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LNJ Logo 韓国シチズン・不当廃業に来日抗議
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News Item 20030825cok
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韓国シチズン日本遠征闘争団
8月23日、全統一レイキ分会で「韓国シチズン日本遠征闘争団」の一行とささやかな集会があった。

今年2月1日付で廃業した日系企業の(株)韓国シチズンは、韓国の馬山自由貿易地域で25年間操業を続けてきた時計工場だ。 現在は、会社側の一方的な廃業通告により工場の操業は停止している。

韓国シチズンの工場で働く労働者は、「廃業は絶対にしない、みんなで頑張ろう」と言い続けてきた韓国人社長の言葉を信じ、度重なる人員整理や低賃金を甘受し、会社の経営に協力し続けてきた。 2001年度には「産業平和賞」を受賞するほどに韓国シチズン労使間の関係は良好だった。 いや、「経営が苦しい」という会社側の説明の前に、職場を守るために身を切る思いで犠牲を甘受してきた。その結果としての「平和」だった。

しかしこの廃業は、最初から仕組まれたものだった。 社長室の金庫から、廃業のシナリオを示す書類が見つかった。 韓国人社長、李年宰氏が社長の座についたのも、日本の本社からの指示をより効率的に遂行するための人事だった。 さらに、会社は労組の幹部と委員長まで抱き込み、最後まで廃業の計画を秘密にしたまま、労組の委員長は職権調印の形で廃業に合意し、廃業の形式はできあがってしまったのである。

韓国シチズン労組は、委員長を解任し、合意書は無効である旨を宣言、それまでの上部組織だった韓国労総を脱退し、民主労総傘下の金属連盟に所属を変更し、工場を占拠して廃業撤回闘争を始めた。 しかし、(株)韓国シチズン本社は交渉に応じようとせず、工場に立てこもる労働者に工場の明け渡しを要求、 損害賠償仮差押さえを提起し、8月13日には工場の不法占拠を理由に労組の委員長が逮捕された。 「もう廃業した」の一言で話し合いもせず、暴力で労働者たちの叫びを押しつぶそうとしている。

韓国シチズン/チョンスクヒ氏
彼らがそんな闘争に立たざるを得なかった理由は、ひとえに会社側の不誠実な態度そのものだった。 現在、日本の(株)シチズン本社との交渉を求めて来日闘争を行っている韓国シチズン労組日本遠征闘争団の チョンスクヒ氏は、「本当にいい職場だった。みんな家族みたいなものなんですよ。もし会社がこんなひどい裏切りをせず、誠意を持って話し合いをしてくれれば私たちが日本にまで来て抗議をすることもなかったかもしれません」と言う。

会社は10年前から、業績不振を理由として新規募集を行ってこなかったため、長い人で 20年以上、短くても10年間、同じ職場で苦楽を共にしてきた仲間である。 韓国シチズンの労働者は、一方的な廃業も悔しいが、それ以上に、欺瞞的なやり方で仲間を分断し、家族同然のみんなをこのような形でばらばらにされたことが一番悔しいと言う。 日本の本社は、そんな韓国シチズンの職場の雰囲気を理解しようともせず、単に投資のメリットがなくなったというだけで廃業を決め、それを押し付けてきた。 「働く」ということが、どういうことなのか、本社の役員たちは知っているのだろうか。 労働者は、単に金が欲しいから働くと思っているのだろうか。

「もしかすると社長も、本当は廃業なんてしたくなかったのかもしれないと、今でも心のどこかで思っている。みんな、楽しく働いていたんだ。」 そんなことを言う組合員がいた。

韓国内での交渉の相手を失った彼らは日本に来るほかに方法がなかった。 組合員たちはわずかな蓄えの中からお金を出し合って、遠征闘争団の旅費を作った。 しかし、右も左もわからない日本での闘いは苦しい。 一向に進展しない状況の中で、時間だけが過ぎていく。

本社との交渉を訴える韓国シチズン労組の願いは、あまりにも素朴だ。 「日本の役員は、韓国シチズンがどんな会社だったのか知らないんです。 この職場がどんな職場だったのか、廃業を決めた日本の役員の人に知って欲しいのです。 そして、いつまでもこの職場を続けてもらいたいのです。 何かの形で工場の稼働を続けてさえくれれば、そのためには、私たちはこれまで以上に働きもします。 お願いですから、また工場を、私たちの工場を稼働させてください。」

彼らが工場の占拠を続けるのは、もし工場が取り壊されたらもう取り返しがつかないからだ。 工場さえ守っていれば、いつかまた工場の設備が動き出し、あの楽しかった職場でまた働くことができるかもれしない。そんな願いからだ。 金が欲しいだけなら、何も苦労して工場を占拠したりしない。 さっさと次の職場を探したほうが、よっぽど楽だっただろう。

韓国シチズンは、利益を出せない工場ではなかったと彼らは言う。 本当に利益がでないのならしかたがないかもしれない。 しかし、韓国シチズンの業績不振は、作られたものだったと彼らは言う。 会社は、再建の努力もせず、利益を出そうともせず、簡単に利益が見込める途上国に 資本を移動しようとしただけだったと考えている。

先進国の多国籍企業は、安い労働力、使い捨ての労働力を求めて途上国を渡り歩く。 日本の本社にとって、韓国馬山の自由貿易地域の工場は、そんな使い捨て労働力のユニットでしかなかったのかもしれない。 しかし、工場で働く人々は、ユニットでも機械でもない。 笑いもすれば、泣きもする人間だ。 真摯な言葉には共感し、欺瞞には怒りをもって立ち向かう。

日本の本社は、彼ら韓国シチズン日本遠征闘争団を受け入れ、 まず誠意をもって彼らの言葉に耳を傾けてほしい。


Created byStaff. Created on 2003-08-25 14:15:13 / Last modified on 2005-09-05 05:52:11 Copyright: Default

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