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憲法裁判所の旧派遣法公開弁論、「憲法の精神は直接雇用」

現代車と雇用労働部舌戦...「搾取」されてきた非正規職は言葉なく見守る

チョン・ジェウン記者 2013.06.14 11:51

現代車が旧派遣法雇用の擬制条項が違憲として提起した憲法訴訟に対する公開弁論が6月13日午後、ソウル市三清洞の憲法裁判所で開かれた。旧派遣法で2年以上の派遣労働をした場合は正規職と見なす雇用擬制条項が、違憲か合憲かを問う公開弁論だ。

この条項の違憲を主張する現代車と、合憲を主張する雇用労働部、質問する憲法 裁判所の裁判官らが3時間近く舌戦を繰り広げている間、現代車社内下請労働者、 双竜車社内下請労働者など、10年間不法派遣に苦しめられてきた非正規職労働者は 言葉なく見守った。

現代車「使用者の基本権を侵害、使用者に犠牲を強要」と違憲主張
98年の派遣法制定は歓迎、2010年の大法院不法派遣認定以後は反対?

公開弁論で現代車は、2年以上派遣労働をした場合は正規職と見なすという条項は、 使用事業主の基本権を侵害するので「違憲」だと粘り強く主張した。現代車の 代理人である法務法人和友のパク・チャンフン弁護士は「雇用擬制条項は解雇の 自由を制約し、雇用擬制には不法派遣が含まれるのか、具体的な勤労条件は どうなるのか、何の言及もなく、明確性の原則に反する」と主張した。

続いて彼は「2年経過だけを要件として派遣勤労者との勤労関係が成立するのは 強制条項であり、使用事業主の自己決定権を制限する規定」とし、「事業主の 契約締結の自由と相手を選ぶ自由を制限している」と主張した。

それと共に彼は「派遣勤労者を2年間雇用したのは、使用事業主が 『採用し続ける』ために選択したのではなく、『直接採用しない』ことを選択した」 とし「企業の選択を尊重しなければ、企業の自己決定権は剥奪される」と付け加えた。

また「派遣勤労者だけに反対意志の表示機会を付与して、 使用事業主には認めないのは平等の原則に反する」と主張した。

朴弁護士は「社内請負が直接雇用と見なされると、造船業種、製造業など全産業に 大きな波及効果があり、韓国は雇用柔軟性が硬直している」として 「使用者の一方的な犠牲を強要することに対して違憲と決定し、 必ず解決してほしい」と主張した。

朴漢徹(パク・ハンチョル)憲法裁判所長が98年に派遣法を制定した時、 現代車は歓迎したのに、今になって立場が変わった理由は何かと尋ねると、 現代車側は「IMF外国為替危機の時、大きな枠組みで歓迎したが、 雇用擬制条項を見逃し、大法院(不法派遣)判決によりこうして潜在的な危険が 現れると、その時から反対の立場になった」と明らかにした。

また朴所長が雇用擬制条項などの非正規職保護装置を認るべきだという主張には 一理あるように見えるがどう思うかと尋ねると「雇用安定は私たちも認め、 約3500人を直接雇用で新規採用する計画だが、突然13年前の勤労者を同じ 扱いにしろというのはあまりに極端」と主張し、事実上、不法派遣を否定した。

雇用労働部、「現代車が不法間接雇用を続けてくれと言う」合憲を主張
「現代車が労組法そのものを審判台に上げた」

雇用労働部の代理人で法務法人ハンギョルのイ・ギョンウ弁護士は、「韓国は 間接雇用を禁止して規制してきたし、現在も変わらない」とし「請求人の主張は 不法な間接雇用を続けさせてほしいという主張としか思えない」と反論した。

中間搾取の危険がある派遣勤労は原則的に禁じられ、例外的なケースに限って 認められるので、現代車が主張する社内下請は実際には使用者責任回避などの 結果を持たらす間接雇用に該当し、これを規制する雇用擬制条項は 違憲ではないという。

イ弁護士は「派遣勤労者らは、労働関係で最も至急な問題の一つである非正規職 勤労者で、勤労契約締結関係において甲乙の関係でさえない丙、本当に最後の 最も脆弱な勤労者」とし「この事件の法律条項は、韓国の憲法が追求する理念と 価値に符合して憲法に反しない」と主張した。

また「この条項は、適用要件を『2年超過』と規定し、要件を明確にしており、 使用事業主はこの規定によってこれまで禁じられていた派遣勤労者を使用でき るようになった」と明らかにした。

旧派遣法上の雇用擬制条項は、2006年の国会で過怠金を含む雇用義務規定に 変わったことに対しても「雇用義務での改正は、過怠金等により直接雇用の 実効性をあげるためで、雇用擬制の違憲性の議論とは無関係」と反論した。

労働者側代理人の法務法人市民のキム・ソンス弁護士も「近代労働法の主要原則 である中間搾取の禁止または直接雇用の原則は、決して軽い価値ではないという点で、 雇用擬制規定は過剰禁止の原則に違反しているといえない」と話した。 彼は続いて「現代車が資本主義と民主主義を守る労組法そのものを審判台に上げた。 違憲判決は労働自体への死亡宣告」と強く提起した。

雇用労働部の参考人カン・ソンテ漢陽大法学専門大学院教授は「派遣勤労は、 間接雇用と期間制雇用が結びついた形態で、労働法が前提にしている直接雇用と 常雇い原則のどちらにも反する出す原則」とし「派遣業務許容範囲を拡大 しようという請求側の主張は、企業の経営危険を勤労者に転嫁するに過ぎない」 と話した。

最後の弁論で、労働者側は「現代車が今日、世界的に成功した大企業に成長 したのは、国家の社会間接資本建設と諸般の政策的支援、地域社会の協力、国内の 消費者の支持、直接および間接雇用された勤労者の汗と努力があったため」とし 「当然担うべき責任を回避するために国家と国民を脅迫するのは、これまで 韓国社会で享受してきた恩恵と支援を裏切る非常に不適切な態度」と批判した。

派遣法は、97年の外国為替危機の当時、IMFが救済金融の条件に掲げ、韓国政府が 経済を救うという理由で1998年に制定された。憲法が明示する中間搾取禁止を 緩和する代わりに、中間搾取の乱用を防ぐために雇用擬制条項を入れたもので、 企業は正規職労働者を解雇し、社内下請非正規職を大挙雇用し始めた。

2010年7月に大法院は不法派遣を認めたが、現代車は不法派遣非正規職を正規職に 転換せず、雇用擬制条項が契約と企業運営の自由を侵害するとして、逆に 憲法訴訟を出した。キム・ジュンギュ氏など現代車牙山工場社内下請労働者6人が 提起した勤労者地位確認訴訟、現代車蔚山工場チェ・ビョンスン氏不当解雇訴訟が 今回の公開弁論で扱われた。

「社内下請労働者の英霊が慰められるように」

現代車社内下請労働者側最後弁論

この事件の忠実な審理のために公開弁論を開いて開陳の機会を与えられた ことに心から感謝します。公開弁論を終えるにあたり、この事件の決定が 持つ意味、特に迅速な合憲決定の必要性と切迫性を強調しようと思います。

この事件の条項は、請求人のような大企業の社内下請勤労者らだけに適用 される条項ではありません。この10年間、非正規職勤労者の労働組合への 加入率は全850万人の1.8〜2%を越えられないことが明らかになっています。 この事件の条項は、労働組合がない多くの非正規職不法派遣勤労者に不法 派遣が確認されたという理由で、不当な処遇で解雇された時に最後に期待 できる唯一の保護条項です。

この事件の公開弁論の前に突然取り下げられたパルナスホテル事件の利害 関係人は、客室の清掃をするルームメードの低賃金女性勤労者でしたが、 彼女らは不法派遣の陳情をして労働部もこれを認めたのに、その結果は 解雇であり、8年近く裁判を続けています。

九老デジタル団地(旧九老工業団地)事業場4か所のうち1か所が不法派遣 (2005年労働部特別点検結果)を使っていることが明らかになったのに、 これらのIT業種と電子製造業種に従事する生産職女性、男性勤労者、原子力 研究院が研究用に稼動している原子炉で危険な作業を偽装請負をしてきた 非正規職勤労者、イーマートといった大型スーパーで最低賃金水準の給与 を受けて、商品陳列、移動、顧客応対をする販売サービス分野の勤労者など、 全国の多くの非正規職勤労者がこの事件を見守っています。

この事件の条項の違憲性に関する請求人の主張の不当性とこの事件条項の 合憲性については今日の公開弁論ですでに充分に論証され、常識的な判断 をすれば疑いの余地がないほど明らかになったので、これ以上論じる必要 はないでしょう。ただし、別途申し上げた通りこの事件請求は形式的私的 自治による歪曲を実質的な自治で克服し、資本主義と民主主義を守る役割 を果たす労働法そのものを審判台に上げたもので、この事件の条項に違憲 決定が下されれば、それはまさに労働法そのものの死亡宣告だという点を また強調します。

今日の弁論の過程では、外国の法令について多くの議論がありましたが、 わが国は世界で例がないほど、大企業を筆頭に不法派遣が深刻に乱用され ているので、さらに強い対策が要求されるという事情が考慮されなければ なりません。世界でも例のない深刻で不正義な状況が展開されている状況 ですが、この事件の条項は使用理由第一方式を採択したフランスや、不法 派遣の場合は直ちに雇用するドイツの方式と比べ、厳格な方式ということ はできません。

また外国の法令で確認することができる示唆する点は直接雇用擬制方式を 重要な手段として採択している国家が多く、どこの国でもこの方式が違憲 と認定された例はないという点です。この方式は、国際的にも認められた 合憲的な派遣勤労者保護方式であることがわかります。世界ではまだこの 事件の条項のような派遣勤労者保護条項について違憲を宣言した機関はな く、もしこの事件が違憲と決定されれば、憲法裁判所が世界で唯一の機関 になるでしょう。

請求人は、この事件の条項を口実に「手のつけようもない法律紛争の発生、 労使紛糾の増加による労使関係の悪化」、「労働市場の硬直性が高まるこ とによる雇用および企業競争力への悪影響」、「数十兆の損害による国内 生産基盤の競争力弱化と海外移転による雇用市場の沈滞」等の主張で政府 と国民に対する脅迫を続けています。請求人が今日、世界的にも成功した 大企業に成長できたのは、国家の社会間接資本建設と諸般の政策的支援、 地域社会の協力、国内消費者の支持、直接および間接雇用された勤労者の 汗と努力があったからこそ可能でした。ですから請求人は、共同体の主な 構成単位としての社会的な責任を負担するべきで、その出発点は請求人が 使った勤労者の権利と地位を保障することです。それでも請求人が当然担 うべき責任を回避するために国家と国民を脅迫することは、これまで韓国 社会で享受してきた恩恵と支援を裏切る非常に不適切な態度といわざるを えません。

請求人は、費用の問題を誇張して主張していますが、一方的な計算は信じ 難く、たとえ一部の費用の増加があるしても、これは追加の人件費でなく 本来正規職にすべき不法派遣の勤労者に当然賃金として支払うべき金員を 支払ったに過ぎません。そして労働費用の増加は、これは社会・経済的に 望ましくもあり、労働所得分配率が改善されて内需の振興につながり、 社内下請勤労者の勤労所得が増えて生活が安定し、労使双方が納める社会 保険料が増えて社会保険財政が安定し、勤労者が納める勤労所得税も増え、 国家財政にも役に立つでしょう。

不法派遣の実質を持つ社内下請勤労者は、韓国の社会で脆弱階層を形成し、 余剰人間扱いされています。最近、社会的な問題になっている労働争議の 相当部分が社内下請問題によるもので、争議件数も多く期間も長く、闘争 の様相も激烈です。目に見える差別がそれだけ深刻で不正義なのに、解決 の糸口が見えないためです。

請求人は、この事件が係留中であることを盾にして社内下請勤労者を直接 雇用に転換せず、「違憲と決定されるだろう」と言って交渉と復職に消極的 に対応しており、また全国の多くの訴訟事件がこの事件の処理結果を待っ ています。この事件の決定が遅れている間に多くの事業場の社内下請勤労者 が苦痛と待つことに疲れ、自ら命を絶つ事件が続いています。

2004年2月14日、非正規職差別撤廃を叫んで自殺した現代重工業の社内下請 勤労者パク・イルス、2005年9月4日解雇から3か月で自殺した請求人の社内 下請解雇者リュ・ギヒョク、2012年12月22日に下請の廃業に介入した不当 労働行為は認められたが、解雇では敗訴の判決を受けた後に自殺した現代 重工業の社内下請解雇者イ・ウンナム、2013年1月28日自殺した起亜自動車 の社内下請解雇者ユン・ジュヒョン、2013年4月14日、正規職転換を回避す る目的で嘱託契約職に転換され、解約されてすぐ自殺した請求人の嘱託職 解雇者コン・マンギュ、2013年4月16日に焼身自殺を試みて病院に入院中の 起亜自動車の社内下請勤労者キム・ハクチョンなど...

自ら命を絶った社内下請勤労者の英霊がせめてあの世で慰労を受けられる ように、この世ではこれ以上の死行列が続かないように、そして韓国社会 の脆弱階層である社内下請と不法派遣勤労者が希望を持てるように、韓国 社会すべての構成員が正義が生きていることを確認できるように、一日も はやく合憲決定をして下さることを切実に望みます。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-06-16 08:38:07 / Last modified on 2013-06-16 08:39:53 Copyright: Default

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