前述した国家別人権報告官、調査委員会制度の根本的な限界だ。 実質的な人権改善のための包括的かつ協力的な人権対話をしようというのではなく、 相手方を反人道的犯罪者と規定し、これに対する取り調べと尋問をするという国連の提案にどの当事国が簡単に協力するだろうか。

国連だけではない。 国際刑事裁判所長と国連事務総長を輩出し、今回の決議案でも大きな役割を果たした韓国社会の北朝鮮社会に対する犯罪化、悪魔化、他者化は極に達している。 70余年間の国家保安法体制の中で生きてきた韓国人にとって、北朝鮮は戦争の対象または同情対象でしかない。 人権は安っぽい同情や人道主義ではない。 権力関係の中に置かれた相互主体性の中で形成変化する私たちすべての権利だ。 韓国は、北朝鮮と相互主体的な関係で交流してきた経験が浅い。 北朝鮮が今回の国連総会に提出した朝鮮人権協名義の人権報告書が朝鮮中央通信のウェブサイトに掲載されているというが、読むことができない。 一口でアカ狩りを叫んで、北朝鮮の人権改善を主張するという凄まじい現実だ。

脚注:便宜上、北朝鮮と表記したが、正式名称は朝鮮民主主義人民共和国だ。北では南北をそれぞれ南朝鮮-北朝鮮と称する。南朝鮮、北朝鮮は存在しない一方的な名称なので、南北間対話では南側、北側という用語を使う。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-11-27 21:50:13 / Last modified on 2014-11-27 21:50:14 Copyright: Default

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